安倍晋三首相は25日夜、麻生太郎副総理兼財務相や菅義偉官房長官と東京・銀座のステーキ店で懇談し、来日したオバマ米大統領との会談について「仕事の話ばかりだった」と愚痴をこぼした。「ビジネスライク」と指摘されるオバマ氏と波長を合わせるのは難しかったようだ。

 首相は23日夜、オバマ氏を銀座の高級寿司店「すきやばし次郎」に招き、約2時間半にわたって会食。オバマ氏は「人生の中で一番おいしい寿司だった」と感想を述べたとされ、打ち解けた雰囲気を演出したが、実際は環太平洋連携協定(TPP)交渉の日米協議で譲歩を迫られていた。24日の首脳会談でも調整が難航し、共同声明の発表が25日にずれ込むなどペースをつかみきれなかった。

 TPP交渉に絡む日米協議は25日、大筋合意に至らずに終わり、日本の農産物重要5項目のうち、特に難航している牛肉と豚肉の扱いを中心に溝が埋まらなかった。

 一方、日米両政府は同日、24日の首脳会談の成果を盛り込んだ共同声明を発表。中国が領有権を主張する沖縄県・尖閣諸島に関し日米安全保障条約に基づく米側の防衛義務を明記した。「米国は尖閣諸島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する」と表明した。

 アジア4カ国歴訪中のオバマ氏は2番目の訪問国の韓国に到着。旅客船沈没事故の犠牲者を悼み、韓国国民を慰めたいとして、ホワイトハウスで育ったモクレンの苗木と今月16日の事故発生時にホワイトハウスに掲揚されていた星条旗を韓国政府に贈った。