所長挨拶
21世紀を迎え、今、私たちはこの新たな世紀の始まりが大きな変革の時代であることを目の当たりにしております。医療の世界もその例外ではありません。従来の「医学」の枠にとらわれず、材料・機械・情報をはじめとする理工学や細胞生物学・薬学などの概念と技術をも融合させ、生体への理解を深めつつ医療の向上を目指した、「生命医工学(Biomedical Engineering, BME)」研究が活発になってきているのです。
東京女子医科大学は、BMEにいち早く着目し、昭和44(1969)年に、「医用技術研究施設」を発足させ、以来、「医用工学研究施設」へと発展を遂げつつ、常に時代の趨勢に確実に応え続けながら、未来の最先端医療の創造に向けて大きく貢献してまいりました。そして、新世紀を迎えた平成13(2001)年、BME研究をさらに強力に推進すべく、先端生命医科学研究所が誕生いたしました。
本研究所は、この設立理念を実現するため、世界的にも例を見ないユニークな研究体制作りと、教育プログラムを実施しております。スタッフは、理工学・生化学・細胞生物学・医学の各分野を修めた研究者であり、ここに臨床現場で活躍している医師も加わり、文字通り「医・理・工」の融合が人材のレベルで実現されています。この姿勢は、平成13(2001)年4月に新設された本学大学院「先端生命医科学系専攻」、ならびに医療産業界で活躍中の社会人に対して、系統的な医学教育を供する「バイオ・メディカルカリキュラム」においても貫かれています。すなわち、いずれのプログラムでも医学部卒業生のみならず、理工系・薬学系出身者を、バイオ・メディカルカリキュラムでは文科系出身者も対象に、研究と教育の場を提供しているのです。
研究推進に当たって、本学大学院の臨床・基礎医学系各専攻や、連携大学院である早稲田大学大学院理工学研究科生命理工学専攻をはじめとする他大学の理工系、および生物・薬学系の研究室、さらにはさまざまな機関との連携を積極的に行っております。平成11年度からは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受けME連携ラボ事業をスタートさせ、「産・官・学」の連携を構築する体制作りも整いました。平成15年度からは、文部科学省の私立大学学術研究高度化推進事業のハイテク・リサーチ・センター整備事業による「附属細胞シート工学研究センター」が設立されるとともに、21世紀 COEプログラムによる「再生医療センター」が設立され、当研究所が世界に先駆けて開発した技術を元に、臨床応用を目指す体制も整い始めております。
本研究所の独創的な研究成果は、これまで国内外で高く評価されております。これからも、次世代の医療を支える新しい概念と技術の創出を行うべく全力を挙げて取り組む所存です。関係各位のますますのご支援・ご指導を賜りますようお願い申し上げるとともに、チャレンジ精神にあふれる皆様をBMEの世界へお誘い申し上げます。