コラム:安倍首相の「不穏な変化」=カレツキー氏
[24日 ロイター] - アナトール・カレツキー
今回のオバマ米大統領のアジア歴訪は、もっぱら日本と中国の「領有権問題」に関心が集中している。この問題でオバマ大統領は、ウクライナで犯したのと同じ過ちを繰り返しているようだ。
日本の立場を米国が支持するという誤った期待を抱かせることで、オバマ大統領は日本の好戦的な発言を助長している。ひいては、中国が軍事行動によって尖閣諸島(中国名:釣魚島)の奪取に動く可能性を高めている。しかし、日本の尖閣諸島防衛のために米国が中国と戦火を交えることはまずないというのは、誰もが知るところだ。
幸運なことに、東シナ海で軍事衝突が起きる可能性は依然として極めて低い。なぜなら、中国政府の最優先課題は、経済・金融改革だからだ。ただ残念なことに、これは日本には当てはまらないようだ。
安倍晋三首相の関心は、経済から外交、そして軍事問題に移ったように見える。そして金融市場は、この不穏な変化に気づき始めた。それを最も明らかに示しているのは、日本株のパフォーマンスだ。
世界の株式市場は過去数週間で力強い反発を見せた。米国株式市場と複数の欧州株式市場は今週、再び過去最高値圏で推移した。一方、日本株は年初来で約10%下落しており、世界で最もパフォーマンスの悪い市場となっている。
日本株は、見方によっては、世界で「最もバリューの高い」、言い換えるなら最も割安な投資先だ。主要指数のPBR(株価純資産倍率)で見ると、TOPIX(東証株価指数)は1.1倍なのに対し、S&P総合500種 は2.6倍、STOXX欧州600は1.9倍となっている。
相対的に割安であるにもかかわらず、日本株のパフォーマンスは過去数週間で一段と悪化した。世界の投資家が、資金を割安資産にローテーションさせようとしているにもかかわらずだ。結局、日本株は昨年前半の上昇分をほぼすべて吐き出した。 続く...