富岡製糸場:申請減らし戦術変更…「鎌倉落選」教訓に
毎日新聞 2014年04月26日 22時06分(最終更新 04月26日 22時37分)
群馬県が06年に文化庁に提出した構成資産リストでは「近代日本の礎としての養蚕、製糸、織物の3産業が残る地域」として計10カ所の登録を目指していた。だが13年1月の推薦書提出を前に「生糸の大量生産に成功し、絹を世界で初めて大衆化した技術革新の遺産」に方針転換。ユネスコ申請時には4カ所に絞り込んだ。
県世界遺産推進課の松浦利隆課長は「日本の近代化に貢献したという切り口は海外では評価されない恐れがあった」と振り返る。「世界の絹産業の技術革新」を前面に出し、「普遍的価値」のある遺産群として売り込む戦術が的中した形だ。
フランス人技術者の製糸技術を導入し、生産システムを作り上げた点も、イコモスに「普遍的価値」の一部分として評価された。【三木陽介、塩田彩】
◇世界遺産◇
ユネスコの世界遺産条約に基づき、普遍的な価値がある文化遺産や自然遺産を、人類全体の財産として保護する制度。これまでに文化遺産759件、自然遺産193件、複合遺産29件の計981件が登録されている。国内には富士山のほか、法隆寺、原爆ドームなど文化遺産が13件、屋久島など自然遺産が4件ある。各国の推薦案件は、イコモスの勧告を経て、ユネスコ世界遺産委員会で審議される。