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【福井】

名水のまち大野も歓迎 水循環基本法が3月成立

湧水のまち大野市のシンボルの御清水。観光名所にもなっている=大野市泉町で

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 国内の水資源の保全を図る「水循環基本法」が、三月に国会で可決、成立した。地下水を含め、水を「国民共有の財産」としたのがポイントの一つ。「名水のまち」として知られ、約四十年間にわたり、官民で地下水を守ってきた大野市内の関係者らは「大野での長年の考え方を支える法律ができた」と歓迎し、水環境保全への決意を新たにしている。

 法案は超党派の国会議員による「水制度改革議員連盟」のメンバーらが作成。地下水と共生するまちのモデルとして大野市が、昨年四月の関係者の視察対象となった。同議連の参与を務める稲場紀久雄氏(72)=京都市、大阪経済大名誉教授=は「地下水はこれまで民法で、ある土地のものは(土地所有の)個人に帰属するというのが一般的な解釈。基本法成立で地下水は、より公共性を高めた」と、法整備の意義を説明する。

 大野市は昭和四十年代後半、井戸枯れの危機に直面し、それを乗り越えた。当時の主婦らが市に対策を訴え、一九七七(昭和五十二)年に「市地下水保全条例」を制定。抑制地域内での融雪の地下水利用を禁じ、採取する際の届け出も義務化した。現在では市内二十七カ所に地下水位の観測網を整備。基準より低下した場合に注意報や警報を出して地下水の使用抑制を呼び掛けている。

 主婦らによる運動の流れを組む市民団体「大野の水環境ネットワーク」(石田俊夫代表)の会員らは「水枯れした時、『地下水は市民共有の財産』と当時の市長に訴えた」と振り返る。約四十年前に大野では今回の基本法と似た考えが芽生えていた。

 市内では現在も、多くの家庭が地下水を飲料用に使い、名水百選の「御清水(おしょうず)」(泉町)をはじめ、各地の湧き水は市の観光資源にもなっている。今回の基本法は長年独自に取り組んできた、市の地下水保全活動を支える国の動きともいえる。

 市湧水再生対策室の帰山寿章(としあき)室長は「法整備は大変うれしく思う。今回は理念法といえ、今後(地下水保全などの)関連法の整備にも期待したい」と話す。同ネットワークでは「水は大野の誇り。地下水を守るために住民たちが積極的に行動してほしい」としている。

 (尾嶋隆宏)

 <水循環基本法> 水循環を「地表水、地下水として河川の流域を中心に循環すること」と定義。これまで特に規制する法律がなかった地下水も含めて水循環を維持し、回復に努めると位置付けた。首相がトップの「水循環政策本部」を設け、河川や森林、農地、市街地の水機能が適切に保たれるよう管理・規制していくことも明記。政府は「水循環基本計画」をつくるとされ、八月一日を「水の日」に定めた。

 

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