ふんわりしっとりとした食感が魅力のシフォンケーキ。
きめ細かく繊細な絹織物シフォンにちなんで名付けられました。
シンプルな素材でバリエーションも豊富。
皆さんはこのケーキのふるさとをご存じですか?シフォンケーキは実はアメリカ生まれのスイーツなんです。
考案したのはハリー・ベーカーという謎の男。
シフォンは100年に一度のケーキと騒がれ全米に大ブームを巻き起こしました。
しかしそのレシピは20年もの間その男によって秘密にされていました。
ハリー・ベーカーとは一体何者なのか?今日は謎に包まれたシフォンケーキ誕生の物語をひもときます。
光る石をたどれば行き着く不思議な家にあのお菓子の家のヘンゼルとグレーテルの末裔が暮らしています。
彼らが振る舞うおいしいお菓子の物語をご賞味あれ。
スポンジケーキ焼いたでしょ?パウンドケーキも焼いたしフルーツケーキも…。
ホントね〜いろいろ焼いてきたわね。
ケーキってさ味も食感もそれぞれ違うでしょう?そうよ。
いろんなケーキあるわよ。
どうしたの?急に。
いや姉ちゃんがね俺に更なる飛躍を求めててさこれ見て。
違いですね!それならピッタリのケーキがありますよ。
え?どんなケーキ?フフフ!真ん中に穴が開いてる型で作るケーキです。
これの事?そうですよ。
それ何でしょう?あの〜…ケーキでしょう?「シ」?…シフォンケーキ!シフォンケーキです!あのふわっふわのやつだね!ふわっふわのやつよ。
違いを知るすてきな男になるためにはこのケーキを作ってみなきゃ駄目です。
挑戦してみますか?もちろん!じゃあまずはシフォンケーキがどうやって生まれたのかそれを知らなくちゃいけません。
OK!…という事で今宵ひもとくのはハリーの謎のシフォンケーキ。
ティータイムを華やかに彩る…軽い口当たりで子どもも大人も大好きな人気のスイーツです。
このケーキを考案したのは保険外交員だったハリー・ベーカーという男。
しかしどのようにケーキが生まれたのかそれは長い間謎とされてきました。
その謎に挑んだのはジャーナリストのジョセフ・ハートさん。
少ない情報を頼りに綿密な調査を行いました。
当時ハリーは仕事も家庭もうまくいかず行き詰まっていました。
そして39歳の時職を失い逃げるように向かった先がハリウッドだったのです。
新天地で仕事にしたのが若い頃から趣味だったお菓子作り。
そして人生の再起をかけて挑んだのが新しいケーキの開発でした。
お手本にしたのはハリーが好きだったアメリカ伝統の…脂を使わず卵白だけで焼くヘルシーなお菓子。
白くてふわふわな食感が特徴です。
ハリーはこのケーキにしっとり感とコクを出すため試作を繰り返します。
その数なんと400回以上!そして4年の歳月をかけようやくその味にたどりつきました。
口の中でふんわり溶けるような食感。
シフォンケーキ誕生の瞬間でした。
ジョセフさんが手に入れた一枚の写真。
彼がハリー・ベーカーです。
ハリウッドの高級レストランで出されるとシフォンケーキはセレブたちをとりこにしその味を求めて多くの人が訪れました。
注文はひっきりなし。
ハリーはアパートの一室で一日18時間たった一人でケーキを焼き続けたといいます。
レシピの秘密はどこの家庭にもある意外な調味料を入れる事。
しかしその秘密はある時期まで絶対に明かされる事はありませんでした。
人生につまずいた男が執念で生み出したシフォンケーキ。
それは男の人生を救った奇跡のスイーツだったのです。
シフォンケーキってハリウッドで生まれたお菓子だったんだね。
ねえ。
ちょっと驚きましたね。
うん。
4年もかかってるのよね出来るまでに。
すごいよ!すごいこだわりですよこれは。
だって400回以上試作を…。
なかなかできる事じゃないよね。
ねえ!家族も仕事もなくした男が生み出したケーキだからさこれはちょっと心してかからないといけないね。
じゃあまずは味わいのキメテをどうぞ!ハリー・ベーカーのオリジナルの味を目指します。
はいはいではまずはメレンゲ作りいきましょうか。
絹のようなシフォンを作るには一番大事な作業ですから。
はいはい。
はいオキテどうぞ。
きめ?そうです。
きめが粗いとシフォンの命であるふわふわとした感じが出ない訳。
だからきめ細かいのをつくってほしいの。
OK!OKって…じゃあいきますよ。
これをその中に入れてくれないと駄目なんだけどぼわ〜ん!出たね。
これ酒石酸っていうのよ。
これを使うと理想的なメレンゲが簡単に出来るの。
これをね卵白に入れて下さい。
はいはい。
これアメリカではクリームオブタータといいます。
へえ〜。
これね酒石酸の酸が卵白を引き締めてくれる訳よ。
だからふわっとしたものをキープしてくれるメレンゲになる訳よ。
そうなんだね。
ハリー・ベーカーさんもそうしてたのよ。
そうなんだ!角が立つかしらね?立ってますよ。
立ってますか?うん!…というかさかまどは何でシフォンケーキの作り方を知ってる訳?それはね…。
ハリー・ベーカーがかたくなに隠し続けたレシピの秘密。
それは生地にサラダオイルを入れる事でした。
どこの家庭にもある身近な調味料がふんわりしっとりとした独特の食感を生み出したのです。
レシピが明かされたのは20年後1947年の事でした。
第2次世界大戦が終わり人々は豊かな生活を夢みて新しいものを求めていました。
63歳となり以前のようにケーキが焼けなくなったハリーはついにレシピの公開を決意します。
シフォンケーキを後世に残すためハリーは大手製粉会社にレシピを売却。
すぐに100年に一度の斬新なケーキとして新聞やラジオで紹介され話題を呼びました。
ケーキにサラダオイルを入れるというアイデアはアメリカ中の女性を驚かせたといいます。
戦後のアメリカに驚きと笑顔を届けたシフォンケーキ。
まさに100年に一度の伝説のケーキとなったのです。
へえ〜!レシピが公開されたのはシフォンケーキが生まれて20年も後の事だったんだね。
ねえ!びっくりだな〜。
レシピが公開されて10年間ねアメリカでシフォンケーキのブームが起こったそうなのよ。
それで日本にもやって来たと。
…で今作れてるって事だ。
そういう事ですよ。
次は卵黄を混ぜていきますよ。
はい。
まずボウルに粉類入れて…。
これどのぐらいいけばいいの?う〜ん…半分ぐらい。
半分ぐらい。
香りがいいね!いいですねいいですね。
はいどうぞ。
そしてサラダ油ですよ。
ケーキにサラダ油!これですよ。
これが誰も盗めなかった…。
ねえ!これで混ぜると。
ちょっとずつ真ん中から。
ああもうオレンジのいい香り!粉っけがなくなったらおしまいっていう感じ。
そしてメレンゲさん。
泡が消えてるともう駄目なんですよね。
ああいい感じじゃないかな?泡も潰れてない。
ホント?じゃあそれ合格です。
おっ!ズッと入れてまずそいつで混ぜるでしょ。
ハリーさん頑張ったんだね。
いやだって…。
4年間これやってたんだよ。
4年だよ?400回だよ?人生変わったんだもんな〜。
うん。
ではそこでさっきの型あったでしょ?それなんです。
これは何でこの形な訳?教えてあげない。
ええっ!?まず入れて下さい。
ケーキの生地入れる時はバター塗ったりするじゃない?うん。
その型にはバターを塗ると駄目なんです。
「シフォンバタダメ」と覚えて下さい。
これ重要なポイントです。
(2人)シフォンバタダメ。
覚えにくいわ!それを160℃のオーブンで50分でじっくり焼いていきます。
OK!アメリカで一世を風靡したシフォンケーキ。
しかし現在のアメリカ人に聞くと意外な事実が…。
アメリカではレシピ公開後およそ10年でブームが去り今ではあまり見かけないお菓子になったというんです。
時代によって愛されるお菓子が変わっていくのね。
そんな消えかかったアメリカの味を40年前に受け継いだ日本人がいました。
日本のシフォンケーキブームの立て役者。
アメリカ菓子の専門店を営む岩田有司さんです。
何かシンプルな大きなお菓子があって「これは何だろう?」という感じでそれが最初に見た時だったんじゃないですかね。
実は向こうで作ってみたんですね。
それはとても面白かったんですけど家で7つも卵を使ったっていって後で怒られたりしまして…。
アメリカ留学中にこのお菓子に出会った岩田さん。
試行錯誤を繰り返し本場の味を習得しました。
シフォンケーキは膨らみが命。
生地に取り込んだ空気を逃がさないように焼いていきます。
膨らんでる膨らんでる!熱々のシフォンはひっくり返して冷まします。
アメリカで学んだ技なんですって。
なるべく潰さないように…穴はこのためだったんですね。
逆さにすると生地が重力に引っ張られ縮むのを防ぐ事ができます。
仕上げはグレイズで飾ります。
バターと砂糖で作るトッピング。
素朴なケーキの味を引き立ててくれます。
日本でシフォンケーキを振る舞うと見た目のボリュームとふわふわ感にみんな感動したんですって。
やわらかさに対して日本人がとっても反応しているんじゃないかなと思いました。
日本で広く愛されるようになったシフォンケーキ。
ハリー・ベーカーのレシピは国を超え今もその味が守られています。
アメリカではあんまり食べられてないなんて知らなかったね。
日本であんなに人気なのにね。
ねえ本当にね。
じゃあケーキ焼けたんじゃないでしょうか?そうだね。
あっ膨らんでる!かまど!ホント?その膨らみがシフォンケーキのだいご味なのよ。
じゃあここでオキテ言って下さい。
はい!じゅ…重力?お菓子作りはねまさに科学です。
さっきも言ってたけどねそのまま冷ますと生地が重力に負けてどんどんしぼんでいきますよ。
ポンポンと10cmぐらい上からポンポンと落としてみて。
ポンポン。
あっポン!せ〜の!ひっくり返した。
おお〜!どう?これ。
重力に逆らってる状態ね。
そうです。
バター塗らなかったじゃない?器のところに。
だからひっくり返してもポロンって取れないのよ。
落ちないんだ!そう。
さあそろそろシフォンケーキ型から外しましょうかね。
もう完全に冷めてます。
はいはいはいはい!ほら盛り上がってるでしょ?ふわふわのままだね。
ふわふわねいいですね。
緊張感…。
難しい?ちょっと堅いの?いやいややわらかい。
ふわふわでしょ?あんまり右手を動かすっていう…。
やっと半分!相当密着してるのね。
うん。
1周はいったけど…ちょっと分かりません。
じゃあそれ試してみる?ひっくり返しますよ。
外れたらどうする?もう拍手喝采で。
喜びのポーズでじゃあ…。
いきますよ。
緊張の一瞬です!
(ドラムロールのまねで)ダダダダダダダ…。
せ〜の…。
お〜!きれいじゃない!完成です!こうなっちゃうけどこれ。
アハハハハ!いいねいいね。
これどうするの?かまど。
喜びのポーズですよ。
アハハハハハハ!もうここから動けないんだから。
ちょっと一息TeaBreak!日本で花開くシフォンケーキ文化をご紹介!日本各地でご当地シフォンが大人気!こちらは米どころ新潟生まれのお米シフォン。
小麦の代わりに米粉を使ったもちもちシフォンなの!花見の季節に登場するのはロールケーキタイプの…桜の香りと程よい塩気が絶妙よ。
更に富士山のお膝元では富士山形のシフォンケーキが登場!よっ!日本一!そんなシフォンケーキ大国日本ではこんなケーキ教室も!ちょっとのぞいてみると…。
講師は…ふくらし粉などを使わない無添加の焼き方を教えています。
素材の味を引き出すプロの技。
中には海外から学びに来る人もいるんですって!外国の人から見るとシフォンケーキは日本の味なのね。
台湾でコーヒーショップを営むリャオさんも日本にシフォンケーキを習いに来ました。
コーヒーを引き立てるお菓子を探して日本のシフォンにたどりついたんですって!みんなも世界のどこかで日本のシフォンケーキに出会えるかもしれないわよ〜!もうあれでしょ。
シフォンはもう日本のお菓子と言っていいんじゃないでしょうかね?そうだね。
言っていきましょう。
言っていきましょう!これからどんどん。
…と言いながらですねアメリカンなグレイズ作ろうかな。
グレイズね。
これどうやって作るの?今日はオレンジのシフォンだったでしょ?だからそれに合わせてオレンジのグレイズいきます。
OK!じゃあもうかけますよ。
滝のようにかかるっていう感じ。
はいいきます!美しくね。
お願いよ。
これが…。
来た!垂れていくんじゃない?ちょっと押すように外に流してくれれば滝みたいになるかもよ。
あとね生地の乾燥なんかも防いでくれるからグレイズ様は。
いい感じ!ほら!あら何かかわいいかわいい!出来ました!
(チャイム)あっ姉ちゃん帰ってきた。
姉ちゃんお帰り!ふわっふわのシフォンケーキ出来てるよ!フレッシュなオレンジを焼き込んだ爽やかな味わいのシフォンケーキ。
甘〜いグレイズと共にふんわりしっとりの絹のようなケーキを召し上がれ。
人生の再起をかけシフォンケーキを生んだハリー・ベーカー。
彼には子どもの頃からの夢がありました。
それは億万長者になる事。
シフォンケーキはそんなハリーの夢をかなえました。
レシピの売却額は当時の金額で1億とも2億ともいわれています。
巨万の富を手に入れたハリーはその後穏やかに老いの日々を過ごします。
そして1974年90歳で人生の幕を閉じました。
シフォンケーキは保険外交員だった名もない男にアメリカンドリームを見させてくれたスイーツでした。
そして今もそのおいしさを世界中に伝え続けています。
今日の「グレーテルのかまど」いかがでしたか?日本では身近なシフォンケーキにこんな誕生秘話があるなんて知りませんでした。
今や世界中をとりこにするそんな力を秘めたスイーツでした。
ではまたこのキッチンでお目にかかりましょう。
ではちょっと失礼して。
よ〜し!今日はだいぶ集中力使ったからな。
頂きます!どうぞ!このグレイズも…。
あっおいしそう!うんうん!口溶けがすごい滑らかというか何か無くなっちゃう感じが…。
オレンジの香りがふわっと広がるね。
そうでしょうよそうでしょうよ。
何だかね…アメリカからここへ来たんですもの日本にこのお菓子。
何か夢がありますね今日のお話はとっても。
そうだね。
ヘンゼルも何か考えてみて人生を変えてみちゃうっていうのはどうですかね?熱いけど口に入れるとひんやりするスイーツ。
…うん。
どう?いやだから「どう?」じゃなくてそれどうやって作るの?あったら面白いと思うけど。
それはかまどの魔法を…。
そんなアホな!2014/04/24(木) 12:25〜12:50
NHKEテレ1大阪
グレーテルのかまど「ハリーの謎のシフォンケーキ」[字][デ][再]
ふわふわでしっとり絹のようにきめ細かなシフォンケーキ。日本ですっかりポピュラーなこのケーキがいつ、どこで、誰によって生み出されたのかご存じ?その誕生秘話とは?
詳細情報
番組内容
シフォンケーキが誕生したのは、今からおよそ90年ほど前のアメリカ。ハリー・ベイカーという名の元保険外交員の男が、試行錯誤の末に作り出したケーキだった。真ん中に穴のあるふんわり優しい「エンゼルケーキ」が原型だが、ハリーはこの型を使い、生地にサラダ油を加えるという、画期的なレシピを発見。独特の食感のケーキが誕生した。時を経て今や日本をはじめ世界中で愛されるシフォンケーキの知られざる誕生の物語に迫る。
出演者
【出演】瀬戸康史,【語り】キムラ緑子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
バラエティ – 料理バラエティ
情報/ワイドショー – グルメ・料理
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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