April 25, 2014
潜入捜査のネットワークによって、野生生物の密売人が、かつてコロンビアで活動していた麻薬犯罪組織メデジン・カルテルと関係しているという疑惑が明るみに出た。
「ルーです。キリンが届きました」。その電子メールはこんな風に始まっている。
米司法省職員の話によると、メールはあるキリンの剥製に関する秘密情報提供者に宛てて書かれたもので、サ
ンフランシスコ在住のラムズデン・W・クァン(Lumsden W. Quan)、別名“ルー”46歳と、彼のボスでカリフォ
ルニア州ミルバレー在住のエドワード・N・ルビーン(Edward N. Levine)63歳が今年、絶滅危惧種であるクロ
サイの角2本を連邦捜査員に5万5000ドルで売ろうとしたときのものだという。密売未遂は2014年3月19日にラス
ベガスのホテルで行われ、この2人の男は・・・
「ルーです。キリンが届きました」。その電子メールはこんな風に始まっている。
米司法省職員の話によると、メールはあるキリンの剥製に関する秘密情報提供者に宛てて書かれたもので、サ
ンフランシスコ在住のラムズデン・W・クァン(Lumsden W. Quan)、別名“ルー”46歳と、彼のボスでカリフォ
ルニア州ミルバレー在住のエドワード・N・ルビーン(Edward N. Levine)63歳が今年、絶滅危惧種であるクロ
サイの角2本を連邦捜査員に5万5000ドルで売ろうとしたときのものだという。密売未遂は2014年3月19日にラス
ベガスのホテルで行われ、この2人の男は逮捕された。
今回の起訴は、米国魚類野生生物局と司法省による“クラッシュ作戦(Operation Crash)”の一環で明らか
になった事件の数々の中で最新の事例だ。“クラッシュ”は衝突、崩壊のほか“サイの群れ”も意味する言葉
で、このプロジェクトでは国際的なサイの角の闇市場におけるアメリカの関与を、大規模かつ全国的に調査して
いる。
アフリカからアジアにかけて生息するサイは、どの種も密猟者の包囲網の中にいる。需要があるのは主にベト
ナムと中国で、サイの角を粉にした漢方薬や装飾用の彫刻などに使われている。
これまでに、クラッシュ作戦では逮捕17件、有罪判決9件の成果を上げている。中でもアイルランドの犯罪組
織メンバー、ニューヨークと中国の骨董商、香港やベトナムを取引相手とした中国の密売人などが目立つ。多く
の場合、密売人は剥製標本から角を取っている。剥製のキリンの話がサイの角につながるのはこういうわけだ。
関係筋によると、クラッシュ作戦が始まってからアメリカでは、何百という違法なサイの角が密売・密輸され
たことが捜査当局によって記録されている。これは少なく見積もっても、末端価格にして5000万ドルを超える。
しかし、ルビーンの逮捕によって別の要素が明るみに出た。野生生物密売の大物と麻薬との関係だ。
◆麻薬カルテルとのつながり
1989年にルビーンはフロリダで、コロンビアの麻薬王パブロ・エスコバル(Pablo Escobar)、オチョア
(Ochoa)兄弟、その他20名以上の被告とともに、コロンビアの悪名高きメデジン・コカイン・カルテルへの関
与に起因する罪で起訴された。
野生生物取引と違法薬物とのつながりは、長年続いてきたものだ。米国魚類野生生物局の職員は、違法薬物を
輸送される生きた野生生物の体内に隠す事例も見てきている。
法廷記録によると、1978年にルビーンは共謀者であるメデジン・カルテルのカルロス・レデル(Carlos
Lehder)からコカインを受け取り、カリフォルニアへ渡ってそこでコカインを流通させた。またルビーンは複数
の貸し金庫を別名義で借りていて、当局はその貸し金庫から600万ドルを押収している。
1989年に麻薬密売の罪で起訴された後、ルビーンは逃亡した。偽名を使って生活を続けたが、1995年2月オレ
ゴン州の自宅の外で逮捕され、後に麻薬を流通させた罪を認めた。2年8カ月刑に服し、1997年11月に釈放され
た。
「クラッシュ作戦の記録では、野生生物とは関係ない犯罪に関わっていた者たちがどのようにして野生生物犯罪
に手を広げていったのかが描かれている」と、米国魚類野生生物局のエドワード・グレイス(Edward Grace)氏
は語る。「これは非常に気がかりな傾向だ。かつて野生生物犯罪は計画的なものではなかったが、今や組織犯罪
に変わってきているのだから」。
PHOTOGRAPH BY BRENT STIRTON / NATIONAL GEOGRAPHIC