韓国客船沈没:傾いた甲板 救命胴衣姿…父に届いた写真
毎日新聞 2014年04月27日 22時13分(最終更新 04月27日 22時40分)
【珍島(チンド)で米村耕一】客船セウォル号沈没事故で、沈没直前に撮影された1枚の写真が韓国で公開された。行方不明になった男子高校生が父親に送ったもので、傾いた船内で生徒が指示通りに救命胴衣を着けて待機している姿が写っている。その頃、乗員は管制センターに「ブリッジから一歩も動けない」などと窮状を訴えるだけだったことが分かっており、韓国では改めて生徒らを悼む声が上がっている。
写真は、修学旅行中に巻き込まれたこの父親の長男が撮影。船が救助要請した16日午前8時55分の約20分後、携帯電話で送信した。既に船は大きく傾いており、救命胴衣を着けた生徒が、壁に足を、床に背中を着けて体を支え、整列して待機している様子が写っている。船内に明かりはついており、この時点で船内放送は可能だったとみられる。
この父親に取材した韓国誌「時事IN」によると、父親は午前9時4分に船内の長男と電話で会話。長男は「お父さん、船が傾いている」と訴え、父親が「まず救命胴衣を着けろ」と言うと「もう着けている」と答えた。通話の最中、船内で「動かずに待機せよ」という放送が聞こえたという。
沈没直前まで整列して次の指示を待っていた高校生たちの姿に、同誌は「こうして(脱出に使うべき)値千金の時間を浪費してしまった」と指摘した。
船長を含む大半の乗員は、この時間には脱出の容易なブリッジに集結。公表された交信記録によると、同14分に「船が大きく傾き脱出は不可能だ」と話し、同17分には「船員もブリッジに集まり動けない状態だ。早く(救助に)来てくれ」と訴えていた。