総合診療医 ドクターG「手が震える」 2014.04.25

よろしくお願いします!
(一同)よろしくお願いします!
(高山文治)
私は休みの日にはいつも子供たちにレスリングを教えています
よし!じゃあひざつきレスリングだ!
この中から東京オリンピックに出る選手を育てるのが今の私の夢。
息子もその一人です。
仕事は母校の大学でレスリング部のコーチをしています。
実は私これでも5年前に引退するまでは本気でオリンピックを目指していたんです
うっ…あっ!すみません!
学生の指導をしていた時の事です。
左ひざのじん帯を断裂。
手術を受けました。
ところが…
突然…
どうしたの?あら?駄目だよこんな所で寝ちゃ。
風邪ひくよ。
風呂に行こうとしていたはずなんですが気付いてたら床に寝ていたり…。
ひざのケガなのに何で…?
う〜んこれは…。
レスリングの選手ですけどね。
ひざのじん帯損傷して手に震えがくるのはちょっとおかしい…。
眞鍋さんどうですか?若くて元気な人ですもんね。
35。
症状だけ見ると…田中さんいかがですか?レスリングのオリンピックまで行くって…あ〜…。
その前に何かが起きたかなって。
患者の声に耳を傾け体に問いかける。
総合診療医の武器は問診と診察だ。
症状は?仕事は?生い立ちは?病気を探るヒントはどこに潜んでいるのか。
意外な手がかりを一つ一つつなぎ合わせ病気を探り当てる。
私たちは彼を「ドクターG」と呼ぶ。
今日のドクターGの武器は問診と診察そして…。
英語だ。
得意の英語力を生かしてアメリカに留学。
キャリアを積んできた。
現在は自治医科大学附属病院で若き研修医たちの指導に情熱を注いでいる。
地域医療の現場にもよりグローバルな知識や情報を。
国際経験豊かな矢野晴美先生の登場だ。
(玉ちゃん)今回のドクターGは…
(拍手)いやもうじゃあ今日はカンファレンスも英語で?いえ今日は日本語で…。
(眞鍋)よかった〜。
私の専門は感染症なんですがその病気にたどりつくまではやはりジェネラルにいろいろな病気を考えたうえでというアプローチが必要ですので。
総合診療のところがあるという事ですよね。
病気を探り当てるために全国から集まって頂いた研修医はこちらの3人です。
ご紹介しましょう。
(拍手)
(拍手)
(拍手)ちょっと国際的ですよ博士。
(眞鍋)どちらの方なんですか?ベトナムから来ました。
ベトナム!2002年に日本の政府から奨学金頂いて…。
日本語を学んでそこから医学部ですか?はい。
すごいね!かけ橋ですよ。
既になってますよね。
萩本先生お医者さんになろうとしたきっかけなんですが…。
昔本を読んで日本で一番最初にホスピスという終末期の病棟をつくった先生の書かれた本なんですがそれを読んですごい印象に残ったので。
将来はどんなお医者さんを?そうですよね。
今日はよろしくお願いします。
空野すみれ先生よろしくお願いします。
名前がもう「空野すみれ」ですもんね。
じゃあ日本を飛び出す気持ちがあるって事ですね。
うわ〜。
志すごくいいですよね。
(玉ちゃん)高いですよ皆さん。
僕ら芸能界入った時そんな志なかったですもん。
さあそれでは病名を探るための再現ドラマを見て頂きましょう。
ドクターGの症例に研修医が挑みます。
テレビの前の皆さんも一緒に考えて下さい。
ドクタージェネラル!あ先生。
こんにちはお加減はいかがですか?主治医の先生から高山さんを診てほしいと言われて来ました。
手術されたのは4日前左ひざのじん帯でしたね。
はい。
でも体の他の部分もおかしいと聞きましたが…はい…。
なぜか最近手が震えるんです…。
(高山)
手の震えをはっきりと自覚したのは3日前でした。
栄養士をしている妻が手料理を持ってきてくれた日です
病院食もちゃんと食べてね。
やっぱり味気なくてさ病院の飯は。
あっそうだ。
あれ持ってきてくれた?ああ持ってきたわよ重いのに。
よいしょ。
はい。
何だよこの小さいの。
せめて5kgのやつ持ってきてくれよ。
(有紀子)冗談じゃない。
2つで10kgになっちゃうじゃない。
何言ってんだよ。
このぐらいで。
あっどうも。
どなた?同室の山田さん。
この病院の主だよ。
あ〜あの人が…。
どうしたの?いいや…手が滑ったんだ…。
はい。
割とすぐ治まります。
入院してから3〜4回ありました
ありません。
震えがない時は文字もすらすら書けますし…
38℃くらいありました。
実は…。
何だか脚の様子もおかしいんです
大丈夫ですか?あっはい。
痛みましたか?いえ…。
震えるというか力が入らないような感覚です
ひざを痛める前まで…
はい。
学生にはもうかないませんがいつもどおりだったと思います
頭から落とされるような事はないのでそこまで強く打ちつけた事はないと思うのですが…
ハァ…。
どうだ正人大学の練習は迫力あるだろう。
お前どうしたんだ?うん?一緒にやるか?高山!おっ山村!どうしたんだよ久しぶりじゃないか。
4月に本社に戻ってきたんだよ。
5〜6年ぶりだな。
ああ。
南米の遠征以来だな。
太ったんじゃねえか?お前もな!ハハハ…。
こいつらの相手みてる分お前よりましだよ。
あそうだ。
このあとうちで焼肉やるんだけどよかったら来いよ。
ごちそうになるよ。
美人の奥さんにも会いたいし。
よ〜し今日はもうあがるぞ!
そうですね肉はよく食べます。
学生たちに振る舞う事もありますし…
あっその豚ロース俺が焼いてたのに!コーチは早いんすよ食うのが!こいつと焼肉行くと全然食えないからな。
このくらいの焼き加減が一番うまいんだよ。
おい正人!たくさん食べないと東京オリンピックに出られないぞ。
ほら見ろ父さんを。
僕オリンピックなんか別に出たくない。
本当はサッカーがやりたいのに!正人?少しほっとけばいいのよ。
前はあんなにレスリング好きだったんだから。
ありがとうございます。
ちょっとおなか壊すわよ。
野菜も食べなさいよ。
何言ってんだ。
海外遠征でどんな国で何を食っても一度も腹なんか壊した事ないんだぞ。
現地の日本人会の人にも結構地元料理をごちそうになったじゃないですか。
俺なんか食事が合わないとすぐにおなか壊してたけどこいつは何食っても平気でしたから。
「鋼鉄の胃袋」と「鋼鉄の肝臓」って呼ばれてたからな。
ハハハ…見習えよ。
他に…。
昨日の事ですが…
何だここにいたの。
ああ…。
どうだ?正人は。
まだ練習行ってないのか?オリンピックオリンピック言い過ぎなのよあなたは。
せっかく東京でやるんだし…。
子供に夢を託すのもいいけどほどほどにしてよ。
ああ…。
誰だ?ほら同室の山田さん。
あそこで手を振ってるじゃない。
え?見えないの?あ…。
まあとにかく一度正人をここに連れて…。
イテテテ…。
どうしたの?いや何か最近頭痛がするんだよな。
いい機会だからこの際全部検査してもらったら?おとうさんも脳梗塞だったし。
ええ。
ズキズキという感じで…。
(山田)先生。
はい?私がこの間風呂から帰ってきたら高山さんそこの床の上で寝てたんですよ。
床で?私も風呂に行こうとしてベッドから出たと思うんですがなぜか気付いたら床に…。
あんまり記憶にないんですけど…。
さあ最初のVTRを見てもらいましたけれども…。
高山さんのバイタルがこちらです。
先生ここから分かる事はありますか?患者さんの体温はやや高いですが血圧や脈拍呼吸数は正常な範囲です。
では研修医の皆さん疑われる病名をフリップにお書き下さい。
我々VTR見ましたけれど気になった事は?気になったのはやっぱり山田さんですね。
怪しいですね。
主ですからね。
あと食べ物結構出てきましたね。
焼き肉とかね…。
あと南米というのが気になりませんか?昔僕アフリカでマラリアになったりとかそういうのがあったりしますんで…。
私も海外で食中毒で死ぬ直前ぐらいまでなった事がありますが確かに手震えたりとかもありましたけど…。
さあ研修医の皆さん病名を書き終えたようです。
フリップオープン。
萩本先生からお願いします。
(眞鍋)あっ分かれた!
(玉ちゃん)すみれ先生。
クィー先生。
3人とも違いますが…。
割れましたね。
ここからはドクターGと研修医との真剣勝負です。
カンファレンススタート!ではお一人ずつ病気をどうして選んだのか教えて頂けますか?細菌が頭の髄膜の方に波及して炎症が起こるという…。
細菌性の髄膜炎は重症化して命に関わるので早い処置が必要です。
まずバイタルとして発熱があるという事。
その事から感染症の中でも意識障害があるという事なので見逃したら危ないものとして髄膜炎は可能性として考えなきゃいけないかなと思って。
じゃあすみれ先生お願いします。
(一同)「脳膿瘍」。
初めて聞きました。
頭の中にうみのかたまりが何らかの理由でできてしまった病気。
膿瘍ができる場所によって…「左半球」と場所もかなり特定してますがそれについても少しご説明頂けますか?脳は右と左に2つ分かれているんですが大体左の手足を動かすのは右からの指令で来ています。
人間の体は…左の脳の機能が侵されると右半身に運動の異常が起きます。
(空野)左の方に何かあると右手が動かなくなったりとかけいれんが起こったりとか。
山田さんを指さした時に最初見えていなくてちょっと向きを変える事で見えたという事で視野の半分がもしかしたら障害されている事もあるのかなと考えました。
(眞鍋)気付かなかった。
最後にクィー先生お願いします。
「多発性硬化症」というのは神経系の炎症疾患の一つで免疫とかに攻撃されてそれでちょっと神経の症状が出たりしますけども…。
患者さんにはまひは結構局在性があって手とかあとベッドから落ちたのに分からないというのはもしかして失神の症状。
あと頭痛いとか目が突然見えなくなるという事なのでたくさんの症状を説明できるのは広い範囲で病変がある多発性硬化症としました。
はい。
分かりました。
で皆さん今あげて頂いたようにこの患者さん少しいろいろな問題がありそうですよね。
患者さんの問題となってる所を少しずつあげていってみましょうか。
ここでドクターGは患者の症状に番号を付けてプロブレムリストを作るように促した。
この患者さんのプロブレムあげて下さい。
まずは突然の手の震え。
それ自体が安静時の震えであるという事。
ペンが文字を書いてる時にはきれいに書けると言ってた。
けれどもお話を聞いてる時に思い出してる最中に手が震えてた。
これは安静時の震えだろうと考えました。
安静時の震えと対比されるものはあるんでしょうか?「企図振戦」と言われるもので何かをしようとした時の振戦。
指先の細かい運動とかをした時に起こる震えです。
先生具体的にやってみて頂いていいですか?よく診察する時患者さんの鼻押さえて僕の指さして指押さえてって交互にやって下さいとやりますが患者さんにしてもらうんですがこれがそういう病気のある人だとこういうふうになって。
「犯人はお前だ〜!」になっちゃう。
じゃあ次すみれ先生プロブレム2つ目をお願いします。
気付いたら床に落ちていたという事で意識障害もしくは失神があったんじゃないかと。
これ少し説明して頂けますか?例えば脳卒中とかで意識障害とか来した場合はハッと元の状態に戻るって事はないですよね。
ではそれに対して失神というのはどうですか?失神は比較的短い時間の間で意識がとんでいる状態で意識が戻った時には元と同じレベルに戻る。
これどっちなんですか?ハッと戻ってたので失神。
失神だろうと思う。
はいありがとうございます。
じゃあ次クィー先生どうですか?私はやっぱりまひのところに注目します。
この方はリハビリ中に痛いのは左ひざだったんですけども右の方に倒れてしまったので右の脚も筋力低下があります。
右の脚の筋力低下というふうにあのエピソードを解釈したんですね。
ダンベルを握れなかったとか…。
あっダンベルを握れなかった。
それは皆さんどうですか?すみれ先生何かありますか?いやあの筋力低下っていうより脱力なのかなという。
脱力だと思う。
どう違うんでしょう?筋肉の力が低下してるわけではなくてその時にたまたま力が入らなかったという事は…。
どうでしょう?私も脱力の方が正確だと思います。
じゃあ次また萩本先生お願いします。
発熱があるという事をプロブレムとして…。
プロブレムの4番目は発熱ですね。
すみれ先生お願いします。
視野障害の可能性はあるかなというふうに。
例えば右半分が見えなくなってしまったりとか。
それは突然来るんですか?
(空野)突然来るものと徐々に来るものと…。
脳に異常がある場合と目に異常がある場合とあるとは思うんですが。
今回の方突然の感じですね。
突然ですもんね。
じゃあ目のエピソードをちょっと振り返ってみましょうか。
ああ…。
誰だ?ほら同室の山田さん。
あそこで手を振ってるじゃない。
え?見えないの?あ…。
VTRで大体どの辺りが見えてない?恐らく視野の3/3が障害されるんじゃないかなと思います。
(玉ちゃん)見えねえって事か。
視野の右側ですね右の3/3の上側が見えてないんじゃないかと。
視野障害に続いて左ひざじん帯断裂の手術後である事豚肉を生焼けで食べた事がプロブレムリストに加わった。
そして…。
じゃあ次8番目になりますがクィー先生。
この患者さんは頭痛を訴えてました。
(玉ちゃん)頭痛あったな。
もう少し具体的にどんな頭痛でしょうか?こうしてたような気がしたんですけど…。
この辺でしたね。
後ろの方…。
後ろの方を痛がったような気が…。
後頭部痛としてもいいのかもしれないですね。
発作性なのかな…。
ずっと痛いというわけではなくて…。
発作性の後頭部痛。
発作性の後頭部痛という事で入れるという事ですね。
ここまでのカンファレンスで患者高山文治さんのプロブレムリストが出来上がった。
果たして研修医たちのあげた病名はこれら全てに当てはまるのか?クィー先生いきますか?多発性硬化症について…。
症状としては全部説明できるかなと思います。
ただ矛盾するところが発熱のところだけですけどもそれは患者さんは術後だし発熱するところは関係なくても説明できるかなと思います。
じゃあ萩本先生お願いします。
髄膜炎という事なんですが発熱があるという事頭痛があるという事辺りはあと意識障害があるというのもこれで説明できるかなと思います。
ただ右半身に限局した脱力それから視野障害は髄膜炎で起こるかどうか知らないですね。
次お願いします。
説明できるかなと思います。
あと視野障害に関してももし後頭葉にあるのであれば起きてもいいかなとは思うんですけども。
そこもクリアできる。
あと生焼けの豚で脳膿瘍が起こるかどうかも…。
難しいところ。
そうですね寄生虫でもいいかなとは思います。
それはどの点で寄生虫と思うんですか?生焼けの豚というところから寄生虫という方が膿瘍よりも寄生虫の方が確かに…。
生焼けの豚で脳のそこの場所に左半球などに寄生虫がいるかもしれないと思うという事ですね。
分かりました。
ご自分が最初に考えた病気に合う所と合わない所をあげて頂いたんですがこういった少し複雑な患者さんにアプローチする時に昔の人の有名なことわざがありまして「オッカムのかみそり」。
かみそりは切るかみそりですか?オッカムって人名ですか?はい。
「オッカムのかみそり」。
それからもう一つが「ヒッカムの格言」と言うんですけども。
また今度も「カム」なんだ。
似てますね。
分かる方いますか?じゃあすみれ先生。
オッカムはいろんな症状がこの方あるかと思うんですが例えば発熱があるっていったら肺炎もあってでしびれがあるっていったら脳に何かがあってって別の病気がたくさんあると考えるよりは1つの病気があって全ての症状がそれによって起こってると考えた方が正しいでしょう。
「かみそり」というのは余分なところをそぎ落とすと最終的には一つの病気でその患者さんのプロブレム全部が説明できるという事。
あとベッカの…ベッカム?ベッカム出てきてなかった…。
誰でしたっけ?ヒッカム?ヒッカムですね。
「ヒッカムの格言」というのは?え〜どっちが正しい…。
ねえどっちがね…。
若い人に関してはいくつかの病気が同時に起こってるとはあんまり考えにくい。
若い人には一つの病名で証明できるし高齢者は「ヒッカムの格言」で言えば症状はいろいろな病気で起きてるという考え方。
そうですね。
大体のおおまかな原則になりますが…。
じゃあこの方に対してはどっちのアプローチをとりますか?クィー先生だったら…?「オッカムのかみそり」。
でいきますか?一つの病気で説明するようにいってみると。
それでは最初のカンファレンスはここまでにしたいと思います。
カンファレンス見て頂きましたがゲストのお二人いかがでしょうか?あれ面白いですね。
オッカムとヒッカムで考えるというの。
今回は「若くて元気な人だからオッカムでいく」という方針が…。
それねびっくりしましたね。
「なるほどそうだな」。
若い人たちはそういうふうに考えられるんですね。
僕らは絶対そういう事…。
ヒッカムですねもう。
ヒッカム…。
ヒッカム世代。
さあ診断を絞り込むためにVTRの続きをご覧下さい。
ドクタージェネラル!高山さん。
ケガは多いですが病気はほとんどした事がありません。
あっただ…。
確か3年前レスリング部で指導していた時…
腹筋!コーチ大丈夫ですか?コーチ!
意識はすぐ戻ったのですが念のため病院に行きました
その時病院でCTを撮りました。
脳に石灰化があると言われて驚きました。
でも小さいのは誰にでもあるから気にしなくていいとも言われてそれっきり忘れてました。
あっそうだ…。
3年前のあの日も確か練習前から頭痛がしていたと思います
ないですね。
一度寝たら朝まで熟睡なんで…。
(おなかが鳴る音)おなかすきましたね。
もうすぐ夕食ですから。
いや入院してむしろ太ったぐらいで。
いつだって食欲が落ちないんです。
現役時代によく海外に行かれたという事ですが…いや引退してこの5〜6年はどこにも行っていません。
前は息子にそんな海外の話をしてやるのも楽しみの一つだったんですが…。
ねえ今までで一番強かった相手はどこの国の人?ロシアとかイランとかメキシコブルガリア…日本だって負けてないぞ!正人も強くなったらいろんな国行けるぞ。
うん!僕強くなる。
もっと強くなっていろんな国に行ってみたい。
よしじゃあ次正人の番な。
あれ?お父さんここかゆい?うん?
(正人)何かできてるから…。
(高山)別にかゆくも痛くもないけどな…。
さあ…気にも留めてなかったですからね
(看護師)先生高山さんのご家族と友人の方がいらっしゃいました。
あっどうぞ。
一旦中断しましょう。
(高山)正人…。
山村も。
たまたまそこで一緒になってな。
お前が入院したって聞いたもんだから。
この子謝るって。
こないだの態度。
ごめんなさい。
え…?いや…父さんも悪かったな何か最近ムキになっちゃって…。
だからってレスリング続けるわけじゃないのよ。
サッカーもやりたいし当分はどうするかゆっくり考えるって。
分かった。
サッカーがやりたいならやればいい。
うんありがとう。
そうだ久しぶりにやるか?ひざ合わせ腕相撲。
(山村)よ〜し!じゃあ俺が審判してやろう。
正人君遠慮せずにお父さんなんかぶっ倒しちゃえ。
(笑い声)あれ?父さんここにも背中と同じのある。
うん?あれ?何だこれ。
(山村)ああ俺も最近そういうの出てきてさ。
年かねとうとう。
ちょっと診せて下さい。
え?山村さんはスポーツ新聞の記者でしたね。
ええ。
高山が現役の頃からのつきあいです。
えっ?全然…。
ちょっと背中も診せて下さい。
なるほど…。
高山さんあなたの病気が分かりましたよ。
さあ分かったみたいですが…。
もう分かっちゃったの?さあ研修医の皆さん考えられる病名をお書き下さい。
我々見ましたけれども3年前のけいれんもすごいですよね。
白目むいちゃってね。
あとできものと。
できものがあれですね。
友達も出てきて…。
山村!山村も…。
南米の…一緒に行ったって言ってましたもんね。
山村悪い所ないですからね別に。
言ってましたね。
さあ研修医の皆さん病名を書き終えたようです。
フリップオープン。
(玉ちゃん)萩本先生から発表して下さい。
(玉ちゃん)すみれ先生は?クィー先生は?お〜っなるほど。
研修医の答えはいずれも感染症。
「寄生虫症」と「神経梅毒」の2つに分かれた。
それでは再びドクターGと研修医との真剣勝負です。
最終カンファレンススタート!じゃあ皆さん先ほどと病気変わりましたね。
前の病気からなぜ変えたのかという事も併せて教えて下さい。
萩本先生お願いします。
僕が考えたのは寄生虫ですが今回のビデオにもあったように皮膚に症状が出て…すみついたりもしますしひどい時は脳の方に達してしまう事があります。
この場合特に豚肉を生で食べてるという事から豚肉から感染した寄生虫は一番考えられるかなと思います。
具体的にはどんな寄生虫でしょうか?…という事ですかね?そうですね。
サナダムシの仲間である有鉤条虫に感染して起きる病気が「有鉤条虫症」です。
その過程で…一方有鉤条虫の卵が直接人の口に入ると「嚢虫」という状態になります。
さっき先生が書いた髄膜炎から変えた理由というのは?山村さんが…同じような皮膚の症状があった。
この皮膚の症状が今回の病気と関連があるとすれば寄生虫があるかもしれないというふうに。
髄膜炎よりも寄生虫。
他の人もなってるのでというところで変えたという事ですね。
そうです。
じゃあすみれ先生。
私も寄生虫症と考えましたが…。
海外にいろいろ行かれていて現地の物も食べているという事で寄生虫の方が可能性は高いかなと考えました。
先生海外に行ったのって5〜6年前と言ってましたがそれぐらい期間あいても症状が出るものなんですか?う〜ん…。
寄生虫の中にはゆっくり経過して症状が出てくるというのもあってもいいかなとは思います。
分かりました。
クィー先生どうでしょうか?その病気をまず教えて下さい。
選んだ理由を教えて下さい。
昔海外旅行に行って皮膚の症状が出るとかあとCTの検査で石灰化があるという事から恐らく神経梅毒だろうなと思いました。
性感染症の一つである梅毒に感染すると一般的にはまず…菌が全身に広がると…感染の経過の中で脳や脊髄が侵されると…これらの神経症状を「神経梅毒」と呼びます。
神経梅毒は病気の進行のどの段階でも起きる可能性があります。
記者の方も似たような病変があったと思うんですがそれはどのように解釈されますか?お二人とも同じ病気があるかもしれないという事ですね。
じゃあここでもう一回先ほどのカンファレンスでもやりましたがこの患者さんのプロブレムリストを改訂したいと思います。
再びプロブレムリストの登場だ!新しいプロブレムとして…「腫瘤」というのは…?おできのちょっと盛り上がったものです。
じゃあすみれ先生。
3年前にけいれんがあった事。
じゃあクィー先生。
頭のCTを撮った時にちょっと石灰化があった。
あと追加情報としてはこの患者さんは睡眠障害がないとか食欲低下がないという事も一つの大事な情報だと思います。
「石灰化」というのがよく分かんないですね。
クィー先生石灰化というの説明して…。
脳の中に?怖いな〜。
ここでドクターGが取り出したのは…どこがおかしいのかちょっと教えて頂けますか?
(萩本)場所としては左の後頭葉に…。
白いやつだね。
(萩本)白い病変が…。
白い腫瘤ですね。
石灰化なんだ。
新しいプロブレムが加わりましたが古いプロブレムを整理しましょうか。
さっきの「オッカムのかみそり」を思い出して頂いてこのプロブレムリストその観点からどうやって整理しましょうか?プロブレム1から3全部……という事でまとめてしまってもいいのかなと。
すみれ先生は「右手の安静時の震え」「失神」そして「右上下肢の脱力」を「右側を中心とするけいれん」で説明できると考えた。
じゃあ4番目の発熱お熱はどうしましょう?関係ないというふうにしたい。
じゃあちょっと線を引かせてもらいますね。
患者の発熱もこの病気とは直接の関係がないと判断。
3年前から病変があったのであれば6番目の左ひざじん帯断裂が病気の原因である可能性もなくなった。
5番目の視野障害という事ですがこれはどうしましょう?残すべきだと思います。
7番目の生焼けの豚肉ですが萩本先生どうですか?僕としてはやっぱり寄生虫の感染症は考えているので大きなプロブレムの一つだと考えます。
じゃあちょっとここで豚の生焼けの事についてみんなで振り返ってみましょうか。
あっその豚ロース俺が焼いてたのに!コーチは早いんすよ食うのが!
(有紀子)ちょっとおなか壊すわよ。
何言ってんだ。
海外遠征でどんな国で何を食っても一度も腹なんか壊した事ないんだぞ。
現地の日本人会の人にも結構地元料理をごちそうになったじゃないですか。
俺なんか食事が合わないとすぐにおなか壊してたけどこいつは何食っても平気でしたから。
(玉ちゃん)2人して地の物食べてたんですね。
海外でね。
高山さんには3年前から症状があった。
したがって2週間前生焼けの豚肉を食べていた事より5〜6年前まで海外で現地の物をよく食べていた事が重要視された。
じゃあ8番目の発作性の後頭部痛という事でしたがこれはどうしましょう?さっきのMRIをみても頭の病変が強く疑われるので後頭部痛として症状が現れる事は十分に考えられると思うので残すべきだと思います。
最初のプロブレムリスト8項目は「オッカムのかみそり」によってそぎ落とされ4項目に絞られた。
これに新たな4項目が加わる。
研修医の診断は萩本先生とすみれ先生が「寄生虫症」クィー先生が「神経梅毒」と2つに分かれている。
皆さんの2つの病気を絞り込んでいって頂けたらと思うんですが萩本先生いかがでしょうか?僕の考えた寄生虫の感染症有鉤嚢虫症だったりすると今回の病態としては考えうるものだと思います。
じゃあすみれ先生どうでしょうか?やっぱり脳の石灰化を起こす何かの寄生虫症。
皮膚にも病変を来しているというふうに考えれば説明がつくかなと思います。
じゃあクィー先生どうでしょうか?進行がゆっくりで基本的には神経梅毒と矛盾しないと思います。
ただ…そこがちょっとあれですか。
その辺りはすみれ先生と萩本先生はいかがでしょうか?梅毒である時の皮膚の症状としてはいろいろなものあって例えば陰部のかたい結節だったりとかあとはバラ疹という赤い皮膚の症状だとかそういうさまざまな皮膚の症状は出てくるはずだというのがまずあります。
今回息子さんが見つけたのが皮膚の腫瘤のみであると考えるとそれらの皮膚所見はなかったのかもしれない。
そうすると神経梅毒は若干弱くはなるかもしれないですね。
すみれ先生どうでしょうか?海外での性交渉があったかどうかという事そういったハイリスクな行為がないと考えると梅毒というのは考えにくいかなというふうには思います。
クィー先生例えば神経梅毒性行為感染症の事通常はパートナーの人も一緒に感染する事が多いと思いますがこのVTRの中ではそういう情報はどうだったでしょうか?それは全くなかったですね。
なかったですね。
果たして研修医たちはどちらを選ぶのか?それでは皆さんに最終診断を言って頂きたいと思います。
せ〜の!
(拍手)正解です。
ついに出たか寄生虫が。
初めて聞いた〜。
寄生虫が出てきましたね。
どんな病気なんでしょう?「有鉤嚢虫症」というのは有鉤条虫という成虫の小さい虫幼虫による病気です。
「有鉤嚢虫症」はサナダムシの仲間有鉤条虫の卵に汚染された水や食品を口にする事で起きる感染症です。
体の中で親虫に成長する事はありませんが血流に乗って皮膚や筋肉そして脳にも運ばれ…高山さんの皮膚に現れた症状は嚢虫の死骸が石灰化してその場所に残ったものだった。
世界に目を向ければアジアアフリカ南米などでまだ多く見られる感染症だ。
卵のついた状態の物を食べたらなるとおっしゃってましたが今日本で普通に生活してる中でそういう食品が身近にあるという事は?非常にまれですが輸入された食品などの場合にそういう事が起こる事もありますがそれはもう本当に例外的なところで国内できちんと加工されたような食品ですとこういう感染症になるという事はほとんどございません。
虫下しってわけいかないですよね脳にいっちゃったら。
有鉤嚢虫症の場合は薬で治療する場合もありますし症状が起こらない人も多いので何も治療されない場合もあります。
ただけいれんが起こった場合にはけいれんの薬をのんだりします。
高山さんは手術で石灰化した嚢虫を取り除いた。
今は家族と元気に暮らしている。
さあドクターGからメッセージお願いします。
今回皆さんにお伝えしたかった事は日本の外であるいは診療していない国でも頻度が高い病気についてはしっかりトレーニングして頂きたいという事でした。
言いかえればそれは「病気の世界地図」という事になりますが今回のカンファレンスでも出てきた病気や例えば今はやってる病気では「デング熱」があったりしますがそういった病気がどこで起こってるのかそしてそれが時間がたつとともにはやってる場所なども変わってきますのでそういった事も含めてトレーニングして頂けたらと思います。
病気の世界地図を描かなきゃいけないというのは確かに国内だけじゃないですもんね。
この病気よく知らないのはすごく残念なところですが今後ベトナムとかいろんな所で仕事をするにはもう少し勉強していきたいなと思います。
田中さん。
いややっぱり人の命に向き合ってる人たちってこんだけいろんな知識も情報も知らなきゃいけないしまだまだ勉強なさるわけじゃないですか。
まさか最初の症状から寄生虫ってところにたどりつくというのは想像してなかったです。
びっくりしました。
海外の食事でそういうふうになる事もあるというのは私も行くの好きなので改めて気をつけたいなと思いました。
(玉ちゃん)次回はどんなカンファレンスが繰り広げられるんでしょうか。
さようならどうも!皆さんおつかれさまでした。
(眞鍋)面白かった!おつかれさまでした。
生字幕放送でお伝えします2014/04/25(金) 16:05〜16:55
NHK総合1・神戸
総合診療医 ドクターG「手が震える」[字][再]

大学レスリングのコーチを務める35歳の男性。じん帯を断裂して手術したが、なぜか手が震え始めた。手術との関係は?子ども、妻、友人が語る言葉に謎を解く鍵が…

詳細情報
番組内容
かつてレスリングでオリンピックを目指した35歳の男性。5年前に引退し、現在は母校の大学でコーチをしている。指導中に、足のじん帯を痛めて入院し、手術。ところが、リハビリ中に手が震え、熱も出てきた。主治医は、原因を探るためドクターGを呼んだ。ドクターGは、妻、子ども、友人のことばを聞きながら、病気の謎を解くヒントを見つけていく。詳しい問診から意外な病気が浮かび上がった…。
出演者
【出演】自治医科大学附属病院医師…矢野晴美,【ゲスト】田中健,眞鍋かをり,【司会】浅草キッド,【語り】小野寺一歩,佐竹海莉

ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
バラエティ – クイズ
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学

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