富岡製糸場:世界文化遺産登録を勧告 6月にも決定

毎日新聞 2014年04月26日 03時28分(最終更新 04月26日 10時51分)

富岡製糸場=群馬県富岡市で2014年4月25日午後、本社ヘリから
富岡製糸場=群馬県富岡市で2014年4月25日午後、本社ヘリから

 日本が世界文化遺産に推薦していた「富岡製糸場と絹産業遺産群」(群馬県富岡市など)について文化庁は26日、世界遺産への登録の可否を調査する「国際記念物遺跡会議」(イコモス、本部・パリ)が「登録が適当」と、国連教育科学文化機関(ユネスコ)に勧告したと発表した。世界の絹産業の発展と絹消費の大衆化をもたらした普遍的価値が認められた。今年6月にカタールの首都ドーハで開かれる第38回ユネスコ世界遺産委員会で、正式決定する。文化庁によると、イコモスが登録を勧告した場合、世界遺産委員会でもそのまま認められる可能性が極めて高い。

 「富岡製糸場」が正式に登録されれば、日本の世界文化遺産は昨年の「富士山」以来14件目。世界自然遺産も含めた世界遺産では国内18件目となる。近代産業遺産では国内初。

 イコモスはユネスコの諮問機関で、各国から世界遺産に推薦された案件の価値を評価する専門家組織。富岡製糸場については昨年9月に現地調査を実施した。勧告内容によると「19世紀末期に養蚕と日本の生糸産業の革新に決定的な役割を果たし、日本が近代工業化世界に仲間入りするかぎとなった」などと高く評価された。

 富岡製糸場(富岡市)は、政府が作った日本初の官営製糸工場で、1872(明治5)年に開業した。その後、民間に払い下げられ、1987年まで稼働した。木骨レンガ造りの繭倉庫、繰糸場などがほぼ完全に残っている。製糸技術開発の最先端として、国内の養蚕・製糸業を世界一の水準に引き上げた。

 構成資産は、富岡製糸場のほか▽近代養蚕農家の原形となった「田島弥平旧宅」(伊勢崎市)▽国内標準になった養蚕法「清温育」を確立した「高山社(たかやましゃ)跡」(藤岡市)▽岩の隙間(すきま)から吹き出す冷風を利用した蚕の卵の貯蔵施設「荒船風穴(あらふねふうけつ)」(下仁田町)の3施設。

 2003年に群馬県が世界遺産登録を目指す構想を発表し、07年1月に推薦候補を記載した暫定リストに入った。12年、政府がユネスコへの推薦を決定していた。【三木陽介】

 ◇富岡製糸場

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