2006/07/15
診察中、背後から忍び寄ってきた四歳の男の子から
「カンチョー」の不意打ちを受け、驚いたことがある。
もっとも、一番驚いたのはその子のお母さんだったが。
いたずらを成し遂げた本人は、キラキラした目をしていた。
排せつ、性、病気、遊びなどさまざまな概念がまだ混沌としている子どもにとって
「カンチョー」は実に不思議なものなのだ。
「浣腸」は大切な医療行為だ。
腹痛を訴えるお子さんや、おなかの調子が悪いというお子さんは、
実は便秘や、腸にガスがたまった状態のことも多い。
そんなときは、浣腸で排便を促すだけですっかり元気になる。
感染性胃腸炎になった場合、病原のウイルスなどを含む便を、
浣腸で早く体外に出せば、症状が早く改善することもある。
また、出た便の性状が腸重積など重大な病気の診断の手掛かりになることもある。
しかし、「ウンチが出れば楽になるかもしれないから浣腸してみましょう」と言うと、
浣腸が初めての子は「え―っ、カンチョー?」と嫌がることが多い。
ある時、お母さんが真顔で「これは『ほんとの浣腸』なんだから」と、
ぐずるお子さんを説得されたことがあり、私も思わず笑った。
「ほんとの浣腸」は役に立つのである。