(2014年4月24日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
大きな悲劇に見舞われた瞬間は、しばしば国家的な内省を引き起こす。先週の韓国フェリーの惨事もそうで、事故を受け、悲嘆と怒りだけでなく自己嫌悪に近い感情も噴出した。
「これは安全性に対する韓国社会の無関心がもたらした典型的な人災だ」。ある社説はこう断じ、さらに軽蔑するかのように「これは一体どんな国なのか」と問いかけた。別の社説は「韓国社会を変えなければ、今後どのような悲劇に見舞われるか知る由もない」と論じた。
最終的に300人以上の人命(その多くが10代の生徒)を奪うかもしれない事故の原因を解明する試みの中で、韓国人は様々な方向に目を向けている。最も厳しい目にさらされている人の中には、船を見捨てたとされるフェリー船長と、先月の航空機失踪後のマレーシア政府と同様に、対応が遅れ、救出活動に関して相反するメッセージを発信した韓国政府が含まれている。
だが、直接的な原因の枠を超え、韓国人はもっと深く掘り下げ、韓国社会について自問している。外から見ると、韓国は、西側の生活水準に徐々に迫り、信じられないほど成功しているように見える。だが、多くの韓国人の目から見ると、韓国社会には大きな欠陥があるようにも見える。不公平で、過度な教育競争にとらわれ、自殺する傾向が高い社会だ。
市民の幸福よりも成長や利益、韓国株式会社の名声を重んじる経済モデルを、フェリー事故の最終的な原因の1つに挙げる人もいる。一方、多くの外国人評論家が飛びついた話として、韓国の文化そのものを非難した人もいた。特に生徒たちがデッキの下にとどまるという致命的な指示に従う原因になったとされる序列に忠実であることが取り沙汰された。
安全性に関するお粗末な実績
韓国の安全性に関する実績は実際ひどい。致命的な労働災害の数では、韓国は先進国の中では唯一トルコより少ないだけだ。1995年には、安上がりに建設されたソウルの百貨店が崩壊し、500人の死者と、さらに1000人近くの負傷者を出した。
韓国の原子力産業も安全性を危うくした。昨年は、偽造部品を使っていることが発覚した。3つの原子力発電所は、偽の安全証書付のケーブルを使っていたとして運転が停止された。安全文化の欠如は韓国の道路にも及んでおり、飲酒運転はよくあることで、シートベルト着用はそれほど一般的でない。韓国の運転免許試験は非常に簡単なため、中国人が免許を取るためにソウルに押し寄せる。
転覆したセウォル号の場合は、安全手順が救いようのないほど不適切だったように見える。乗組員は、はっきり分かる避難手順に一切従っていなかった。フェリーの放送システムは適切に機能していなかったし、乗客に与えられた指示は、よくても誤解を招くもので、最悪の場合は命取りになったように見える。