科捜研の女11 2014.04.25

(能楽の音)
(能楽の音)
(吉崎泰乃)やっぱり日本人なら伝統芸能ですよねー。
(榊マリコ)後ろで座ってた若い能楽師さんばっかり見てたくせに。
あれは後見っていう大事な役目なんですよ。
ん?ほらこの人。
久瀬流の次期宗家っていう噂もあるぐらいなんですから。
久瀬荘治郎…。
(携帯電話)はい榊。
御倉山で不審死体…。
白骨…。
(乾健児)およそ50センチの深さに埋まってたのを森林管理局の職員が発見して通報したそうです。
(権藤克利)ちょうど掘り出し終わったところです。
骨盤はこれ。
恥骨下角は62度。
男性ね。
(土門薫)年齢は?それは詳しく調べないと。
身元につながる手がかりは?こんなものが見つかりました。
何かのカードですね。
(宇佐見裕也)着衣ですがかなり腐食しています。
もしかしたらこれ血痕かもしれません。
洛北医大に司法解剖を依頼して。
うん。
白骨も司法解剖するんですか?骨からでも死因がわかる可能性はあるし骨折や治療痕は身元割り出しの重要な手がかりになるの。
(風丘早月)遅くなってごめーん!ちょっと野暮用でつかまっちゃって。
先生。
顔色が悪いみたいですけど大丈夫ですか?平気平気!さっ始めよう!下顎骨の先端は鈍角。
やはり男性ね。
歯の磨耗状態はどうでしょう?10代後半から20代前半ってところ。
先生。
肋骨のこの部分に傷が。
手術のときに器具でついた跡かも。
先生!?大丈夫…。
ちょっと目眩がしただけだから…。
とにかく外へ。
立てますか?
(乾)まさか白骨を見てご主人のこと思い出したとか?本人は仕事の疲れがたまってたって言ってたけど。
あの…何の話ですか?ああ泰乃さんも宇佐見さんも知らないんだ?ええ。
風丘先生のご主人って…?…3年前に白骨遺体で見つかったの。
外科医だった風丘先生のご主人は「タバコを買いに行く」と言ってマンションを出て以来行方不明となってしまった。
7年が経過しようやく失踪宣告を請求する決意をした矢先北山の山中から男性の白骨遺体が発見され風丘先生の旦那さんであることが判明した。
そんなことがあったんですか…。
じゃあ倒れたのも白骨を見たせいじゃ…。
(日野和正)心のどこかでずっと負担になっていたのかもね。
風丘先生に限ってそんなことはないと思うけど…。
あ…それで司法解剖のほうはどうなったんですか?ちょうど同じ教室に解剖医の先生が残っていらして引き継いでもらえたわ。
死因を特定する所見は見つからなかったって。
蛍光反応から見て死後5年から10年ね。
この肋骨の傷解剖所見にはなんて?外科手術の際肋骨を押さえる器具でついた可能性は高いけど手術の内容や時期まではわからないそうよ。
あとは捜索願の顔写真と頭蓋骨の照合ですね。
ここ5年から10年の家出人とは一致しませんでした。
他府県で失踪した人かもしれませんね。
カードの分析終わりました。
何かわかりました?京洛電鉄の乗車用カードでした。
じゃあ磁気データも残ってるとか?
(宇佐見)ええ。
市内の複数の駅で乗り降りしています。
一番最後の出札記録は2003年の10月です。
8年前…。
白骨化した期間と一致するわね。
ええ。
でも京洛電鉄を使ってたってことは失踪する前は京都にいたってことですよね?だとしたらなぜ捜索願が出ていないのかしら…。
死亡推定時刻は今日の午前1時から3時の間ね。
財布に免許証があった。
名前は高崎宏沖。
御幸町通りで古着屋をやっている男だ。
頭部からかなりの失血。
頭の骨や頚椎も折れてるわ。
かなりの衝撃で地面に激突したようね。
やはりあそこから落ちたか。
土門さんこれ川に向かってそろえてありました。
遺書は?それらしいものは残ってません。
おいあの車はホトケさんのものか?ええ。
車検証で確認しました。
自分の車でここまで来て靴を脱いで飛び降りたとすれば自殺でしょうか。
(宇佐見)マリコさーん!これ見てもらえますか?ここです。
タイヤ痕…。
この車のものとは異なるトレッドパターンです。
ここに別の車が止まってたってことですか?仮にもう1台別の車が止まっていたとすれば自殺だと断定するのは早いわ。
念のため司法解剖に。
風丘先生…!あのもう…?始めましょう。
はい。
(早月)転落死で間違いない。
おそらく即死。
体表に不自然な傷もなく臓器に異常もなしですか。
うーん…。
あら?これなに?表皮の下の内出血やっぱり先端が尖ったもので突いた跡だった。
さすがですね。
あの小さな傷をよく…。
この間は迷惑かけたわね。
ごめん。
迷惑だなんてそんな…。
それよりもう…。
なんともないから心配しないで。
こっちにも遺書らしいものはありませんね。
うん…。

(泰乃)Nシステムに被害者の車は映っていました。
ですが同時刻に同じ方向に走行した車は前後30分に限っても100台以上ありました。
タイヤの種類は識別できましたけど車種までは絞り込めませんでした。
シャツと肌着の中にも小さい穴が開いてたよ。
高さも傷と同じ。
突っつかれたのは間違いないね。
何を使ったかわかった?それが傷といっても深さ3ミリ足らずなので全体の形状まで類推するのはかなり難しいです。
被害者の靴から妙なものが見つかったわ。
(日野)毛?うーん…。
頭髪にしちゃ細いね。
人の毛じゃないわ。
何かの動物の毛だと思う。
被害者は古着屋を経営してたんですよね?毛皮の服かなんかに付いてたんじゃないですか?これ見てくれるか?高崎宏沖の店にあった。
(日野)新聞ですか?いやただの新聞じゃありません。
6日付けの日刊紙の朝刊で5紙ともすべて社会面だけを集めたものです。
(乾)6日。
昨日ですね。
(泰乃)これ…。
こっちもです。
(泰乃)白骨遺体の記事…。
(宇佐見)転落死した高崎って男が身元不明の白骨死体の記事を集めていた…。
高崎は白骨死体に関わっていた可能性がありますね。
死体が埋められたのは5年から10年前。
その頃高崎って人がどこで何をしていたかわかる?8年前まで能楽師の弟子をしていたそうだ。
能楽師って…?久瀬流の宗家久瀬荘俊だが。
えっ?
(能楽の稽古の音)
(久瀬荘俊)軽い!!
(荘俊)もう一度。
(久瀬荘治郎)はい。
(能楽の稽古の音)軽すぎる!!無縁のつらさはかなさを背負って舞え!はい…!あの人…。
(荘俊)なんですかな?あなた方は。
お稽古中申し訳ありません。
京都府警の者です。
この男性に見覚えはありますか?さあ…どなたですかな?高崎宏沖さん。
8年前こちらでお弟子さんをなさっていたはずですが記憶にありませんか?いなくなった人間のことなど興味ありませんので。
先ほど稽古をつけられていたのが久瀬荘治郎さんですよね?久瀬流の次期宗家と噂されている…。
世間にどう思われようとハコビもコミもまだまだ…。
「家家にあらず。
次ぐをもて家とす」高崎宏沖さんのことをおうかがいしたいのですが。
そう言われましても私が内弟子の頃に通ってきていましたが1年ほどでやめてしまって…。
内弟子って…荘治郎さんは荘俊さんの息子さんじゃ?あ…実は私は養子なんです。
高校を出て宗家の内弟子となり8年ほど前24のときに養子縁組をしていただきました。
次の公演で『無縁』という曲をやられるそうですね。
『無縁』のシテは久瀬流の宗家を継ぐ者だけに許されている特別なものです。
それ故宗家には厳しく稽古をつけていただいている最中です。
やはりあなたが久瀬流を継がれるわけですか?ええ…。
ですが本当なら私ではなく荘一が継ぐはずでした。
荘一というのは…?宗家のひとり息子です。
歳は私より4つ下で私が養子に入る前は共に稽古に励み弟のような存在でした。
今はその荘一という人は?宗家から破門されこの家を出てから今はどこで何をしているのか…。
破門ってどうして…?久瀬流の嫡男として生まれた荘一は幼い頃から宗家に厳しく能を叩き込まれて育ちました。
その反動か高校生になると…。
(荘治郎の声)札付きの不良グループの仲間入りをしてしまい夜更けまで遊び歩いては稽古にも顔を出さずこの家にも帰らない日々が何日も続き…。
当然宗家はお怒りになられて宗家の奥様や私がなんとかとりなして…。
(久瀬晴江)荘一!
(荘治郎の声)奥様は荘一の居場所を探し出しこの家に戻るよう必死に説得されました。
その甲斐あって…。
(久瀬荘一)お願いします。
もう一度お願いします!お願いします!
(荘治郎)ところが不良グループとの付き合いから自堕落な生活に慣れてしまった荘一は…。
(能楽の稽古の音)
(荘治郎)稽古の最中に居眠りをするような粗相を何度も繰り返すにいたって…。
すいません!すいません!!すいません!すいません!!久瀬流を継げなければお前がこの家にいる意味はない!出て行け…!その夜荘一は誰にも何も告げず再びこの家を出てしまったのです。
それを知った宗家は荘一を破門にすると…。
その一件があったのであなたが養子に…。
はあ…。
私が養子に入ってしばらくしてから奥様も久瀬家を出て行かれました。
あの…それって舞台で使う能面ですか?ああこれはレプリカですよ。
舞台でかける面はその役の人間が自分の手で大切に管理するものでこんなところには置いておきません。
一致しました…!この久瀬荘一さんって人の年齢は?破門になったとき二十歳のはずよ。
白骨死体の年齢とも同じですね。
そして8年前から消息不明。
破門となり家族も誰も探そうとしなかったから捜索願の写真をいくら調べても照合しなかったのね。
(携帯電話)土門さん。
白骨遺体は久瀬荘一さんの可能性が高い。
そうか…。
こっちは妙なことがわかった。
8年前の10月に久瀬荘俊が北山署に盗難届を出していた。
盗難届?能の特別公演のための資金として自宅の金庫に保管してあった1200万円が盗まれたとな。
1200万円…。
ところがなぜか次の日に盗難届は取り下げられている。
えっ?それともうひとつ報告することがある。
捜査本部を立ち上げないってどういうこと?転落死した高崎の通帳に8年前久瀬荘一が失踪した数日後600万円がいきなり現金で入金されていた。
ひょっとしてそのお金久瀬荘俊さんの家から盗まれた?久瀬の家から1200万を盗み出したのは息子の荘一と弟子をやめたばかりの高崎だった可能性が高い。
だから盗難届をあわてて取り消した…。
宗家の体面を気にしてのことだろう。
そう考えると久瀬荘一を殺害したのは高崎宏沖である可能性が高くなる。
まさか仲間割れ?高崎は久瀬荘一を殺害し御倉山の山中に埋めたが8年経ってそれが発見されたのを知り自分の元に捜査が及ぶだろうことを恐れた末に…。
久瀬荘一殺害の犯人は高崎でありその高崎も自殺した。
それが捜査一課の判断だ。
高崎さんの転落死はまだ自殺だとは断定されてないわ。
高崎さんの店を調べてみる。
あっマリコさん!出ました。
古い血痕ね。
やっぱり人血だった。
血液型はA型。
白骨遺体の着衣の血痕と血液型も一致しました。
(泰乃)ということは高崎宏沖が久瀬荘一さんを?まだ確定したわけじゃないわ。
仮に高崎さんが久瀬荘一さん殺害に関与したとしても1つ腑に落ちないの。
(乾)何がです?高崎さんの口座には盗んだ1200万円のうち600万円があった。
仮に独り占めを狙って久瀬荘一さんを殺したとしたら残りの600万円はどこに行ったのか?久瀬荘一さんが殺される前に使っちゃったとか。
だとしても…白骨遺体が久瀬荘一さんだとは誰も気づかず遺体と高崎さんを繋ぐ線も捜査線上にはまるで浮かんでいなかったのにどうして自殺までする必要があったのかしら…。
(ノック)どうぞ。
(泰乃)失礼します。
久瀬荘俊さんがいらっしゃいました。
そう。
泰乃さん。
はい。
これお願いできる?は?これを…。
血液型や体格のデータスーパーインポーズ法により…息子さんであるという可能性は94パーセントという結果が出ています。
DNA鑑定を承諾していただければより確実に…。
それには…及びません。
あなた方が息子だというのだからそのとおりなのでしょう。
ではよろしいですかな。
待ってください!骨は…そちらで好きなようにしてくださって結構です。
破門にした段階で息子など最初からいなかったものだとそう思うようにしてきましたから。
風丘先生。
あらっ1人?ええ。
この間のお詫びにロールケーキ持ってきた。
ありがとうございます。
ちょうど美味しい煎茶を淹れてるところですけどよかったらどうですか?じゃあ…いただこうかな。
和菓子にすればよかった?
(宇佐見)「茶は養生の仙薬」と古くから言われてます。
貧血や疲れたときにはもってこいですよ。
ありがとう。
あっ久瀬荘俊さん来てますけど。
ええ。
それが…骨は好きにしてくれていいって。
実の息子かもしれないのに…。
不思議よねえ。
同じように家族がいなくなってもずーっと待ってる人間もいれば捜そうとしない親もいる。
(宇佐見)あえて目をそらしているのかもしれませんね。
(宇佐見)本当に大切な人を失った痛みはその瞬間より時間が経てば経つほど…大きくなっていくものですから。
どうぞ。
(早月)ありがとう。
うん…。
私子供いるじゃない?ええ確かお2人。
上の子大樹っていうんだけど中学に入ったら悪い仲間と知り合って先週とうとう万引きまでして学校に呼び出された。
(早月)下っ端で見張りをしてただけだから大ごとにはなりませんよって言われたけど私頭にきたから息子を怒鳴りつけたのね。
そしたら「うるさいなあもう…」って。
(ため息)それが…亡くなった夫と同じ言い方で…。
なんか…なんにももう言えなくなっちゃって…。
ひょっとして…白骨鑑定の日?ずーっと私1人で大丈夫だって自分に言い聞かせて思い出さないようにしてたの。
最初からいなかったそう思えばどうってことないって。
でもあのとき父親がいたらあの子をどう叱ってくれるだろうって思いが頭から離れなくて…。
そんな心の隙をふっと突かれた気がした。
マリコさん。
ああ!ごめんなさい立ち聞きするつもりじゃあ…。
ううん!構わないわ。
私は久瀬荘一さんを殺したのが本当に高崎宏沖さんだとはまだ信じられません。
そう。
だからあの白骨遺体もう一度調べていただけませんか?はい。
犯行現場はかなりの出血量があった。
おそらく死因は失血死かと。
大腿静脈か…外頸静脈…。
(早月)でも…凶器の痕跡はなし。
肋骨の傷はどうでしょう?確かにオペで使う鉤の跡に似てるけど…。
かなり古いものね。
やはり手がかりにはなりませんか…。
あら?これ何かしら?土門さん!おっ。
再解剖の結果わかったことがあるの。
こっちも手がかりが見つかった。
何?久瀬荘俊の別れた妻の居場所が見つかった。
それって…荘一さんの母親?これから話を聞きに行く。
お前も来るか?ええ。
私も行く。
あの傷の跡のことが何かわかるかもしれない。
久瀬荘俊氏と離婚されたのは?もう5年前になります。
息子さんのことをお伺いしたいのですが…。
荘一がどこにいるかわかったんですか!?いえそれはまだ…。
子供の頃大きな病気をされませんでしたか?はい…。
あの子幼い頃は病弱で小学校4年のときに気胸の手術を受けたことがあります。
宗家の妻の座から離れるにはそれ相応の理由があったと思うんですが…。
久瀬が荘一にしたことをどうしても許せなくて…。
それは破門されたときの?稽古に身が入らなかったのはあの子の至らなさかもしれません。
だけど…あの子に限って家のお金に手をつけるようなまねは絶対に…!でもご主人だった宗家は荘一さんが家のお金を盗んで逃げたと。
(晴江)弟子の中に荘一が書斎から出てくるのを見たという者がいて久瀬はそれを聞いて一方的に荘一を犯人と決めつけたんです。
(荘俊)今日限り荘一は久瀬流とは無縁の人間だ。
宗家それってまさか…。
荘一を破門にする。
(晴江の声)私は思いとどまるように久瀬に訴えました。
母親だからわかるんです。
あの子はお金を盗んでなんかいない。
しばらくは荘一が戻ってくるんじゃないか戻ってきたときに私がいなければあの子が困る…そう思って久瀬との暮らしに耐えてきました。
(晴江)でも…3年が我慢の限界でした。
あの子は…荘一は本気で性根を入れ替えようとしていたんです。
(晴江の声)不良グループをやめる代わりにけじめと称してリンチされたんです。
あっ!!荘一…。
どうしたの!?ねえ中に入って!ねっねっ!ほら中に…。
母さん…母さん…俺…抜けてきた。
え?もうこれで戻らないで済むから。
何言ってんのよ!?ひどい怪我だわ…。
ほらっ病院に行きましょう。
駄目だよ!奴らにやられたなんて言ったら…久瀬流の名前に傷がつく。
荘一…。
だから…父さんにも絶対に言わないで。
母親だからわかる…そう言ってたわね。
ええ。
あの言葉私信じたい。
ううん…信じる。
だとしたら証明しないと。
金を盗んだのは久瀬荘一じゃないってことをか。
ええ。
それと高崎宏沖は本当に自殺だったのかどうかも。
うん。
証拠は必ずあるはず。
絶対に見つけてみせる。
あとはよろしく。
うん。
(ため息)死亡した高崎さんのお腹の傷はクロスボウの矢で突いたものだということがわかりました。
このタイプの矢です。
(日野)なるほど。
クロスボウを突きつけて靴を脱いで飛び降りろって脅したってわけか。
靴を脱いで…?ああこれを見てください。
靴の踵の塗料片の分析結果です。
外装用塗料…欄干?ええ。
おそらく犯人はまず被害者の高崎さんにクロスボウを向けて欄干ギリギリに立たせて…。
(宇佐見の声)犯人に命じられて靴を脱ごうとしたとき…。
自殺だったらそんな不自然な脱ぎ方絶対しないですよね。
なおかつ腹部をクロスボウの先端で突かれたとすれば…。
(高崎)頼む…やめてくれやめてくれ…やめてくれ!やめてくれ!!これを見てください。
前を向いて飛び降りた場合と欄干に腰をかけて背中から落ちた場合の落下地点の違いです。
落下地点体の向きも一致するわね。
マリコ君のほうはどうだった?例の動物の毛の正体がわかりました。
(携帯電話)土門さん。
そう…こっちもすべて繋がったわ。
もうお話しするようなことはありません。
お引き取り願えますか。
わかったんです。
誰が息子さんを殺害したかそしてどうして殺されなくてはならなかったのか。
8年前1200万円の金を盗んだのは息子の荘一さんではありませんでした。
あいつは私に出て行けと言われたのを逆恨みして金を盗んで出て行ったんです。
そもそも宗家を継ぐふりをしてうちに戻ってきたのだって最初から金が目当てだったのかも…。
そんなことありません!荘一さんは本気だったんです。
本気で能に打ち込もうとしている人間が稽古中に居眠りするなど考えられません。
息子さんの頭蓋骨の裏側です。
側頭骨と頭頂骨の間にわずかな損傷の痕跡が見つかりました。
死亡する数か月前のものだと思われます。
奥様の話では荘一さんは不良グループをやめるためにリンチを受けていたそうです。
損傷自体は軽度で自然に治癒に向かいましたが硬膜下に血腫ができていたようです。
血腫は大きさにもよりますが頭痛や時に激しい睡魔や昏睡を引き起こすことがあります。
荘一さんは決して稽古をおろそかにしたのではありません。
それどころか…久瀬の宗家を継ぐために負った怪我のせいで苦しんでいたんです。
そんな人間が金を盗んで逃げたりするでしょうか。
奥様のお話では荘一さんが書斎から出てくるのを見たと宗家に告げた弟子の方がいたそうですがあなただったのではありませんか?一体なんのことでしょうか?久瀬荘治郎さんあなたは内弟子だった8年前に…荘一さんがこの家を出て行くどさくさを利用し高崎宏沖と結託して1200万円を盗み出しそしてそのことに気づいた荘一さんを殺害した。
ところが8年経って山の中に埋めた荘一さんの遺体が発見されたのを知った高崎さんは…。
(高崎)これもこれも…これもこれもこれも!やばいよ!どの新聞にも出てるし…。
なあ…自首しよう。
(マリコの声)だからあなたは正都川の橋の上に高崎さんを呼び出し…。
なんのつもりだ?いいから靴脱げ。
早く!
(荘治郎)上がれ。
(マリコの声)高崎さんを欄干の上に上らせ…。
(荘治郎)飛び降りろ。
やめてくれ…。
やめてくれ頼む…やめてくれー!あぁ−!それが高崎さん転落死の真相です。
冗談じゃない…根も葉もないでっち上げだ。
河原町のミリタリーショップでこれと同じものを買いましたね。
店員も顔を覚えていましたよ。
高崎さんの腹部の傷とあなたが持っている矢を鑑定すれば一致するはずです。
確かにクロスボウを買ったことはあります。
だからといって私が犯人という証拠にはならないでしょう。
だったらこれはどうでしょう?高崎さんが亡くなったとき履いていた靴から見つかりました。
うさぎの毛を加工したものです。
宗家ならおわかりですね?能で使われる尉面は老人の顔を表すため髭や眉毛が植えられています。
馬のたてがみが使われるのが一般的ですがうさぎが使われる場合もある。
これは久瀬流に代々伝わる尉面しかも『無縁』を演じるときにのみ用いられます。
この口髭に非常によく似た毛がどうして被害者の靴に付いていたのか…。
私じゃない…。
弟子の誰かが勝手に触って高崎に会ってたんです。
「能面はそれを用いる人間が自らの手で管理するものだ」そう言ってましたね。
そして『無縁』を次に演じることが決まってるのはあなただ。
これは何かの間違いです…!さもなきゃあ罠だ!見苦しいぞ…荘治郎。
尉面を調べさせていただけますか?8年前かなりの借金があったんだな。
そしてやはり金に困っていた高崎宏沖を巻き込んだ。
おいお前が本当に欲しかったのは金だけか?父さんにもう一度頭下げてチャンスをもらおうと思ってる。
どうしてもやり直したいんだ。
そうか…そのほうがいい。
そんな大金どうした?これは…。
(荘一)おい…ちょっと待てよ。
(高崎)離せ…お前には関係ねえだろう。
どういうことだよ?
(高崎)お前には関係ねえだろう!
(荘一)うちの金だろう!?おい…!うちから盗んだんだろう?俺が稼いだ金だ…。
(荘一)返せ…。
(高崎)てめえには関係ない!
(高崎)てめえみたいなボンボンに俺の気持ちわかるかよ!
(荘一)ああクソッ…!なんでここに…?
(荘一)うっ…!洛北医大の風丘と申します。
お弟子さんにこちらだと伺いまして。
何か?荘一さんのお母さんのDNAから白骨遺体は荘一さんであることが確定しました。
最初からいなかったと思うなんて無理ですよね。
私は夫を亡くしました。
それも突然人の手によって命を奪われて…。
主人とはいい思い出ばかりではありませんでした。
思い出せば後悔することのほうが多いかも。
「人は二度死ぬ」と聞いたことがあります。
この世を去ったときそして…そのあと誰もが思い出さなくなったとき。
だから…たとえ思い出すことがどんなにつらくても私は…忘れないようにしようと思っています。
息子さんを迎えに来てあげてください…!ご遺体を引き取りに?うん。
昨日洛北医大に久瀬荘俊が来て引き取っていったそうだ。
そう…。
うん。
だったら風丘先生にお礼を言わないと…。
いやあいにく先生は今日からしばらく休みだ。
息子と娘さんを連れて里帰りだそうだ。
なんでも急に子供たちに亡くなった旦那さんの田舎を見せたくなったらしい。
そっかあ。
大樹君とも仲直りできたんだ。
なんだ…何か知ってるのか?ううんなんでもない。
2014/04/25(金) 15:05〜16:00
ABCテレビ1
科捜研の女11[再][字]

「能舞台に潜む殺意!白骨の傷に隠された破門の秘密!!」

詳細情報
◇番組内容
沢口靖子演じる京都府警科学捜査研究所研究員の榊マリコが、事件現場に残された微細証拠を手がかりに真相を究明する科学捜査ミステリー。
◇出演者
沢口靖子、内藤剛志、風間トオル、斉藤暁、泉政行、奥田恵梨華、高橋光臣、若村麻由美、田中健 ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
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日本語
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