成長戦略の立案に向けた医療制度改革を巡り、政府内での対立が解けない。23日に開いた規制改革会議で、保険外診療と保険診療を併用する混合診療の規制会議の改革案に対し、厚生労働省は慎重な対応に終始した。総論で一致する医療費の削減も各論では議論の遅れが目立つ。安倍政権は医療改革を戦略の柱とする考えだが、着地点を見いだしにくい状況だ。
団塊の世代が退職し高齢者が増える日本では、医療費支出は確実に膨らむとみられている。逆に見れば医療は国内でも数少ない市場が広がる産業。最先端の医療が日本で生まれれば新薬の開発につながる可能性がある。規制緩和でカギとなるのが混合診療の拡大だ。
日本では混合診療は原則として禁止。厚労省が安全を確認した一部の先端医療だけが認められている。政府の規制改革会議は適用を広げるため、客観的に判断して安全な治療法で医師と患者が同意すれば混合診療の対象とする「選択療養」を提唱した。厚労省側は「医師と患者の同意を軸に考えると、安全性が十分に検証されない恐れがある」と慎重だ。
規制改革会議は23日、専門の研究者の評価で安全を確保するうえに、選択療養が広がれば患者の利点が大きいと主張。岡素之議長(住友商事相談役)は記者会見で「患者の希望をもとにした治療を目指すことでは厚労省と一致できた」と議論の進展に期待を示した。
しかし、会見中も官僚が「困難な病気に立ち向かうという点では厚労省と規制会議の意見が同じ」と微修正。厚労省は国が主導して症例や治療法を定める今の混合診療の拡大で十分との姿勢をまだ崩していない。
厚労省は「弱い立場の患者に医師が高額の医療を押しつける可能性がある」と懸念する。患者団体にも「おかしな医療を押しつけられる」との声があり、規制緩和への賛成が多数というわけでもない。政権側は混合診療の拡大を成長戦略の目玉の一つとする考えだが、患者保護の観点があるだけに、早期に結論を出すのは簡単ではない。
経済財政諮問会議でも医療改革が議論されている。麻生太郎財務相は都道府県ごとに医療費の目標を決めて医療支出を抑える仕組みを提案。民間議員らも薬価の改定期間を従来の2年から1年に見直すように提言した。
昨年の成長戦略で焦点となったのは、医療研究の司令塔となる新組織の創設と、インターネットによる一般用医薬品の販売解禁。医療制度の根幹にかかわる議論にはなかなか進まなかった。
6月の成長戦略の改定まで2カ月を切った。原則論にとどまったままでは成長戦略での書きぶりが玉虫色になり、具体策は2015年度予算編成に持ち越されるケースも出てきそうだ。
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