聖母・聖美物語 #19【愛の母子篇〜太陽の子】 2014.04.25


(聖美)お幕!
(弘明)前にも申し上げたとおり姉さんが第2子を妊娠できる可能性は極めて低い。
検査の結果はその最終宣告ということにも。
(聖美)あなたはもう私の思惑に気付いてるんでしょう?だったら余計なことは言わないで。
(弘明)始めます。

(波津子)またご飯残しちゃったんだって?いいよいいよ。
しょうがないよねまずいんだもん。
そう思って陽の大好きなゼリー作ってきたの。
ほら。
これだったら食べられるでしょ?フフフ。
召し上がれ。
おいしいよ。
(陽)おいしくない。
一人で食べたって。
(波津子)おばあちゃんがいるじゃない。
一緒に食べよう。
(陽)僕の椅子誰がご飯食べてるの?
(波津子)椅子?
(陽)峻君でしょ?僕の部屋もそのうち峻君にあげちゃうんでしょう?
(波津子)何でそんなこと。
いなくなるんだ。
僕はもうじき。
(波津子)どうして。
僕白血病なんでしょ?死ぬんでしょ?
(波津子)誰がそんなこと言ったの?誰に聞いたの?
(陽)峻君。
(波津子)あの子が?
(陽)峻君が言った。
僕は白血病でもうすぐ死ぬって。
(波津子)何てこと!くっ。
(波津子)ふんっ!お母さま?
(峻)あっ。
おばあちゃん。
僕これから陽君…。
(波津子)ろくでなし!このろくでなし。
恩知らず。
このっ。
やめてください!やめてください!
(愛美)峻!
(波津子)あっあっ。
ああ…。
どうしたっていうんですか?お母さま。
(愛美)いったい峻が何をしたって?
(波津子)裏切られた。
私はこの子に裏切られた。
(峻)僕がおばあちゃんを?
(愛美)何のこと?陽が自分は白血病だって。
峻ちゃんからそう聞いたって。
あんた言ったの?そんなことを。
言ってない。
僕何も言ってません。
陽がはっきりそう言ったの。
(峻)言ってません。
聖美伯母さんと約束したから。
どんなことがあっても陽君に病気のことは言わないって。
(波津子)じゃあ何で?もしかして確かめようとしたのかも。
確かめる?陽はうすうす感じ始めていたんです。
自分の病気は白血病なんじゃないかって。
だから事実を確かめるためにお母さまに鎌をかけようと。
そんな…。
何て答えたんですか?お母さま。
いや。
何って何も。
違うって言ってあげなかったんですか?だって何も言えっこないわよ。
急にそんなこと言われたら。
何も言えやしないわよ。
そんな…。
陽…。
(陽)放して!
(百合子)陽君!
(諏訪)落ち着きなさい。
陽君。
(陽)放して!
(百合子)陽君。
(諏訪)落ち着くんだ。
(陽)放して!
(百合子)陽君!
(諏訪)院長はどうした?
(百合子)今呼んでます。
(繁郎)陽!どうした?陽。
陽。
(陽)放して。
(繁郎)落ち着きなさい。
陽。
(繁郎)陽!ママ。
僕死ぬんだよね?怖いよ。
怖いよママ。
あなたは死なない。
ママが死なせない。
でも僕の病気は…。
話してあげましょう。
ホントのことを。
陽の病気はどういう病気なのか。
何のためにこんなつらい治療を受けているのか。
話してあげてください。
(繁郎)小児急性骨髄性白血病。
それが君の病気の名前だ。
白血病は血液のがんともいわれている。
がんって聞いたことがあるね?
(繁郎)白血病は怖い病気だ。
だけど希望を持って治していけばきっと元気になれる。
だから今までお前には病気の名前を言わずにきたんだよ。
どうして?
(繁郎)希望が一番大事だからだ。
(繁郎)希望が病気をやっつけて治してくれるからだ。
怖い病気だと知ってお前が希望を失ってしまうことがみんな一番心配だったんだよ。
治るの?僕。
(繁郎)ああ。
治るさ。
治る。
でもそのためにはまず僕は治るってお前自身が信じることなんだよ。
(諏訪)陽君より具合の悪かった子が治るって信じてしっかり治療して今では普通に元気に暮らしてる。
そういう子がいっぱいいるよ。
(陽)ホントに?学校にも行ける?
(繁郎)ああ。
もちろん行けるさ。
でも。
でも…。
あなたは太陽の子よ。
みんなを明るく照らす熱くて大きなお日さまなの。
そのお日さまが光を失ったらママもパパもみんなどうやって生きていけばいい?太陽に怖いもんなんかない。
この世の中であんたが一番強いんだから。
ママ。
ママ。
ママ。

(陽)ママ。
ママ。
(愛美)あなた確か弘明さんですよね?繁郎兄さんの弟の。
(弘明)なるほど。
あんたはすこぶる健康そうだ。
女として。
(愛美)はあ?
(愛美)峻。
(弘明)何だ?坊主。
(峻)森尾峻といいます。
(弘明)知ってるよ。
(峻)覚えていてくれたんだ。
小さいとき一度しか会ってないのに。
(弘明)大変だったからな。
陽が生まれたあの一日は。
繁郎伯父さんが憎かったですか?
(弘明)何だって?繁郎伯父さんが言ってたから。
子供のころ何でもっと弟に優しくしてあげられなかったんだろうって。
後悔してるって。
できればもう一度やり直したいって。
どうして兄貴はお前にそんなこと。
(峻)教えてほしいんです。
小さいときお兄さんにどうしてほしかったのかどんなことを言ってもらいたかったか。
ちょっと待て。
何の話かさっぱり分からん。
一晩中おしゃべりしたりとか2人でこっそりいたずらしたりとかそれからそれから…。
(弘明)頭の悪いがきだな。
もっと整理してしゃべれないのか。
叔父さんに聞けば分かると思ったんです。
何をしてあげれば陽君が喜んでくれるのか。
少しは僕のことが好きになってくれるのか。
陽を喜ばせる?叔父さんたちみたいに本当の兄弟じゃないけど僕は陽君のお兄さん代わりになって面倒見てあげたいって。
(弘明)くだらねえな。
えっ?
(弘明)おこがましいんだよ。
年上だからって何かしてやろうっていう魂胆が。
いい子ぶって点数稼いだところで陽にとっちゃうっとうしいだけ。
要するにお前同情してるんだろう?陽が白血病だから。
そういう本音はすぐバレる。
陽だってとっくに見抜いてるだろうさ。
えっ?
(弘明)ちなみにうちの兄貴はそういう小ざかしいところはまったくなかったね。
変に同情したり哀れんだりすることなく兄貴はただ淡々と自分の世界を生きていた。
俺にはそれがありがたかった。
病気のことを知ったからって陽に余計な慰めは無用だぞ。
弘明叔父さんは僕の母さんに似てる。
ありがとうございました。
妙なやつ。
(繁郎)ホントによかったんだろうかあんなことで。
どこまであの子が僕らの言葉を受け止められたのか。
救われたって信じてるわ。
救われた?あの子は今まで訳の分からない疑いの闇の中で独りぼっちで溺れかけていたんだもの。
いつから君はそんな楽天家になったんだ。
確かにあの子はわが家の太陽だ。
アポロンだ。
絶対神だよ。
そう言って君は抱き締めてやればいいだろう。
でも僕は医者なんだ。
抱いて慰めてやるだけじゃ済まされないんだよ。
(愛美)しょうがないよね。
お母さんとお医者さんじゃ見方も立場も違うんだから。
僕は恐ろしいよ。
事実を知った陽ががんって何だ。
白血球って何だ。
放射線って何だって根掘り葉掘り聞いてくることがさ。
知ったことでかえって無限大に恐怖の闇が広がっていくことだって。
まるで日食みたいだわ。
日食?太陽が陰ってわが家の周りだけが暗くなってる。
でも太陽はまた必ず光を取り戻す。
まさに『絵馬』の世界ね。
えま?えまって何ですか?よく神社に掛かってる馬の絵を描いたお札みたいな?
(波津子)能にあるのよ。
『絵馬』っていう曲が。
それがどうかしたんですか?『絵馬』にはね神話に出てくる天の岩戸の故事が描かれてるんです。
前場で天皇のお使いで臣下が伊勢神宮へお参りに行くと土地のおじいさんが日照りの恵みを占う白い絵馬を。
(波津子)おばあさんが雨の恵みを占う黒い絵馬をお宮の扉に掛けに来る。
実はこの2人人間のふりをした神様だった。
(波津子)後場で後シテの天照大神は太陽の神様。
大神は舞を舞うと今度は天の岩戸の様子を再現してみせる。
スサノオノミコトの乱暴を怒ってシテがお宮に入ってしまうと世の中は真っ暗になって神様はみんな大慌て。
そこでツレの天鈿女命と手力雄命が立て続けににぎやかな舞を舞うと…。
お宮の中のシテは「あら。
私がいなくなって真っ暗なはずなのに何でお外はにぎやかなのかしら」って不思議に思ってこっそり表をのぞくんです。
そしたら「そら。
チャンス到来」とばっかり力持ちの手力雄命が天照大神をぐいっと表へ引っ張りだしちゃった。
そして世の中また明るくなりましたとさ。
面白い。
峻知ってた?
(峻)ううん。
(波津子)あっ。
この神話が面白いって言葉の語源だっていう説があるそうよ。
明るくなって人の顔がぱっと白く見えたって。
お母さんすごい。
何がそんなに面白いんだよ。
陽が今どんな気持ちでいるのか。
ごめんなさい。
陽にも現れてくれたらいいってそう思ったのよ。
太陽の光を蘇らせてくれるアマノウズメとタヂカラオ。
そういうありがたい神様があの子の前にも現れてくれたらって。
現れますよお母さま。
現れます。
もう現れてるんです。
陽を天の岩戸から引っ張りだしてくれる神様が。
太陽の輝きは不滅。
永遠に不滅なんだもの。
ウフフ。
ウフフフ。
ウフフ…。
ウフフフ…。

(愛美)陽君。
こんにちは。
陽君。
ママにね先に病室に行っててって言われて。
誰?
(愛美)あっ。
ママの妹で陽君の叔母ちゃん。
峻のママって言った方が分かりやすいか。
峻君のママ?
(愛美)そうよ。
迎えに来たんだね峻君を。
峻君。
やっといなくなるんだ。
僕のうちから。
おはよう。
陽。
今日は気分がよさそうね。
何描いてんの?
(陽)白血球。
フフッ。
そんなんじゃ何にも見えないわ。
後でパパに聞いてみようね。
白血球がどんな形してるのかって。
叔母ちゃんにご挨拶した?ほら。
ちゃんとよろしくお願いしますって。
叔母ちゃんはあなたにとってなくてはならない人になる。
仲良くしてちょうだいね。
よろしくお願いします。
(愛美)こちらこそ。
(愛美)峻。
よっぽど嫌われてるみたいねあの子に。
そんなことないわよ。
でも私が迎えに来るの待ってたみたい。
これでやっと峻君がうちからいなくなるって。
出てった方がいいのかなやっぱり。

(看護師)院長夫人の妹さん?いつまでも私たちがいると迷惑ばっかり…。
(看護師)えっ。
よく来れるよね。
だってはさみで刺しちゃったんでしょ?怖い。
(看護師)怖い。
ホントにね。
おはようございます。
(看護師たち)あっ。
おはようございます。
やっぱり私の噂を。
許さないわよ出ていくなんて。
言ったでしょ。
陽にとってあなたはなくてはならない人になるって。
あなたには当分離れに住んでもらうことになる。
少なくとも1年か2年は。
どうしてそんなに?・
(弘明)どうぞ。
(弘明)お待ちしてました。
聖美。
愛美さんも。
お兄さん。
何なんだよ?急に呼び出して。
聖美と愛美さんまで集めて。
話を始める前にまずは検査の結果を聞かせてちょうだい。
検査?予想どおりの結果です。
つまり非常に困難と言わざるを得ません。
姉さんが第2子を妊娠することは。
だ…第2子?妊娠?そう。
やっぱり。
(弘明)前回のような不妊治療を続ければ可能性がないとはいえません。
ただどれだけ時間がかかるのか。
時間をかけたところで懐妊までたどりつけるのか。
残念だけどしかたがないわ。
(弘明)ただ排卵誘発剤を使っていけば妊娠可能な卵を育てることはできる。
これは前回と同じ形で…。
ちょっ。
ちょっと待ってくれ。
お前たちいったい何の話してんだ?妊娠だ排卵だって俺に何の相談もなく何のためにそんな検査を。
赤ちゃん産みたいからよ。
2人目の子供が欲しいからよ。
何で今になってそんなことを?赤ちゃんは母親だけが…。
私だけがしてあげられる陽への特別な贈り物だから。
赤ん坊が贈り物?
(弘明)知ってのとおりAMLのドナーとして最も適合率が高いのは兄弟姉妹。
自然に妊娠したって30%近い確率でドナーになり得る赤ちゃんが生まれるんだからかなりの高確率だ。
まさかそのために赤ちゃんを?陽君のドナーにするために?そこまで思い詰めてるならなぜ俺に言わなかった。
何で一言相談してくれなかったんだ。
話をする前にまずは私の体の状況を知っておきたかった。
その結果しだいで全てが決まるから。
結論は出たってことだな。
聖美に妊娠は無理なんだろ?神様が許さないってことだよ。
ドナー目的で赤ん坊を産もうだなんて。
(弘明)いくらでもいますよ。
世界中に。
白血病にかかった子供のためにドナーベビーを産もうって親は。
ドナーベビー?自然な妊娠に懸ける場合もあれば医者が受精卵を徹底的に選別してドナーの精度と確率を上げるケースもある。
遺伝子操作をするっていうのか。
自然の摂理を無視して人工的に都合のいい子供をつくるのか?実際にそれで多くの人が救われているわ。
どっちにしたって夢にすぎない。
聖美が妊娠できない以上。
卵は大丈夫って言ってるじゃない。
あなたの精子と掛け合わせて弘明さんがいくらだって優秀な受精卵をつくってくれるわ。
そんなものいくらつくったって育てる体がなかったら…。
(愛美)うん?まさか。
愛美は天鈿女命なの。
アマノウズメってゆうべの話の?そして手力雄命は弘明さん。
2人の神様がもう一度陽の命を輝かせてくれるわ。
私に何をしろって?私に何の関係が?あなた言ったわよね。
私のためなら何でもするって。
言ってくれたわよね?《私姉さんのためだったらどんなことだってする》《愛美》《よかった。
あなたが私の妹で》《姉さん》私に子宮を貸して。
えっ?私にあなたの子宮を貸してちょうだい。
私の代わりにあなたに産んでもらいたいの。
陽のためのドナーベビーを。
2014/04/25(金) 13:30〜14:00
関西テレビ1
聖母・聖美物語 #19[字][デ]【愛の母子篇〜太陽の子】

聖美(東風万智子)は息子の病気を治したい一心で、夫殺しの容疑がかかる愛美(三輪ひとみ)を絶対無実にすると誓い、旧知の星川(風間トオル)に弁護を依頼する…。

詳細情報
番組内容
 波津子(丘みつ子)は、陽(平林智志)から「僕は白血病という病気で、もうすぐ死ぬと峻(谷藤力紀)くんに言われた」と告げられる。陽は、峻に言われてもいない事を口走ったのだが、逆上した波津子は孫の言葉を否定することなく、峻を責め立てる。
 聖美(東風万智子)と繁郎(原田龍二)は覚悟を決めて、陽に病名を伝える。白血病という事実を受け入れようとしながらも陽は、聖美の胸にしがみつき大粒の涙を流す。
番組内容2
「何があってもこの子の命を救う」。改めてそう誓う聖美だった。聖美たち親子の姿を切ない気持ちで見つめる愛美(三輪ひとみ)に、弘明(金子昇)が意味深なことを言ってくる。
 数日後、聖美は愛美を弘明のもとに連れて行く。そこには繁郎もいて…。
出演者
柳沢聖美:東風万智子
森尾愛美:三輪ひとみ
柳沢繁郎:原田龍二
柳沢弘明:金子昇
柳沢波津子:丘みつ子
星川真輔:風間トオル ほか
スタッフ
企画:横田誠(東海テレビ)
原作・脚本:いずみ玲演
演出:吉田使憲
プロデュース:西本淳一(東海テレビ)
中頭千廣(TSP)
神戸將光(TSP)
齋藤頼照(TSP)
音楽:辻陽
主題歌:「炎の花」ハルカ ハミングバード(ユニバーサル ミュージック)
制作著作:TSP
制作:東海テレビ
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ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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