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富岡製糸場 世界遺産に登録の見通し
4月26日 5時46分

富岡製糸場 世界遺産に登録の見通し

世界文化遺産への登録を目指している群馬県の「富岡製糸場」について、ユネスコの諮問機関は「世界遺産に登録することがふさわしい」とする勧告をまとめ、ことし6月にも世界遺産に登録される見通しとなりました。

群馬県にある日本で初めての官営の製糸工場、「富岡製糸場と絹産業遺産群」は、製糸技術の革新を進め世界の絹産業の発展に重要な役割を果たしたとして、去年1月、国が世界文化遺産に推薦し、去年9月にはユネスコの諮問機関、イコモスが現地調査を行うなどして検討してきました。
この結果、イコモスは「富岡製糸場」について、「世界遺産に登録することがふさわしい」とする勧告をまとめました。
これは勧告の中でも最も評価の高い「記載」と呼ばれるもので、これまで日本が推薦した候補のうち「記載」の勧告を受けたケースは16回あり、いずれも正式に世界遺産に登録されています。
このため「富岡製糸場」もことし6月に中東のカタールで開かれるユネスコの世界遺産委員会で登録される見通しとなりました。
「富岡製糸場と絹産業遺産群」は明治5年に作られた富岡製糸場に加え、養蚕農家の原型となった住宅など4つの資産で構成されていて、今回の勧告では、フランスから技術や知識を導入して短期間に生産システムを作り上げ養蚕と生糸産業の革新に決定的な役割を果たしたと評価されました。
一方で、構成資産の1つで蚕の卵のふ化の時期を調整した施設、「荒船風穴」に保全のための屋根をかけることの利点と欠点を検討することや、構成資産の管理体制をより強化することなどが求められました。
文化庁の担当者は「パーフェクトに近い勧告ではないか。地元の皆さんが保全に取り組み、何が世界遺産にふさわしいか推薦の段階でしっかり絞り込んだ成果だと思う」と話しました。

イコモスの勧告は最終判断に影響大

ユネスコの諮問機関、イコモスの勧告は、世界遺産に登録するかどうかの最終判断に大きく影響します。
勧告は「普遍的な価値の証明が十分か」、「保全状況は十分か」といった観点から4段階の評価を示します。
最も評価が高いのは「記載」で、世界遺産にふさわしく世界遺産の一覧表に載せるべきだというものです。
日本が推薦した候補のうち「記載」の勧告を受けたのは過去16回あり、その年の世界遺産委員会でいずれも正式に世界遺産に登録されています。
次が「情報照会」で、追加で情報を提出させ翌年以降に再度審査するよう求めるものです。
ただ最近では、「情報照会」とされてもその年の世界遺産委員会で登録が認められるケースが目立っています。
3つめが「記載延期」で、現段階では本質的な改定が必要だとして登録を見送るべきという勧告です。
政府の推薦の段階からやり直しが必要で、再審査を受けられるのは早くても2年後以降になります。
過去には岩手県の「平泉」が「記載延期」の評価を受けたあと、コンセプトを見直し3年後の再審査で世界遺産に登録されています。
一方、同じ「記載延期」とされた島根県の「石見銀山遺跡」は、勧告の内容に事実誤認があると主張した結果、勧告を覆す形でその年に世界遺産に登録されました。
最後が「不記載」で、世界遺産としてふさわしくないという判断です。
世界遺産委員会でもこの勧告内容が確定すれば原則、再度推薦することもできなくなります。
去年、『鎌倉』が日本から推薦した候補としては初めて「不記載」の勧告を受け、国が推薦を取り下げました。

日本の世界遺産は17件

日本の世界遺産は現在、文化遺産に13件、自然遺産に4件の合わせて17件が登録されています。
平成5年、文化遺産に奈良県の「法隆寺」と兵庫県の「姫路城」が、自然遺産に鹿児島県の「屋久島」と青森県と秋田県の「白神山地」が登録されたのが最初でした。
その翌年以降も、京都府と滋賀県の「古都京都の文化財」、広島県の「原爆ドーム」など文化遺産の登録が続きました。
最近では去年、山梨県と静岡県の「富士山」が日本からは2年ぶりに世界遺産に登録されています。

日本初の官営製糸場

富岡製糸場は明治5年、日本で最初の官営の製糸場として建てられました。
当時、明治政府は「殖産興業」を目指す国家プロジェクトを進めていて、生糸の生産が盛んな群馬県の富岡地区にその中心となる施設を建てたのです。
敷地は5.5ヘクタール余り。
木の枠組みにレンガを積み上げるという日本と西洋の建築技術を融合させた造りで、建設費は現在の価格で計算すると33億円と推定されています。
製糸場には若い女性が全国から集まり住み込みで働きました。
女性たちによって生産された高い品質の生糸は外貨を稼ぐ貴重な輸出品となりました。
製糸場には最新式の機械が導入され、最盛期の昭和49年には年間におよそ370トンの生糸が生産されました。
富岡製糸場は昭和62年に操業を終え、平成18年には一部の建物が国の重要文化財に指定されるなど日本の近代化の歩みを伝える文化財としての役割を担ってきました。

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