韓国客船沈没:定まらぬ対策本部方針 家族の意向重視で
毎日新聞 2014年04月24日 21時27分(最終更新 04月24日 22時47分)
【珍島(チンド)(韓国南西部)米村耕一、松井豊、祝部幹雄】客船セウォル号沈没事故で、事故対応を取り仕切る対策本部の方針が、二転三転している。朴槿恵(パク・クネ)大統領の指示で行方不明者家族の意向を重視しているためだが、合理的な政策判断が難しくなっている面もあるようだ。
「大統領に電話しろ」。珍島の港で24日午後、行方不明者家族らが海洋警察トップらを取り囲み、声を荒らげていた。行方不明となった高校生の母親らが求めていたのは「民間人ダイバーの積極活用」だ。
家族らは、海洋警察などが十分な努力をしておらず「早期にボランティアを多用しておけば、生存者救出が可能だった」との思いが強い。事故3日目の18日、家族代表は「ボランティアの参加を海洋警察が止めている」と、強く非難。海洋警察はまもなく、ボランティアダイバーの活動を認めた。
ところが海洋警察によると、その成果は芳しくなかった。これまでに343人のボランティアダイバーが参加したが、そのうち実際に水に潜ったのは16人。強い潮流と視界の悪さのため10分も耐えられずに浮上した人や、写真だけ撮って帰った人もいたという。
厳しい現場は危険で、能力に差のあるボランティアの参加を断るのは当然の対応だ。海洋警察の報道官は24日の記者会見で「現場の作業に支障を招く。やむを得ずボランティアの参加を断ることにした」と述べた。ところが、家族がこれに猛反発した。
対策本部が家族の意向をくむのも必要だが、これに輪をかけたのが朴大統領の指示だ。17日に体育館を訪れた朴大統領は「みなさんの言われたことは全て実行されるよう指示します」と発言。政府幹部に「約束を守らない人は辞めてもらう」とまで強調した。
ボランティアダイバーの参加を巡り、家族らに詰め寄られた海洋警察幹部は約2時間半後、前言を撤回。その場でダイバー団体に連絡し、参加を要請した。対策本部は、家族の意向と円滑な作業との板挟みに苦慮しているように見える。