おつきあいをする事が有効だと分かっています。
どうもお話ありがとうございました。
ありがとうございました。
(テーマ音楽)
(出囃子)
(拍手)
(拍手)
(桂文我)ありがとうございます。
もう一席でお開きでございますのでよろしくおつきあいを願いますが。
私のところはお酒飲みのお噺を一席聞いて頂きます。
私は実は個人的にお酒をあんまり飲むほうではないんでございますけどただお酒の席に出席するという事はチョイチョイございます。
またお酒飲みに絡まれるという事もチョイチョイございます。
あんまりええ思い出ではございませんが。
一番すごかったのが今からどれぐらい前でしょうか20年以上前でしょうかねええもう他界致しましたが私の師匠の桂枝雀の独演会で東京公演東京に行きましてね東京へ行くと必ずうちの師匠枝雀が行く新橋の居酒屋さんがあるんでございます。
濁り酒を飲ませてくれるお店なんでございますおいしい料理もある店なんでございますけどねそこへその日も打ち上げと称しましてお疲れさん会で行ったんでございますわ。
小さいお店なんでございますが突き当たりにテーブルがありまして一番店の深い所にであとはカウンターというようなそんなお店なんでございますけどガラガラッと開けて見ましたらもう既に一番奥の席は埋まっておりました。
カウンターしか空いてませんでしたんでね「しかたないな〜」っちゅうんでカウンターにまずうちの師匠の枝雀が座りましたカウンター前に。
で右横に当時のマネージャーの平井勝三さんちゅう方が座ってでお囃子さんの森喜代子さんという方が座ってその右隣にただいまは病気療養中でございますけど私の弟弟子の桂む雀が座ったんでございます。
で枝雀の左隣に私が座ったんですね。
で私の左隣が空いてたんでございますわ。
誰も居らなんだ。
でしばらく楽しくお酒を飲んでワ〜ワ〜と今日の話とかそれから今までの思い出話で盛り上がってたんでございますけどそこへ入ってきたのが酔っ払いでございます。
これがまた江戸っ子の酔っ払いなんですね。
もう酔っ払いっちゅうのはあれ開け方で分かりますな。
「俺は酔ってるよ」っちゅうこういう開け方でございます。
ガラッと開けて来るんですね。
それで座らんでもええのに私の左隣へデ〜ンと座るんでございます。
「親父。
一杯くれ」ってこう言うんですがねでお酒が来て飲んでるんですけどズ〜ッと「面白かねえ面白かねえ」っちゅうて飲んでございました。
「あ〜何ぞ面白ない事があったんやな」思いながらもうこっち見ずにうちの師匠のほうばっかり見て「ア〜ア〜」っちゅうてワ〜ッと話してたんでございますがただ人間っちゅうのは怖いもん見たさっていうのがありますね。
別に怖い事はないんですけどもちょっと「どんな人かいな?」と思いましてね見んでもええんですけど私はヒョイッと見てしもうたんです。
おじさんのほうヒョイッとこう見ましたらおじさんもヒョイッとこっちを見たんでございます。
(笑い)ええ。
互いに目が合うてしもうた。
その時にこのおじさんが許せん事を私に申しましてね。
「おっ手前突拍子もねえ顔してるな〜」。
こんな事言う。
最低でございますよ。
(笑い)「どんな顔や?」と突拍子もねえ顔て。
さぁそれ聞いたうちの師匠が大喜びでございましてね。
腹抱えて笑うていはるんでございます。
「面白いね〜」てな事言うてね。
(笑い)「もっとお話しなさいもっとしなさいしなさい」。
「いや。
師匠あの〜…」。
「思い出になりますからしなさいしなさい」。
(笑い)師匠命令ってのは聞かなしかたないですから。
「おじさん。
さっきから『面白くない面白くない』て言うてはりましたね?」。
「そうなんだよ俺は今日は面白くねえんだ」。
「何かあったんですか?」。
「今日はね同窓会があったんだうん。
で行ったんだけどねみんな出世してるんだよ。
俺だけ出世してねえの。
だから面白かねえの」。
「あっそうですか。
おじさんの学校どこですか?」。
「俺?早稲田」。
「あ〜そうは見えませんけど」。
「なな何だ?」。
「いや」。
(笑い)「そうですか。
面白くなかった?」。
「面白くねえんだ。
あっおっお前関西の人間だな?」。
やっとここで分かったんでございます言葉で。
「関西の人間だな?」。
「ええ。
そうなんです」。
「そうかほう。
俺はね全国津々浦々行ってるんだよ」ってこう自慢話が始まったんでございます。
「俺はね全国津々浦々行ってるんだよ」。
「あっそうですか。
大阪来はりましたか?」。
「大阪行ってねえな〜」っちゅう。
(笑い)どないなってんの?これ。
またうちの師匠はひっくり返るほど笑いはりましてで私の袖引いて「このおじさんな津々と浦々しか行ってはらへんねや」。
(笑い)
(笑い)というお話があったとさという事でございます。
(笑い)面白いもんでしてね〜。
お酒飲みっちゅうのはしかし無邪気なもんですわな。
こうして我々でもその時は「難儀やな〜」と思いながらでもあとでこうしてお話させて頂いて楽しくなるというようなそういうのがお酒飲みでございます。
お酒飲みというのは訳の分からん歌歌うてますな。
・「ジャジャ〜ンジャンジャカ」・「一でな〜し」か。
・「二でなし三でなし」・「四五でな〜し六でなし七でなしね」か。
・「八でな〜し九でなし十でなしね」か。
・「十一十二十三十四十五十…」「この歌止まらん歌やなこの歌」。
(笑い)「どこまで歌うてええや分からんアハハハ。
ワッもう日が暮れかけてくるさかいなさぁ帰ろう帰ろう」。
「おっ大将ええご機嫌ですな。
どうでございます?お買い上げになって頂けまへんか?どうで…?」。
「えっ?だだ誰?誰?わ私のことよ呼ん…。
あっ呼んだんあんたか?あんた誰や?」。
「へえ。
魚屋でございますけどなよろしかったらどうぞ生きがよろしゅうございますんでひとつ買うて頂けませんかいな?その勢いで」。
「ええ?あっあ〜あ〜ア〜ッいろいろあるア〜ッほんまやね。
ありゃ〜これこれ皆生きがええの?」。
「ええ。
これ皆生きがよろしいで」。
「皆死んでんのと違うの?」。
(笑い)「阿呆な事言いな。
皆死んでまんねんけど生きがよろしいねん」。
「何や訳分からへんねほんま。
あ〜そうへえ〜。
あっア〜ッちょっとちょっと」。
「何です?」。
「いや〜ちょっとそこそこで座って向こう向きになってる向こう向きに座ってるのそれた〜ちゃんと違う?」。
「えっ?」。
「た〜ちゃんと違う?」。
「た〜ちゃん?これ蛸でっせこれ。
これ蛸」。
(笑い)「だからやっぱりた〜ちゃんやろ?。
後ろ姿がよう似てると思て」。
「阿保な事言いな。
蛸どうでございます?」。
「た〜ちゃんななるほど。
それそれた〜ちゃんの足て何本あるの?」。
「蛸の足?8本に決まってますがな」。
「偉い偉いな。
私今感心も得心もしたわな?あんたは偉い勉強してるな。
客に『蛸の足は何本ある?』と聞かれて『8本』。
シュッ即答ができるという」。
(笑い)「偉いね。
本当やで。
勉強してなかったら『何本ある?』。
『ちょっと待って下さい。
1本2本』と数えなあかん。
そこへいくと『何本ある?』『8本』ピュッと言えるだけあんたは偉い。
な?さればイボイボの数は幾つある?」。
「分かりまへんわ」。
(笑い)「そんなものイボイボの数そんなん分かりますかいな」。
「あっそう。
今度の休みに数えとき」。
「分かりました。
ほなそうさせてもらいます。
どうぞお買い上げ」。
「あ〜そう?じゃあ買うてもええけどそれはなんぼ?」。
「ええ?これ?これ皆買うてくれはるのやったら8円でいかがです?8円」。
「8円?あらっええ値やね8円かあっなるほどな。
ちゅう事はこういう事やねつまりあの〜足1本が1円で頭がおまけとこういう事?」。
(笑い)「面白い勘定しはりましたな。
それでもよろしゅうございます皆買うてもらえるのやったら同じ事でっさかいな足1本1円で頭はおまけ結構でございまっせ」。
「うれしいな〜これこっちとそっちの気持ちがピタッと合うこっちが『それでどうや?』。
あんさんも『それでよろしい』。
シャンシャンシャン。
うれしいな〜。
そうか。
おい。
よしほな足1本1円で頭はおまけやな。
ほな懐の都合上その頭だけもろうて帰るわ」。
(笑い)「そんな阿呆な事あんた頭だけ抜いて格好悪うて売られしまへんがな。
どうぞ皆買うて…」。
「いや。
それはいらん頭だけ欲しいねいらんねやそれ。
あっチョッチョッちょっとあんたのその横に置いてるのそれそれ何?」。
「ええ?横に?よ…。
あっこれはあきまへんこれは売られしまへんの。
それと申しますのはなこれ鯛のアラですねん鯛のアラ。
ね?頭と尻尾真ん中骨だけですねん。
近所で造り刺身頼まれましてなそれで造り持っていったんだへえ。
で頭と尻尾真ん中骨これアラ。
でその辺へほっといたんですわへえ。
そしたらそこへ日が当たってしまいましてないや別に腐ってる訳やおまへん腐ってまへんさかいなそらぁよろしいのやで。
けどな家は一遍日にちょっとでも当てた物はなそれはお客さんに売りとうないんでこれは鯛のアラ炊いてなうん犬か猫の餌にしようと思てますねん。
せやさかいこれこれはあきまへん」。
「えっ?何?それあかんの?それあかん売られへんの?あ〜そうフ〜ン。
食べたいな」。
(笑い)「食べたいよそれ食べたいよ。
それそれ犬や猫の餌になるちゅうて人間の餌にはなれへんの?」。
「人間の餌てそりゃいや〜あんさんお食べになるねやったら傷んでまへんさかいねどうぞお持ち帰りを」。
「えっ?「お持ち帰りを」。
「えっ?お持ち帰りをっちゅう事はどういう事?」。
(笑い)「いやどうぞっちゅう事ですわ」。
「どうぞっちゅう事はどういう事?」。
(笑い)「つまりただっちゅう事ですわ」。
「ただ?ただ?ただか?あっ私な世の中で一番好きな言葉やねんそのただっちゅうの」。
(笑い)「ただうれしいな。
せやけどこのまま持って帰られへん」。
「あ〜それやったら竹の皮に包ませてもらいま」。
「ええ?竹の皮に包んでくれる?はあ〜。
竹の皮なんぼ?」。
「竹の皮お代頂かれしまへん」。
「っちゅう事はどういう事?」。
「ただっちゅう事ですわ」。
「あんた所ただの物多いねあんた所」。
(笑い)「あ〜そう。
であんたただでくれるの?竹の皮も。
あっすまんそれやったら3枚ぐらい重ねといてくれる?また握り飯包むさかい。
えらいすまんないや…。
早いねピャピャピャッと。
仕事早いええ?早い。
包んでくれたの?おおけありがとう。
ウワ〜ッ。
しかしあんたはな気前がええなな〜?こうしてな鯛のアラはただでくれるしそれから竹の皮3枚重ねたんもただでくれるしあんた気前ええな。
そんな気前ええ人が何で蛸の頭くれんかな?そやけどな。
不思議やなヘヘヘヘ。
また寄せてもらうわな。
さいなら。
ハハハハよしよし。
あっあれだ…あ〜魚屋と話してるうちにだいぶ酔い醒めてきたありがたい。
ヨッシャ家へ帰ってなそれでこれアラ炊きか何かにして食うたろ。
そうしたらそうそうこれでまた酒のあてになるさかいそうしよう」。
「ワン」。
「あっあっあっ家の前まで帰ってきたら向かいの犬やほんまに。
な何や?そのワンって。
あ〜そうか生臭い物持ってるさかいワンワンワンワン。
あかんっちゅうのそれあかんのこれあんたにあげられへんの私が食べるのこれ。
いや。
あんたにやられへんちゅうの。
あかん。
あんたな紐でつながれてるさかいそこからこっち来られへんやろ?引っぱるだけ引っぱってワンワン…。
ワンワンワンワン言うたらあかんっちゅうにあんたは。
そんなにワンワンワンワンばっかり言うてるさかいにいつまでも犬やってなあかんのやであんた」。
(笑い)「な?ちょっとニャ〜とでも言うてごらん?ほんまにエヘヘヘ。
そうやそれ紐でつながれてるさかいこっち来られへんやろざまみされほんまに。
さぁヤットサットサットサヨイサ〜ヨイサ〜さぁア〜ッあ〜だいぶ醒めてきたな?結構な話やな。
そうそうおっそうや一遍これまな板の上へ置いてみようかな。
ウ〜ウッよっしゃうん。
ヨットサットエ〜エ〜エ〜ヨットエヘヘエ〜エ〜ヨットエヘヘヘヘこれはまたこらぁ立派な鯛やな。
立派やけど真ん中ズボッとあらへんなこれ」。
(笑い)「な〜ええ?これ情けないな。
あっええ手あるで。
せやすり鉢をな無い所へ置いといたろ。
あっこれア〜ッヨイット。
こうしてこうすり鉢を伏せてこうポッ…。
あれ?ちょうど無い所が隠れた」。
(笑い)「これピャッと見たら大きな鯛があるように見えたあるで。
面白いなこれは。
これ見てるだけでも面白いわちょっとこれ見て楽しんでよう」。
「おい。
居てるか?おい。
仕事がもう済んだんや。
ちょっと飲みに行こうと思て誘いに来たんや一杯飲みに行けへんか?おいお…。
おい。
ええ鯛やないかいお前ええ?こんなんや。
それ今からこんな事をして一杯飲もうと思てたんやろ?分かった分かった何も言うな何も言うな。
よし飲みに行かんでもええそれやったら。
私今から酒1升買うてくる手回してくる。
ええ酒手回してくるさかいなせやさかい私の酒を半分お前が飲んでもええさかいその鯛を私に半分食わせてくれな?せやさかい私今から酒買うてくるさかいええか?それ造りにしといてや刺身にしといてやええか?酒屋へ行てくるさかいな?ちゃんとしといてな頼むで」。
「お〜い芳っさ〜ん。
ちょっとおい行たらあかんて芳っさん。
いやそれいやあんた酒買いに行くのはご自由ですけども鯛は腹あらへんでこれ」。
(笑い)「芳っさ〜ん。
阿呆やなあいつええ?これ騙されよったんや。
な?それで酒半分飲んでもええ言うてた。
ありがたいなせやけど。
ええ?いやありがたいのはありがたいけど帰ってきておい『鯛は?』ってな事言われたらどないもしようがないどないしようか?あっあれ隣の猫やあれな?ピピピャピピャッとそうあれ…。
猫にとられた言おうかな?」。
(笑い)「猫のせいにしよか。
な?そうそうそれでええわ。
な?そうそうこういうのは猫に片づけてもらう事にしよう。
これ置いて…。
パタパタパタパタ。
あっどなたです?はい。
えっ?芳っさん?芳っさん帰って…。
芳っさん」。
「おい。
喜んでくれええ?上酒やそれもな幻の銘酒やておい蔵出しの上等。
今な酒屋へ着いたとこやっちゅうて『お宅へ1本お分けしますわ1升』ちゅうてこれええ?分けてもろうてきたんや。
な?喜べ喜べこれを私が半分お前が半分飲むそういう事やさかいなおい。
それで鯛はどないなったや?」。
「た鯛…見てこれや」。
「これやてお前腹の所これ造りにしたやろ?」。
「いやいや。
違うねんこれなこれだけやねん」。
「これだけて腹の所造りにする所はどないしたんや?」。
「いやそれはあの〜…」。
「何?」。
「いやそれは…」。
「お前異人さんかお前こんな格好して」。
(笑い)「何しとんね?お前。
ええ?あらへんてあったんやろ?」。
「ウウッ海で泳いでる時はあったんや」。
「当たり前やないかい」。
(笑い)「そんな格好で泳ぐかい阿呆。
それどないしたんや?」。
「いやこれにはちょっと深い訳があるの」。
「どんな訳が?」。
「いやあのな芳っさんがさっきシュッと出ていく時誰かにすれ違えへんかった?いやすれ違たと思うで。
いやいや訳言うけどな隣の猫が入ってきた」。
「ね猫?そんなもん生臭い物あんねんおい気ぃ付けなあけへんがな」。
「そうや私もそう思たんや。
で猫がピピピャッと入ってきてここへピタ〜ッと座って『こんにちは』ってこう言う」。
(笑い)「誰がや?」。
「いえ猫が」。
「猫がこんにちは言うたりするか?」。
「いやいや。
そりゃそこは猫は魔物やねそれは。
な?いざっちゅう時は人間の言葉も使いはるわい。
『こんにちは』っちゅうさかい私も返事せなあかんと思て『ニャンでんねん?』とこう…」。
(笑い)「そんな阿呆な事あるかいお前『ニャンでんねん?』てそれどういうこっちゃね?」。
「『何の用事ですねん?』って聞いたら『実は猫仲間に寄り合いがございます。
で酒の肴つまみがございませんので鯛を頂きたい』っちゅう。
『いや。
あかんこれはね芳っさん楽しみに今酒買いに行ってるさかいに。
それやったら鯛のアラの所やるさかいお腹の所置いといて骨とアラ上げる』っちゅうたら『皆猫も入れ歯になっております』」。
(笑い)「『年寄りが多うございますのでお腹の軟らかい所を頂戴したい』って言うさかい『いや。
それはそれはあかん』っちゅうのにねこいつが聞き分けないな。
『頂戴します』っちゅうてえらい爪でバ〜ッと腹の所ちょうど切ったとこをねバ〜ッと引っかけて口に咥えてピャピャピャピャッ」。
「おいおいおいそんなもん後追わんかい」。
「いや。
そりゃ追うたけど追いつかんね」。
「何で追いつかんねや。
追いかけたやろ?」。
「いや。
そやけど考えたら分かるで。
向こうは足4本でこっち2本やねんこれ」。
(笑い)「2本向こうのが多いがな。
だから2本分負けたある。
負けたらあかん思て私も四つ這いで這うたら余計遅うなってや」。
「当たり前じゃそんなもん。
這うて追いかける奴あるかい」。
「さぁそしたらあのな市電の駅あるやろ?な?市電の駅の所あっそう停車場な?あそこへピヤッと乗ったんや。
ほなそこへ市電がチチチチチチチッと入ってきてな市電の扉がピヤッと開いて猫がピヤッと乗ったらピシャッと閉まってシュッシュッシュッシュッシュッシュッシュッシュッと隣の町へ行ったとさ」。
「何がとさや阿呆」。
(笑い)「『日本昔ばなし』か阿呆。
つまりお前猫に鯛1匹とられた」。
「まぁ早い話がそう」。
「早いもくそもあるか阿呆。
1升買うてきたんやで。
それそれなかったら…」。
「さぁさぁせやさかいなせやな何かあっそう壺漬け近所からもろうたんやけどな?どう?漬物もろたな?漬物で…」。
「漬物ておいあ〜難儀やな〜ほんまそんな物もう頭の中は鯛になったあんね私は。
鯛やねん今日は。
そんな漬物で飲んでられるかいもう」。
「燗しとけ。
な?私ゃもう鯛の頭になってるさかい鯛買うてくるさかいちゃんとそのかわり燗しとけよ行てくるさかい」。
「ちょっとちょっと芳っさんいや行たらあかんておい芳っさん。
いや違うがないやそれやったらそれやったらあんた鯛も酒も皆あんたが買う事になるけどごちそうさま」。
(笑い)「アハハハハハうまい事いたな〜これこんな…。
ああそう。
ヨッシャア〜ア〜アットソットナこ〜らうまい事いたな〜ええ?な〜こんなな〜『麦飯で鯉釣る』とか『海老で鯛釣る』とかいう話あるけど鯛のアラで銘酒釣ったんや」。
(笑い)「これいらんさかいもうこっちやっとこう。
な?あ〜だいぶ醒めてきた。
せやせやけど燗しとけよって言ってた。
な?せやせやそれぐらいの事はせなあかんわな燗しよう。
あっ燗するのはええけどなええ酒や言うてたで。
酒っちゅうのは燗したら酒の精を殺してしまうっちゅう事がある。
な〜?これは燗にしたらええ酒か冷やで飲むほうがええ酒か分からへん。
どないしたら分かる?飲んでみたら分かるな?」。
(笑い)「ちょっと口入れてみたら分かるな。
芳っさん。
あっ居らへん。
いや芳っさん決してあのね飲みたいさかい飲む訳やないねやでな?チョッちょっとだけちょっとだけちょっと燗がええか冷やがええかを調べるだ…。
あっ芳っさん居れへんかあっそう。
エ〜トどれが…。
あっこの間…これこれな?寿司屋の開店の時にもろた湯呑みや」。
(笑い)「ちょうど2合入るねんこれ」。
(笑い)「な?ヨッシャほなちょっとこれヨッシャ」。
(栓を抜く音のまね)「よしやった。
エ〜エ〜イヨイヨイヨイヨヨ〜ッお〜入った入った。
ヤッ。
ヘヘヘエエ〜ッ。
芳っさん。
決して私飲もうと思て飲むのやないのやで。
ああ燗がええか冷やがええかっちゅうそれを確かめるだけやさかい勘違いせん…。
居らへんな。
ほなチョッちょっと飲んでみよかな?燗がええか冷やがええかな。
芳っさん本当やで飲みとうて飲むのやないさか…。
一口口入れたら分かるさかい大丈夫。
ああ。
ちょっと待ってや。
ああ」。
(笑い)
(拍手)「あ〜アハッ。
1杯では分からん」。
(笑い)「イ〜イ〜ッア〜ッ。
ヨッヨッヨッ。
いやいやいや1杯では分からへんて。
せやけどええ酒やっちゅうのはよう分かった」。
(笑い)「悪い酒はここへ関所ができるさかいな。
そんなん無しに『どうぞお通り』つってシュ〜ッて通っていったさかい。
いや芳っさんごめん今シュシュッと通っていったけど今度大丈夫て。
今度大丈夫今度今度はここへ私が関所こしらえるさかいな?せやさかい一口一口口入れて確かめる燗ええか冷やがええかちょっと待ってな」。
「あっ分かった冷やがええ」。
(笑い)「ア〜ッこんなええ酒燗にしとけて阿呆やあいつそやけど」。
(笑い)「こんなもの酒の精を殺してしまうこれは。
あっこれはほんまやこれ」。
「これは何も要らんわこれやったら。
うん。
あて要るかいなこれはな〜もう酒の中にあてが入ったあるみたいなもんやこれは」。
(笑い)
(笑い)「エ〜ッどんどんいこう」。
(笑い)「ハア〜ッハ〜ッさぁところで…。
アッアッアッアッこぼれたこれ」。
(笑い)「アア〜ッ。
あれっ?あれっ?もうだいぶあれへん」。
(笑い)「構へん水足しといたっても分かれへん」。
(笑い)「『猫が』言うても分かれへんねやさかい。
ね。
大丈夫て『水臭いな』言うたさかいな?言うたらええねん『梅雨に降ったさかいな』言うたらええ。
『あ〜そうか』っちゅうに違いないねん。
な?それでええそれでええて本当にな?そう『お前半分飲んでもええで』て言うてたやさかい私には半分飲む権利と飲まなあかんっちゅう義務があるねやさかいなこれ」。
「ア〜ッとことんいけ」。
(笑い)「ア〜ッア〜ッ。
転がしとけあともう」。
(笑い)「アッハハハ酒はチビチビ飲むのも一息で飲むのもええけどな?あとの一杯一息でいこか。
な?」。
(笑い)「せやけどえらい事になったなこれええ?な?芳っさん帰ってきて『酒の燗は?』ったら『猫が』言うたらええねんさかいね」。
(笑い)「『あ〜そうか。
鯛用意しとけよ』言うてまた酒買いに走りよるやろ。
ね?その間に私鯛ムシャムシャと食べたったらええ。
ね?芳っさんここで『ワ〜ッ』言うで。
あいつズ〜ッと買う役やってたらええ」。
(笑い)「フ〜ッフ〜ッフ〜ッ」。
「ア〜ハア〜ッしまい」。
(笑い)「ハア〜ッええ一日やったな」。
(笑い)「眠とうなってきた。
ちょっと横になろう寝とこう」。
「おいおいおいおい喜んでくれお前ええ?あのな鯛1枚ええの手回してきたんや。
いやこの町内の魚屋にもう無かったさかいな隣の町の魚屋へ行て…。
おいおいおいおいおいお前何肘枕で寝とんね?おい起きてこんかい」。
「芳っさん芳っさん。
お帰り」。
「大丈夫か?」。
(笑い)「お前大丈夫か?おい。
起きんかい。
どな…。
あっ真っ赤な顔しとるやないかい。
酒はどな…。
ええ?1升瓶転がったある。
さ酒どないしたんや?これ」。
「いやそれは実は燗しよう思たら猫が」。
(笑い)「猫?猫お前市電で隣町へ行ったんと違うんかい?」。
(笑い)「いや。
それね猫さん往復切符買うてはったらしい」。
(笑い)「でまた戻ってきはってね『酒あかん』てこういう…『あんたにやられへん』てこう言うねんけどもう聞き分けないね『頂戴します』言うてピャ〜ッとこうピャ〜ッと瓶持ってシャ〜ッと行くさかいな横手にあった割り木をピャ〜ッと投げたんやうん。
『おくれ』っちゅうのをピャ〜ッと投げたらそれが当たってゴロンと。
ピャ〜ッと詰めが抜けてトットットッ」。
「起さんかい?それ」。
「うん。
起そうと思たんやけど機嫌よう出てはるさかい」。
(笑い)「阿呆かお前は。
それはええわ皆こぼれたんはええけどお前が真っ赤な顔してるのそれ何やね?」。
「違う違う。
『手伝うてあげようかな』っちゅう気になってな横からチュ〜ッと吸うたらええ按配なったや〜。
酒はもう吸うに限るわこれはアッハハ。
私もう眠とうなってきたうん眠とうなってきたさかい寝るさかいお前も帰って寝え」。
「ようそんな事言うでおい」。
(笑い)「ようそんな事お前『猫が猫が』言うてほんまは皆お前がお前が飲んだやろ?」。
「いやいや。
本当に猫やて。
あっちょっと芳っさん見てほれあそこへピャッピャッ隣の猫。
あれ悪い猫やであれあっちゃへこっちゃへ行けると思てピャッピャッ行けるねあっちゃこっちゃへ行けると思てなほんまに。
こらっ猫さんあんたちょっと芳っさんに言うて。
ちょっと事訳して猫さんあんたから言うて」っちゅうたら猫がねお向かいをヒョイと見て「アハッつながれてる犬が羨ましい」。
(笑い)
(拍手)
(打ち出し太鼓)2014/04/26(土) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
日本の話芸 落語「猫の災難」[解][字][再]
NHK大阪ホールで3月6日(木)に開催した「第339回NHK上方落語の会」から桂文我さんの「猫の災難」をお送りします。
詳細情報
番組内容
3月6日(木)に開催した「第339回NHK上方落語の会から」桂文我さんの「猫の災難」をお送りする。ある男が、近所からたいの頭としっぽだけをもらい受けてまな板に並べ、真ん中の身の部分はすり鉢で隠していた。そこへ兄貴分の男がやってきて、このたいで一杯やろう、酒はこれから買ってくる、その間にたいの料理を頼むと酒を買いにいく。この男、たいの身はハナからないので、近所の猫が身を持って逃げたと嘘をつくのだが…
出演者
【出演】桂文我,かつら益美,桂米輔,桂米左,桂二乗
ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz
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