“シナ塾”第2弾が開催 『アイマス』をテーマに、ゲームシナリオの現状を検証

クリーク・アンド・リバー社が主催する、ゲームシナリオライターの最前線を探るイベント“シナリオ塾”、通称“シナ塾”。その第2回が、2014年4月19日に開催された。

●“シナ塾”企業コラボ第1弾は『アイマス』!

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▲会場には、ライター志望者、またすでにゲーム関連の仕事に従事している人なども含め、設定定員を超える多数の受講者が詰めかけた。

 クリーク・アンド・リバー社が主催する、ゲームシナリオライターの最前線を探るイベント“シナリオ塾”、通称“シナ塾”。その第2回が、2014年4月19日に開催された。
 今回は、なんと『アイマス』シリーズのシナリオ・企画チームが講師として登場。ゲームシナリオライター志望者必見の内容となった本イベントをリポートしよう。


●第1部ではソーシャル市場の全体像を解説

 イベントの第1部では、クリーク・アンド・リバー社の田中信也氏が、シナリオライターという仕事、今回のイベント概要などを、イントロダクションとして紹介。続いて、最初の本題、“シナリライターを取り巻く市場”についての説明がなされた。そこではテレビ、出版、映画、ゲームなどそれぞれの市場規模を比較したうえで、今後のソーシャルゲーム市場拡大への展望、またそこを見据えたライターの拡充の必要性といった話題も語られた。

 つぎのテーマは、なぜいまソーシャルで、シナリオライターの需要があるのか? という点。それは作って終わりではなく、日々更新があるコンテンツのため。つまりは作品ができてからがスタートで、追加アイテムやシナリオが随時発生するので、シナリオライターが活躍しやすいジャンルであるという認識だ。とはいえ、その実情は……? 田中氏によると、発注の流れで、やむなく2次3次で仕事を受ける場合、末端のライターに渡るお金は減ってしまい、なかなか「かせげない」状況にあるという。これはソーシャルゲーム業界全体の、大きな課題のひとつと言えそうだ。


●クリエイター参戦の、注目の第2部がスタート!

 そして注目の第2部は、『アイドルマスター』制作スタッフのクリエイター2名が登場。クリーク・アンド・リバー社の田川浩充氏が司会進行役となり、ゲームシナリオをテーマに、熱いトークセッションが展開された。ゲストのふたりは、バンダイナムコスタジオの高橋恭代氏と、東義人氏。セッションは、司会の田川氏が質問を振り、ゲストの2名がそれぞれ資料とともに応じる、というスタイルで進められた。


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◆高橋恭代氏(写真左)
◆東義人氏(写真右)
おふたりとも、『アイマス』シリーズのシナリオの重鎮だ。

●ゲームの特性を活かしたシナリオ術とは?

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 トップバッターは高橋氏。アーケード版の最後のころに『アイマス』チーム入りした高橋氏は、シナリオの監修と、ケータイでの連動コンテンツのシナリオなどを担当。その後もXbox 360版やPSP、PS3版など、多くの『アイマス』関連作で、幅広くシナリオを担当し、現在は『アイドルマスター ミリオンライブ!』シナリオ監修、『アイドルマスター ワンフォーオール』関連作業などで忙しい日々だという。

 その高橋氏がまず語ったのは、ゲームシナリオの“制作フロー”について。【1】ゲームの企画が決まる→【2】システム仕様が決まる→【3】シナリオまわりの仕様を決める……といった実際のフローチャートが示され、『アイマス』シリーズを具体例に挙げながら、それぞれの過程でのポイントが説明された。続いては“ゲームシナリオの特性”というテーマに移り、そこでは“双方向性”、“システムと寄り添ったシナリオ”という、ふたつの重要なポイントをピックアップ。この2点を踏まえたゲームシナリオの作りかたや心得が、プロならではの視点で解説された。


●“アイドル”というキャラクターを描くコツ

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 続いてトークを展開したのは東氏だ。東氏はもともと企画会社にいて、メーカーに企画を持ち込み、そこでシナリオを手がけたりもしていた経歴の持ち主。バンダイナムコスタジオに入ってからは、イベントのシークエンスや、ディレクションを担当し、『アイマス』に関わるようになったのは『2』からとのこと。現在は家庭用『アイマス』作品を中心にシナリオに関わり、去年10月に始まった『アイマスチャンネル』ではディレクターを、その後『ワンフォーオール』ではシナリオディレクションを担当している。

 東氏が挙げたテーマは、「アイドルというキャラクターを描くために、どんなことに気をつけているか?」という、まさに『アイマス』ならではの直球テーマ。ここでは、“1.属性にハメない、2.主役はアイドル、3.主人公(プロデューサー)は引き立て役、4.主人公=プレイヤー”という4箇条が示され、それぞれのポイントが語られた。ひととおり説明が終わると、つぎはセリフの台本例が示されたのだが、アイドルになりきって(キャピキャピした声で)セリフを読む東氏に、会場が笑いに包まれて盛り上がるシーンも。楽しい雰囲気の中で、シナリオ修正の注意点などが、わかりやすく説明された。


●『アイマス』ファン注目の一問一答セッション!

 ゲームシナリオの手法がひととおり語られたあとは、“一問一答”コーナーに。さまざまな質問に開発スタッフが生の声で答えるという、『アイマス』ファンにとってはたまらないひとときとなった。以下は、その内容・コメントを抜粋してお伝えしよう。

◆なぜ『アイマス』って人気があるの? シナリオの視点から教えて!
 選択肢を選んだあとの、アイドルの反応をおもしろく魅力的にしようというのは、つねに心がけていますし、それが人気の一助となったのかなとは思います。バッドな選択でも、おもしろくプレイでき、見てみたいと思うように、気を使っています。(高橋氏)
 シナリオというかイベント自体を、“読み物”としてではなく、ボイスやグラフィック含めて“体験”として作り上げた結果かなと思います。(東氏)

◆コンシューマとソーシャルの違いは?
 家庭用はストーリーの展開でキャラを見せることができますが、『ミリオンライブ!』のようなカード系のソーシャルゲームだと、ひとつのセリフにギュッとキャラの魅力を詰め込む必要がありますね。絵も、いちばん輝いている瞬間をカードとして切り取り、そこに乗せるひと言で、ユーザーさんの気持ちを掴まなければなりません。一球入魂です。(高橋氏)

◆シナリオを書いていて楽しいキャラは?
 突っ込み役が楽しいですね。律子とか、伊織とか。あとはいちいちネガティブな雪歩とか、天然ボケのあずさとか。このへんは、キャラが勝手に動いてくれるので、シナリオを考えるのもラクですね。ちなみにミリオンでは、二階堂千鶴が気に入っています。(高橋氏)
 ハズレ選択肢で淡々ととぼけるプロデューサーですかね。だいたいバッドエンドなんで、制約なく遊べますしね。(東氏)


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 セッションは引き続き、来場者からの質疑応答コーナーを終えて、大盛況のうちに幕となった。その後はクリーク・アンド・リバー社との、ライター業務の登録面談の場も設けられ、ライター志望者にとっては、とても有意義なイベントだったのではないだろうか。“シナ塾”第3回、第4回の展開にも、大いに期待したいところだ。


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