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あえてセウォル号の船長を弁護する(安田幸弘) | ||||||
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安田幸弘の「雑記」(2014.4.25)より
あえてセウォル号の船長を弁護する特に、乗客を放り出してさっさと逃げ出したセウォル号の船長だとか、操船ミスだったようだとか、船員は非正規職だったとか、つまり船員のレベルが低くて船 が転覆して、被害を大きくしたかのように伝えられている。でも、本当にそうなんだろうか。いろいろな情報を集めてみると、乗客の避難誘導での責任は確実に あると思うのだが、それ以外の部分では必ずしも断定的に船員が問題だったとばかりも言えないような気がする。 4/23にCBSラジオが放送した弁護士とのインタビューを聞いていると、船長をはじめとする乗組員はそれなりに努力はしていたように思われる。 そもそも事故の発端は、「若く経験の浅い女性航海士」の不可解な操船だった、と言われているのだが、このあたりは 「難所を行く大型客船を小娘に操縦させていいのか」みたいなニュアンスが感じられて気持ちが悪い。で、実際に、いろいろな情報を総合すると、難所とされて いる部分は通りすぎて、あとは障害物のない海域に出るところで、操船に難しい部分はなかったため、船長は三等航海士にまかせて部屋で休んでいたという。 そ して、事故のきっかけになった進路変更は、通常の進路変更だった可能性があるという。この航路では、その地点で右に10度の進路変更をするのだという。航 海士はここでまず5度の進路変更をした。ところが、この5度の進路変更の前から、船はやや左に傾いていたという情報もある。そもそもこの船にはバラストだ のスタビライザーなど、いろいろな問題があったという話は前にも書いた通り。元々傾いていた船が、右5度の進路変更がきっかけになって大きく左に傾いてし まったというわけだ。 それに加えて、この船は積み荷の固定が不十分で、船が傾いたことで大きな音をたてて荷物が崩れた。これに驚いて操舵士が逆に左に15度舵を切って傾きを復 元しようとしたらしい。ところが大きく左に傾いていた船は、取舵に反応せず、逆に左に大きく30度ほど傾いてしまったというのだ。 このあたり、頭の中で船の傾きと舵の動きを考えてもらいたいのだが、確かにそうなる。左に傾いた状態で、船の下部にある舵が左に角度をつけると、推進力は 「左」ではなく「斜め上」に向かう。つまり船底には右上へのベクトルがかかり、船の上方は荷崩れで左下へのベクトルがかかる。それで船体が大きく左に傾い た、ということらしい。 結局、積み荷が崩れて左側が重くなっていた船は復元力の限界を超え、横倒しになってしまった。後は慣性で船が大きく右旋回することになる。つまり、そもそも原因とされた右側への大きな進路変更はなかったということだ。 さて、ここでなぜ16チャンネルではなく、12チャンネルで済州管制センターに連絡をしたのか、という問題があるのだが、前にも書いたように16チャンネ ルでは外部の多くの人が傍受しているので問題が大きくなるのを恐れたという話もあるが、連絡をした航海士によれば、操舵室には12chと16chにチャン ネル設定された2台の無線機があり、16chは操舵室の右、12chは操舵室の左にあったという。船体が左に大きく傾き、16chの無線機に手が届かな かったので、とにかく急いで12chにセットされていた無線機で連絡をした、という。単なる言い訳かもしれない。その後、その無線機で16chでの交信を しているし、チャンネルを変更することがそれほど難しいとは思えない。それでも、とにかく無線交信をした航海士はそう言っているということで、それなりに 合理性はある。 では、この間、船長は何をしていたのか。大きく船が傾いたとき、下着姿でくつろいでいた船長はあわてて操舵室に来たという。船が傾いていてまともに歩けず、滑って転んでお尻を打ち付けたとかで、這ってきたらしい。それほど時間はかからなかったということだ。 そこで船長は船の姿勢を回復しようとしていた可能性があるという。エンジンの出力を調整したり、舵を調整したりすれば、完全に横倒しになってない以上、姿勢回復のための操作に必死になっていたことは容易に考えられる。 それでも転覆の可能性があるので、船長は乗客にライフジャケットの着用を指示した。問題はどうして甲板に出ろという指示をしなかったのかということだが、 セウォル号が所属する船会社は以前、同社が運行していた漢江の遊覧船事故があった時、乗客が甲板に出て水に落ち、多くの被害者を出したことで、船会社が内 部的に事故の時に乗客を甲板に出すなという資料を作っていたという。 また交信記録ではセウォル号側は何度もしつこく「いつ救助艇が来るのか」と尋ねている。 30度も傾いた船の甲板なんて、ほとんど壁みたいなものだ。潮流が早い海域で、まだ海の水は冷たい。1時間ぐらいでたぶん低体温症で死んでしまう。周辺に救助艇がいないのに、海に転落したら乗客は助からないと船長が判断しても、一概に判断ミスとも思えない。 実際にどのような案内放送が行われたのかも問題だが、船長は「脱出できる状態で待機せよ」というような指示を出したというのだが、それが正確に伝わったかどうかもよくわからない。いずれにせよ、乗客は船室でじっとしていろ、という意味で理解した。 その後、救助隊が到着し、脱出しろという放送があったかどうかもまだわからない。とにかく、救助隊が到着した時点で退去しろという放送の指示をしたという のだが、その時にはほとんど船は横倒しの状態で、船室にはどんどん水が入ってくるような状況で、脱出の放送があったとしても脱出できたかどうか… それで、退去の指示を出して、船長は操舵室から出て救助艇に乗った、という。 ここまでのストーリーは、船長と話をした弁護士の話に、その他伝えられているいくつかの情報を加味したもので、実際にこの通りだったのかどうかは全くわか らない。単なる可能性のひとつでしかない。しかし、決して無理なこじつけのストーリーでもない。「そうだった」と言われれば、そうだったのかもしれないと 思う。 朴槿恵大統領は、「船長は殺人に等しい」と言ったとか。また検察も不作為による殺人の容疑を適用することを検討しているとも言う。 船長の判断や行動にまったく問題がなかったというわけにはいかないとしても、今の段階で船長や乗組員を無責任な破廉恥漢と言ってしまうのはどんなもんだろう。 むしろ事故の直接の原因は、中古の船に無理な改造をして、まともな積み荷の固定装置もつけず、各種の故障が放置されていたことで、わずかな外乱で荷崩れを起こしたことで、その責任は船会社にあるのではないだろうか。 そして事故を大きくした原因は、迅速な救助活動ができず、船が沈みつつあるというのに適切な対応も取れず、右往左往した当局にあるのではないだろうか。 「とんでもない船長」にすべての責任を負わせてはいけないと思う。 Created by staff01. Last modified on 2014-04-25 11:00:39 Copyright: Default | ||||||