福島・浪江のご当地アイドル、活動休止 新生活を優先
福島県浪江町のB級グルメ「なみえ焼そば」をPRするご当地アイドル「NYTS(ナイツ)」が今春、活動を休止した。福島第1原発事故で全町民が避難した後も、歌とダンスで被災地を勇気づける活動をしていたが、メンバーらが避難先で新たな生活を選んだため、継続が難しくなった。
NYTSは2009年、なみえ焼そばの広報団体「浪江焼麺太国」の派生ユニットとして、町の小中学生6人で結成された。グループ名の由来は浪江(N)焼きそば(Y)太国(T)Shine(S)。デビュー曲『恋する焼そば』では、濃厚なソースを小麦肌の彼氏に例え「とりこになる」とPRした。
結成1周年には「NYTS総選挙」と銘打ち、新メンバーのオーディションを行った。9人グループになり、全国各地で開かれる食のイベントでステージに立った。
原発事故が起き、メンバーは埼玉県や仙台市など各地に散り散りになった。それでも11年8月、町民を元気づけようと活動を再開。メンバー4人が集まり、B−1グランプリなどに参加した。
なみえ焼そばをPRする曲以外も発表した。新曲『道 伝えたい思い』では、「迷っても進んでいけば夢や幸せが待っている」と歌い、避難生活に不安を抱える町民へメッセージを込めた。
原発事故から2年が経過した13年春ごろ、メンバーの参加率が悪くなった。それぞれが避難先の環境になじみ、NYTSの活動よりも新しい学校の交友関係や部活動を優先するようになった。ことし1月、郡山市であったイベントが最後のステージになった。
メンバーを再募集する案も持ち上がったが、取りやめた。浪江焼麺太国の阿久津雅信さん(43)は「町外の子どもを集めて活動しても意味がない」と反対。代わりに「メンバーが再び歌いたいと言った時、集まれる環境は残しておきたい」と解散の形は取らなかった。
仙台市青葉区に避難する高校3年渡辺根音さん(17)は初期メンバーとして原発事故後も活動した。「避難でみんなが異なる環境に置かれ、それぞれ進みたい道が変わった。またいつか気持ちを一つにできる日が来たら歌いたい」と語った。
2014年04月22日火曜日