富岡製糸場:保存評価「奇跡的」…世界遺産へ

毎日新聞 2014年04月26日 23時52分(最終更新 04月27日 00時12分)

 また、群馬県が06年に文化庁に提出した構成資産リストでは「近代日本の礎としての養蚕、製糸、織物の3産業が残る地域」として計10カ所の登録を目指していた。だが13年1月の推薦書提出を前に「生糸の大量生産に成功し、絹を世界で初めて大衆化した技術革新の遺産」に方針転換。ユネスコ申請時には「技術革新」に限った4カ所に絞り込んだ。

 県世界遺産推進課の松浦利隆課長は「日本の近代化に貢献したという切り口は、海外では評価されない恐れがあった」と振り返る。「日本の近代化」よりも「世界の絹産業の技術革新」を前面に出し、「普遍的価値」のある遺産群として売り込む戦術が的中した形だ。

 フランス人技術者の製糸技術を導入し、生産システムを作り上げた点も、イコモスに「普遍的価値」の一部分として評価された。

 正式登録されれば、日本の世界文化遺産では昨年の「富士山」以来14件目。世界自然遺産も含めた世界遺産では国内18件目となる。近代産業遺産では国内初。【三木陽介、塩田彩】

 ◇世界遺産◇

 ユネスコの世界遺産条約に基づき、普遍的な価値がある文化遺産や自然遺産を、人類全体の財産として保護する制度。これまでに文化遺産759件、自然遺産193件、複合遺産29件の計981件が登録されている。国内には富士山のほか、法隆寺、原爆ドームなど文化遺産が13件、屋久島など自然遺産が4件ある。各国の推薦案件は、イコモスの勧告を経て、ユネスコ世界遺産委員会で審議される。勧告内容は(1)登録(2)情報照会(追加情報を提出して来年度以降に再審議)(3)登録延期(推薦書を再提出し、再来年度以降に再審議)(4)不登録(不適当。再推薦も不可)−−の4区分のいずれかに決定する。(1)になると、世界遺産委員会で正式に登録される可能性が極めて高い。近年は審査が厳しくなり、今年度から文化遺産の推薦は各国1件に限定されている。

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