富岡製糸場:申請減らし戦術変更…「鎌倉落選」教訓に
毎日新聞 2014年04月26日 22時06分(最終更新 04月26日 22時37分)
日本が世界文化遺産に推薦していた「富岡製糸場と絹産業遺産群」(群馬県富岡市など)について、文化庁は26日、国連教育科学文化機関(ユネスコ、本部・パリ)の諮問機関が世界遺産登録を勧告したと発表した。今年6月にカタールの首都ドーハで開かれる第38回ユネスコ世界遺産委員会で正式決定するが、登録勧告の場合、そのまま認められる可能性が高い。国や群馬県などが近年の審査傾向を研究し、対策を講じたことが功を奏した。
◇世界遺産、6月に正式決定
勧告したのは「国際記念物遺跡会議」(イコモス、本部・パリ)。同遺産群を▽19世紀末期に養蚕と日本の生糸産業の革新に決定的な役割を果たした▽完全性、真実性が満たされている−−などと高く評価した。文化庁は「日本側の主張が認められた。パーフェクトに近い勧告」(記念物課)と話している。
正式登録されれば、日本の世界文化遺産では昨年の「富士山」以来14件目。世界自然遺産も含めた世界遺産では国内18件目となる。近代産業遺産では国内初。
同遺産群は日本初の官営製糸工場である富岡製糸場(富岡市)と、近代養蚕農家の原形「田島弥平旧宅」(伊勢崎市)▽国内標準の養蚕法を確立した「高山社(たかやましゃ)跡」(藤岡市)▽冷風を利用した蚕の卵の貯蔵施設「荒船風穴(あらふねふうけつ)」(下仁田(しもにた)町)の4施設で構成。2003年に群馬県が世界遺産登録を目指す構想を発表し、07年に推薦候補を記載した暫定リストに入り、12年に政府がユネスコへの推薦を決めた。
イコモスは昨年、「武家の古都」を掲げ文化遺産登録を目指した鎌倉(神奈川県)に対し、「物的証拠が少ない」として不登録を勧告した。資産の「質の良さ」が世界遺産登録を得るための条件となった。
富岡製糸場は1987年の操業停止後も、所有する片倉工業(東京都中央区)が億単位の維持費を毎年負担して05年まで管理を続けた。製糸場の歴史を研究する富岡市の機関「富岡製糸場総合研究センター」の今井幹夫所長は「画期的な養蚕・製糸技術がシステムとして丸々残っているところが高く評価された」と分析する。