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【憲法と、】

<番外編>全文書に刻み、改憲向き合う

憲法を書き展示する会を続ける中嶋彌平さん(右)と土田黎子さん=26日、横浜市港北区で(平野皓士朗撮影)

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 自分で書いてみることで、憲法を身近に。本紙連載「憲法と、」(昨年八月二十六日付)に登場した中嶋彌平さん(90)は、五回目となる「憲法を書き展示する会」を二十六日から、横浜市港北区の自宅兼ギャラリーで開いている。政府の解釈改憲で憲法の平和主義がかすみそうな中、今年は初めて全文を、書として刻み付けた。 (早川由紀美)

 「憲法の前文には、私たちの安全や生存は『諸国民の公正と信義に信頼して』保持するとある。集団的自衛権は、反対方向じゃないか」。三月、数日がかりで全文を書いているときにあらためて感じた。

 戦前は陸軍の研究所職員、戦後は高校教員だった中嶋さんは三十年ほど前から、国家の暴走を止める存在として憲法に関心を寄せるようになった。四年前から、仲間に書や絵画の出品を呼び掛け「憲法を書き展示する会」を憲法記念日周辺に開いている。

     ◇

 今年、詩を出品した土田黎子さん(72)=横浜市=は一月から月一回、近現代史を学ぶ勉強会を中嶋さんのギャラリーで始めた。

 安倍政権となり改憲への意欲に危機感を覚えた。「自分たちは経済成長などいいとこ取りをして、子どもや孫の世代に残してやれるのは、国の借金と戦争できる時代だけになってしまう」

 戦前、父が牧師だった土田さんの家庭はいつもぴりぴりしていた。キリスト教が弾圧された時代。特別高等警察(特高)に父が呼び出されたとき、母は一日不安そうだった。終戦一カ月前の一九四五年七月、住んでいた仙台は空襲で焦土となった。

 保育園での仕事や子育てに追われ、市民運動などにかかわることはなかったが、戦後の幸せは憲法が守ってくれたと感じている。

 「改憲など世の中の変化が荒波のように押し寄せたときに、自分であり続ける力を持ちたい。過去や歴史を知っていることが、持ちこたえる根っこになると思う」

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 二十人余の出品作の中には、憲法を、洋梨に例えて描いた絵画もある。「香り高けれど 傷つき易(やす)く」との一文が添えられている。どうして改憲へと傾く「今」が生まれたのか。中嶋さんも過去から今、今から未来への時間軸をより強く意識するようになった。将来に悔いを残さないため、今、何ができるのか。「一日一日を大事にしないと」という思いを強めている。展示は五月二日まで。

 

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