バルサルタン:千葉大、内部調査「非常に甘かった」

毎日新聞 2014年04月25日 22時49分(最終更新 04月25日 22時49分)

 降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)の臨床試験疑惑で、千葉大の調査委員会は25日、「解析に使ったデータとカルテとの間で不一致が多く、データ改ざんの可能性が否定できない」と発表した。「非常に甘かった。後の祭りだが反省している」。疑惑の表面化から1年以上。千葉大の調査委員会は一転して「論文は不適切だった」と認めた。大学幹部らは、これまでの調査のずさんさや初期対応の遅れを反省する言葉を繰り返した。

 調査委は内部調査のみで中間報告を公表。その後、第三者機関の検証によって、ずさんな試験の実態が次々と明らかになった。中谷晴昭理事は、内部調査の甘さを追及され「最初から第三者機関に依頼しておけばよかった」と述べ、目を伏せた。

 ただ、ノバルティスファーマの社員が「統計解析に関わった可能性が高い」と結論付けた直接的な根拠は、従来の説明を翻した1人の医師の証言に過ぎない。試験期間中は大学院生だったこの医師は「自分たちが統計解析した」と説明してきたが、今月突如「うそをついていた」として前言を撤回したという。調査委はこの医師に証言を変えた理由を尋ねていないが、この医師が自ら解析する能力がなかったことを認めたことから「信用性は高い」と判断した。

 一方、社員は退職後、調査委に対し「統計解析のアドバイスをしただけ」と説明。ノ社の社内調査にも同様の証言をしており、主張は食い違ったままだ。元社員の「所属」についても当事者同士の証言は合致しない。元社員は試験に関わった当時、大阪市立大の非常勤講師の肩書をもっていた。複数の医師が「大学の先生」と認識していたというが、元社員は「社員だと自己紹介した。当初からご存じだったはずだ」と話したという。

 試験責任者の小室一成氏は、バルサルタンの試験を終えた後に大阪大教授に転身。さらに、昨年1月から東京大教授に転じている日本医学界有数のエリートだ。今回の調査結果が医学界に与えるインパクトは大きい。【八田浩輔、松谷譲二、円谷美晶】

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