(聖美)あなた。
(繁郎の泣き声)
(裁判長)傍聴人は静粛にお願いします。
(繁郎)はい。
すいません。
すいません。
(星川)証言者の言葉に込められた一つ一つの真実が傍聴人の心を打ったのだと思います。
(星川)何か他に言いたいことはありますか?
(聖美)妹は誤解されやすい人間です。
でも心は誰よりも真っすぐです。
愚直なくらい真っすぐ過ぎてなかなか人に本心を分かってもらえずそのことにまた傷ついてしまう。
不器用なんです生き方が。
前々から殺意があったなんてあり得ない。
検察の方がおっしゃるような計算なんか一切なかった。
あったのはただ一心に息子を守りたい。
その気持ち一つでした。
そして今妹は心の底から藪野さんの死を悲しんでいます。
どんなにひどい目に遭わされても初めて愛した人であり最愛の息子の父親です。
その人をわが手であやめてしまったのですから。
妹はこれからも心を込めてご供養を続けていくでしょう。
私も妹と共に藪野さんのご冥福をお祈りしてまいりたいと存じます。
(星川)あらためて家族として二度と被告人の周辺にこのような問題が起きないよう気を配っていかれるおつもりですね?はい。
ですが妹の監視者になるつもりはありません。
(星川)というと?温かく手を取り合って生きていきたい。
同じ親から生まれた唯一無二の絆を感じながら私は妹を支え妹にもまた私を支えてほしいんです。
離れていた時間をまたゆっくりと埋めていこうね。
2人でこの絆を大切に育てていこうね。
ずっと一緒だよ。
(峻)見て。
陽君。
1年生で習う漢字の練習ノートを作ってみたんだ。
一個一個書き順も書いておいたからこのとおりに練習すればすぐに覚えられるよ。
(峻)よく知ってるね。
「白」っていう字。
(陽)「血」っていう字はないの?
(峻)血?
(陽)僕の病気これだよね?白血病っていうんでしょ?
(峻)陽君の病気はちょっと血が固まりにくいだけだって。
教えてよ。
ホントのこと知ってるなら。
(峻)僕はそれしか聞いてない。
そんな大変な病気だとは伯父さんも伯母さんも言ってなかったし。
じゃあ何でちっともよくならないの?意味ないよ。
こんなのやったって。
(繁郎)いやぁ。
無理してでも行ってよかったよ。
今日はホントに。
(繁郎)誇らしかった君のことが。
あれは俺の奥さんなんだってもうみんなの前で叫びたくなっちゃった。
あなたったら。
(繁郎)おお。
峻君。
いい知らせだよ。
今日の裁判ね伯母さんの証言がとにかく素晴らしくてねあれならお母さん間違いなく無罪になる。
伯父さんが保証するよ。
気が早いわ。
検察の求刑は先生の予想どおり6年だったんだし。
(繁郎)いや。
絶対引っくり返るって。
ほら裁判官も何やかんやいちゃもんつけてた検察官もほらみんな感動してたじゃない。
(繁郎)あれでね有罪なんかにしたらもう人間性疑っちゃう。
どうした?峻君。
うれしくないのかい?何かあったの?
(峻)陽君が…。
うん?陽がどうかした?伝えた方がいいのかも。
ホントのこと。
何だって?陽の病気のこと。
話すっていうのか?AMLだって。
お前は白血病だって言ってやるのか?たった7つのあの子に。
受け止められるわけがない。
でも本人が疑ってる以上は…。
僕は反対だ。
大人だったら告知した方が治療がしやすくなるケースもある。
でも陽はまだ…。
嘘に嘘を重ねていけばどんどん傷口が広がっていく。
事実を知ったときのショックが大きくなる。
最後まで嘘をつき通せばいい。
もうとっくにおかしいと思ってるはずよ。
何で髪の毛が抜け落ちるような強い薬を使うのか。
次々と新しい治療法が加えられていくのか。
聞きたくなくても情報が耳に入ってくる時代だもの。
白血病が恐ろしい病気だってことぐらい小さな子だって知ってるわ。
ちゃんと話してお前は大丈夫だって言ってやるのか?治療法がうんと進化してるんでしょう?生存率がどんどん上がってるんでしょう?でも100%じゃない。
陽が生きられない可能性はゼロじゃないんだ。
そんな状態で助かると断言すること自体が一つの嘘だろう。
だったら今のままだましきった方がいい。
助かるって言うわ私は。
嘘じゃなく本当に大丈夫なんだって言ってあげるわあの子に。
私があの子を助ける。
必ず助けてみせる。
医者でもできないことをどうやって?やれるものならやってみせてくれよ!よし。
落ち着いてるね。
生きろよ。
陽。
パパは今お前のためにワインを集めてるんだ。
いろんな国のいろんなブドウを使ったいろんなワイン。
全部お前が生まれた年にできたワインだよ。
何十本もあるからね。
お前の誕生日が来るたびに毎年一本ずつ開けて30歳になっても50歳になっても80歳になってもまだなくならない。
お前が元気に生きていることをずっとずっとみんなで乾杯して祝い続けるんだ。
ハァー。
・
(足音)
(職員)起立。
(裁判長)開廷します。
判決を言い渡します。
被告人は前へ出てください。
(裁判長)「主文」
(裁判長)「被告人は無罪」
(裁判長)以下理由を述べます…。
峻君。
(裁判長)裁判所が証拠によって認定した事実は以下のとおりである。
「被告人は内縁の夫藪野良次との間に長男峻を…」
(愛美)峻!
(峻)母さん。
(愛美)峻!長いこと心配かけてごめんね。
あんたの顔ちゃんと見せて。
(愛美)峻。
先生。
母さんを助けてくれてありがとうございました。
(星川)よく頑張ったね。
お母さんも君も。
そして…。
(愛美)姉さん。
姉さんがいなかったらきっと私諦めてた。
(愛美)人を殺したんだからしょうがない。
私も藪野と一緒に地獄に落ちるしかないんだって。
峻君がいるのにどうして諦められる?母親っていうのはね諦めの悪いものなのよ。
姉さん。
姉さん。
乾杯。
(一同)乾杯。
ああー。
(拍手)おめでとう愛美さん。
(星川)検察は控訴を断念する方針のようです。
もう恐れることはありませんよ。
(愛美)ハァ。
ありがとう。
皆さん。
本当にありがとうございました。
先生。
姉さん。
お兄さん。
峻。
大奥さま。
ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。
峻のことも長い間お世話になりっ放しで。
(波津子)正直困ったことだと思いましたよ。
事件の知らせを聞いたときには。
柳沢家の名誉を守るためには聖美さんにこのうちから出てってもらうしかないとまでも。
お祝いの席だよ母さん。
で?これからどうするの?事件のあったアパートに戻るわけにもいかないし。
峻ちゃんはもうこっちの中学に転校させちゃったし。
あっ。
姉さんがこれからはそばで暮らそうって言ってくれて。
だから近くに部屋を借りて新しい仕事を探すことに。
急ぐことないわ。
ここで少し体を休めてからでいいじゃない。
ねえ?お母さま。
ほら峻君。
おばあちゃんにプッシュプッシュ。
母のことをよろしくお願いします。
一生懸命どんなことでもお手伝いします。
だからもうしばらく僕たちをここに置いてください。
別に追い出そうっていうんじゃないんだから。
(峻)お願いします。
(波津子)やだな。
峻ちゃんにそういうことをされるとおばあちゃん困っちゃう。
ほらね。
先生。
峻君はおばあちゃんキラーなんですよ。
(一同)ハハハ。
(星川)ああ。
なっ?あっ。
そういえば峻君は桜ヶ谷中学に通ってるんだよね?はい。
(星川)うちの娘が言ってた。
すごく優秀な子が転校してきて負けていられないって。
それって峻のこと?
(星川)ええ。
やっぱり学年トップって先生のお嬢ちゃんだったんだ。
(愛美)すごいじゃん峻。
先生の娘さんと成績張り合ってるなんて。
(峻)そんなこと…。
すごいよ。
それってホントにすごいことだよ。
何か私急に生きる希望が湧いてきた。
(愛美)ああー。
何ておいしいんだろう。
これが生きてるってことなんだよね。
牢屋で何度も絶望しそうになったけど諦めなくてよかった。
峻。
お母さん本当に生きててよかった。
やっと愛美さんらしくなってきたじゃない。
お代わり下さい。
はいはい。
(波津子)私も頂こうかしら。
はい。
遅くまでお引き留めして。
(星川)いい家族だね。
どんなにつらいことがあっても負けない君の心がこの家族を支えている。
私にはそう見えた。
後は陽君さえ病気を克服できれば。
どうなの?陽君の様子。
ここのところちょっと。
病気が長引くと色々と難しいことがあって。
でも私は前しか見ていません。
陽を真ん中に私たち家族がもっと大きな幸せに包まれる日がすぐそこまで来ているから。
少しでも君の幸せの手伝いができてよかった。
ありがとうございました。
・寂しそうだね先生の背中。
分かるような気もするな。
僕だって患者さんが元気になって退院するときちょっと寂しくなったりするもん。
若くて奇麗な女の人だったりすると余計にね。
あなたったら。
・
(林田)当直ですか?
(弘明)おお。
事務長。
これから朝まで一気にぼろぼろ生まれそうなんですよ。
事務長こそ何だってこんな時間まで?
(林田)迷ってたんです。
母屋へお祝いに伺おうかどうか。
(弘明)ああ。
例の裁判終わったんですね。
(林田)お声が掛からなかったようですねあなたには。
(弘明)もともと俺には関係が…。
いや。
そうとも言えないか。
《この裁判は今後の吉凶を占う賭けなのよ》《裁判が無事に終わって愛美を私の元へ取り戻したらそのときは…》
(林田)愛美さんが無罪放免になって万々歳とはいえ世間はそう簡単に色眼鏡を外しちゃくれませんからね。
法律上では罪がないっていったって人一人しかもわが子の父親を殺したのは事実なんだ。
せいぜい身を律してこれ以上病院の評判に傷を付けないでいただきたいものですねあの方には。
・
(看護師)先生。
お願いします。
さてと出番だ。
事務長。
病院の評判は結局は医者の腕しだいですよ。
(愛美)初めてだね。
こんなふうに布団並べて一緒に眠るの。
正確には30年ぶり。
あのころいつも赤ちゃんのあなたに添い寝してたのよ。
(聖美)《まなちゃん。
まなちゃん。
ねんね。
ねんねよ。
ねんね》悔しい。
何にも覚えてないや。
当たり前じゃない。
私にとっても遠い記憶。
まだ4つ5つのホントにちっちゃいお姉ちゃんだったのよ。
ずっと一緒って言ってくれたよね?うれしかった。
姉さんの言ってくれたこと頭から尻尾まで全部。
あの証言がなかったら私…。
私だけの手柄じゃないわ。
うれしいのは無罪にしてもらったことだけじゃないの。
裁判が始まったばかりのころは不思議に思ってた。
何でこの人私なんかのためにこんなに必死なんだろうって。
だけどあのとき急に分かった。
頭じゃなくて心でぱって感じたの。
何のこと?姉さんの言葉がずんずん胸に染み込んでこの辺があったかくなって。
守られてる許されてるって実感したの。
これが家族のぬくもりなんだって。
姉さんが一生懸命になってることに理由なんかない。
私たちが同じ親の下に生まれたきょうだいだから。
ただそれだけなんだって。
違う?私間違ってる?家族の愛情に理由なんていらないよね?そうね。
きっと愛美の言うとおりね。
たとえ世界中の人間を敵に回しても守ってくれる人がいる。
守って許して手を差し伸べてくれる。
それが家族なのよね?だから私姉さんが困ってたら何だってする。
非難されようが憎まれようがバカにされようがそんなの知ったこっちゃない。
だって家族だもん。
二人っきりの姉妹だもん。
私姉さんのためだったらどんなことだってする。
愛美。
よかった。
あなたが私の妹で。
姉さん。
お母さん。
その辺にいるんじゃないかな。
私たちのことにこにこ笑って見てる気がする。
ハァー。
お母さん。
・お幕!2014/04/24(木) 13:30〜14:00
関西テレビ1
聖母・聖美物語 #18[字][デ]【愛の母子篇〜支える心】
聖美(東風万智子)は息子の病気を治したい一心で、夫殺しの容疑がかかる愛美(三輪ひとみ)を絶対無実にすると誓い、旧知の星川(風間トオル)に弁護を依頼する…。
詳細情報
番組内容
愛美(三輪ひとみ)の裁判で証言台に立つ聖美(東風万智子)。愛美がいかに不遇な境遇にあったのか訴えていると、隠れて傍聴席にいた繁郎(原田龍二)が話を聞いて、人目もはばからず号泣する。さらに裁判官や検察官までもが、愛美を更生させ、ともに生きていきたいと語る聖美の言葉に涙を流す。
その姿を見て弁護士の星川(風間トオル)は、愛美の無罪を確信する。
番組内容2
一方、陽(平林智志)は自分が重病にかかっていることに気づき始め、峻(谷藤力紀)に白血病がどんな病か聞いてくる。峻からそのことを聞かされ、ショックを受ける聖美だが、陽に真実を打ち明けたほうがいいのではないか、と思うように。当然、繁郎は反対するが…。
ついに愛美の判決が言い渡される日が訪れる。無罪を勝ち取れると信じる聖美だが、判決は…。
出演者
柳沢聖美:東風万智子
森尾愛美:三輪ひとみ
柳沢繁郎:原田龍二
柳沢弘明:金子昇
柳沢波津子:丘みつ子
星川真輔:風間トオル ほか
スタッフ
企画:横田誠(東海テレビ)
原作・脚本:いずみ玲演
演出:吉田使憲
プロデュース:西本淳一(東海テレビ)
中頭千廣(TSP)
神戸將光(TSP)
齋藤頼照(TSP)
音楽:辻陽
主題歌:「炎の花」ハルカ ハミングバード(ユニバーサル ミュージック)
制作著作:TSP
制作:東海テレビ
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ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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