ハートネットTV「おかえり〜非行に走る子供たちの居場所〜」 2014.04.24

ツバサという少年を迎えにいく一台の車。
(取材者)ツバサも今頃はウキウキしてるでしょうね。
(中本)ウキウキいうよりもどうかな?長年非行に走る子どもを支えるボランティアを続けてきた…向かったのは市街地から1時間ほど離れた広島少年院。
中本さんが5年前から面倒を見てきた子どもがこの日少年院を仮退院するのです。
出迎えるのはツバサの姉と中本さん。
彼には今両親がいません。
ツバサは去年恐喝と暴行で少年院に入る事になりました。
14歳から15歳にかけての13か月間をこの中で過ごしたのです。
(ツバサ)ありがとうございました。
1年ぶりに社会に出てきたツバサから最初に聞いた言葉は「不安」でした。
去年刑法を犯した少年の数は戦後最少を記録。
しかし再犯者の占める割合は3割を超え過去最高となりました。
再犯をする子どもの中には家庭に恵まれず社会に居場所を見つけられない子も少なくないといいます。
温かく迎えてくれる居場所を見つけられるか。
ツバサが口にした不安を見つめる事にしました。
(取材者)少年院大変じゃった?結構きつかったです。
(取材者)何が?何か…結構ボロカス怒られるし。
行進とかいって足踏みみたいなの…。
みんなで足とか合わせて行進したり…。
(ひろみ)丼飯やね。
長年子どもの非行を見てきた中本さんの教訓は腹が減ると悪さに走る。
ツバサも空腹に耐えかね恐喝した事が少年院に入るきっかけとなりました。
中学の卒業も少年院の中で迎えたツバサ。
ご飯さえ食べられていればと教師たちが嘆く声が中本さんのもとに届いていました。
「中本さんツバサが帰ってきたら飯を食いたいと思うんですがどうすりゃええでしょうか」いうて言うけん「日にちが決まってから考えようや」いうて言うてん。
今日何度ぐらいあるんかな?ツバサが中本さんと出会ったのは小学校5年生の時でした。
あらまあお帰りなさいませおにいさん。
ツバサのおにいちゃんお帰りお帰りよ。
ラーメン買うの?インスタントラーメン?お金ないじゃろう?中本さんは息子のPTA活動に関わる中空腹が原因で万引きなどの非行に走る子どもが大勢いる事を知りました。
以来30年家で食事が満足にとれない子どもたちに自宅を開放しボランティアで食事を振る舞い続けてきたのです。
このころツバサは母親が不在で父親には仕事がありませんでした。
生活を心配した小学校の校長の紹介で中本さんの家に通うようになりました。
(ツバサ)ごちそうさまでした。
おはようおはよう。
何作っとん?何作っとん?何作っとんかねえ。
2年後中学生になったツバサは仲間を大勢連れてくるようになりました。
相変わらず友達の家を泊まり歩く日々が続いていました。
連れてくる仲間もツバサと同じような生活を送っていました。
誰が一番腹が減っちょった?ケント。
ケントが減っちょった?ケントが呼んだんじゃ。
ケントがいきなりばっちゃんのとこ行きたいって言うけん。
偉かったのうケント。
(ツバサ)偉かった偉かった。
ばっちゃん言うからいつも。
2回言うよね。
偉かった偉かった。
偉かった偉かったケント。
ほうでえ。
まず万引きなんか絶対いけん事じゃけんの。
(ツバサ)万引きは犯罪です。
そうですそうです。
おなかがすいたらここに来てご飯を食べていたツバサ。
しかし中学3年の夏空腹に耐えかね中本さんにかけた電話はつながらず犯行に及んでしまったといいます。
でまあそれで何ていうか…少年院を出た翌日。
ツバサはお墓に向かっていました。
少年院に入る直前に亡くなった父親の墓参りをするためです。
母親は不在のため1人になったツバサ。
どこに住みご飯をどうやって食べるか。
友達とはこれまでどおりつきあえるのか。
少年院の中でさまざまな不安を抱えていました。
仮退院したツバサを受け入れてくれたのは姉の家族でした。
姉のひろみさんはツバサとは母親が違うため一緒に暮らした事はありません。
しかしツバサがどんな苦労をしてきたかは知っていました。
自分の生い立ちとも重なるところがあり何かしたいと思っていたところ中本さんから受け入れの相談をされたのです。
どうなんかね分からん。
何かむごい。
少年院を出て1週間後には仕事を始めました。
就職したのは金属をリサイクルする会社です。
この日は工場の機械を取り外す作業をしていました。
少年院で取得した危険物取扱者の資格も役に立っています。
もう調子のっとるけどね。
仕事がある人の再犯は無職である場合の僅か3/3にとどまるといいます。
ツバサが中本さんの家にやって来ました。
ご苦労さんご苦労さん。
ここに来るのは1年ぶりです。
まだ仮退院中のため自由に外出する事はできませんが週に1度中本さんの家に通う事だけは許されています。
どうした?あんたキメてから。
アハハハ!ケント。
ヒロミチか思うた。
何その頭?ツバサがいる事を聞きつけ昔一緒に遊んでいた仲間が駆けつけてきました。
もともと高くなかった?更生するためには少年院に入る前の交友関係を断つのが基本とされています。
しかし中本さんは昔の仲間と会う事を止めようとはしません。
厳しく制限するだけではうそをつき隠れて会うようになってしまうといいます。
ふと息をつける居場所を用意しておく事が再犯の予防につながる。
中本さんは200人以上の子どもを見てきた経験からそう確信しています。
30年にわたって多くの子どもたちの更生を助けてきた中本さん。
9年前からは地域に子どもの居場所を作る取り組みを始めています。
中本さんの家にやって来る子どもたちと地域住民とが交流する食べて語ろう会です。
こんにちは。
大人たちは町で彼らに出会うと冷たい目で見がちです。
一緒にご飯を食べ顔なじみになる事でそうした環境を少しでも変えていこうとしているのです。
この会には子どもたちの親も参加しています。
孤立しがちな親たちが地域とつながりを持つ貴重な場にもなっています。
この母親は3人の息子が中本さんの家に通っていました。
母親自身も食べられない時があると中本さんに弁当を作ってもらっています。
この日少年院にいる三男から中本さん宛てに届いていた手紙が渡されました。
手紙には漢字が多く使われ周囲への感謝の気持ちも見られました。
母親の知らない息子の成長が手紙の中にはあふれていました。
三男は2度目の少年院。
最初に少年院を出た時は更生のための居場所を作ってあげる事はできませんでした。
今夜寝る所がないという少女から電話がかかってきました。
(取材者)中本さん何て?でたちまちに…おはようございます。
おはよう。
次の日電話をしてきた子どもが中本さんの家にやって来ました。
(少女)中本さ〜ん。
16歳のこの少女は家族に暴力を振るったため家にいる事ができなくなったといいます。
住み込みの仕事を始めましたが体に合わず辞める事になりました。
住む場所をなくした少女。
親の同意が得られないため自分でアパートを借りる事もできません。
親への暴力は全く自分に関わろうとしない事への怒りだったといいます。
今まで?中本さ〜ん。
はい。
中本さ〜ん。
うん?何でもない。
少々お待ち下さい。
フフッ。
はいはいはい何でしょう。
何にもないよただ呼んだだけ。
食べたよ。
何かええ話になった?
(取材者)うん。
あっそうなの。
そんな大した話してないよ。
うち中本さん好きよって言っといた。
アハハハ!ほうじゃと。
ありがたい事じゃね好かれてね。
そういう結論になった訳?今言っただけよ。
いい相手がおったらね。
子どもにねベビドの服着せるんだ。
BABYDOLLっていう…。
何ねそれ?分かる?BABYDOLLって知らん?…っていうね服屋があるの。
ブランドなのかな?ソレイユとか行ったらあるよBABYDOLLって。
それを着せるん?子どもの服がある。
かわいいんじゃけ。
ほんでそんなのを着せて連れて歩くのが夢?うん。
まあ〜なんとたわいもない事ですね。
再び非行に走るか立ち直り社会の中で生きていくか。
そのはざまで子どもたちは心の居場所を求めもがき続けています。
ツバサが少年院を出て1か月が過ぎました。
お帰りと迎えてくれる家族もできました。
仕事はまだまだ覚える事だらけですが当初口にしていた不安は薄らいできているといいます。
俺すごいぜ。
ほらほら。
わっすごいね今。
一口でいった。
何かムカつく顔だったな。
もういわしとん?ガンガンですよ。
いやいや…。
ツバサにとって立ち直るために必要な心の居場所が出来つつあります。
2014/04/24(木) 20:00〜20:30
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV「おかえり〜非行に走る子供たちの居場所〜」[字]

過酷な家庭環境から犯罪や非行を繰り返す子どもたち。30年以上、非行少年の立ち直りを支援する元保護司・中本忠子さんの日々を通して、再犯少年たちの更生の道を探る。

詳細情報
番組内容
刑法犯少年6万5000人強のうち、再犯の子は3割以上。統計史上最高だ。虐待やDVなど過酷な家庭環境から、特定の子どもたちが犯罪や非行を繰り返す実態が明らかになりつつある。広島在住の中本忠子さん(80)は30年にわたり、子どもたちを自宅に招き手料理を振る舞うなど、家庭に代わる居場所を作り、非行からの立ち直りを助けてきた。中本さんの元に通う子どもたちの姿から再犯少年たちの更生に何が必要か考える。
出演者
【語り】河野多紀

ジャンル :
福祉 – 社会福祉
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
趣味/教育 – その他

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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