【社説】安全無視のセウォル号を誰も警告しなかった

 国税庁と検察は22日と23日の両日、16日に沈没した旅客船「セウォル号」を運航する清海鎮海運や関係する企業、さらに同社のオーナーであるユ・ビョンオン元セモグループ会長とその家族、ユ氏と関係のある宗教団体などに対して家宅捜索を行った。またこれとは別に韓国政府は部処(省庁)横断の合同点検チームを立ち上げ、交通、ガス、電力、航空、橋、化学物質など安全面が懸念されている施設への点検に取り掛かった。たとえ後の祭りだとしても、今正せることはできる限り正していかねばならないからだ。

 今回の事故をきっかけに明らかになった清海鎮海運の問題点を見ると、同社の所有する船舶がこれまで大きな事故を起こさず運航してきたこと自体が「奇跡」といわざるを得ない。要するに会社自体が乗客の安全に対して全く関心がなく、ただひたすら利益ばかりを追及して事業を行ってきたわけだ。まず韓国最大の旅客船の運航に責任を持つ船長を1年契約で雇い、給与はわずか270万ウォン(約27万円)しか支払わなかった。船長や乗務員もこの程度の待遇では乗客の安全に使命感を持って取り組むことなどできなかったはずだ。さらに事故が発生する前日の夜、セウォル号が出港した仁川港で、他の旅客船は深い霧のため出港を取りやめていた。つまりこの日、仁川港を出港した船舶はセウォル号だけだったのだ。多くの乗客を乗せる旅客船であれば、本来なら他の運搬船などよりも一層安全に神経を使わねばならないはずなのに、清海鎮海運は収益を重視して出港に踏み切ったのだ。

 清海鎮海運は日本の海運会社から製造後18年が過ぎた中古の旅客船を買い取り、客室を増築した。その影響で船の重心は本来よりも51センチ高くなっていた。しかも貨物を積載する手順もずさんで、出港の直前には出港報告書に記載されていないコンテナが大急ぎで積み込まれる様子が監視カメラに捉えられていた。船体がふらつこうがどうなろうが、とにかく少しでも金を稼ぎたかったのだ。

 清海鎮海運を所有するユ・ビョンオン氏は、1987年に宗教団体が関係する五大洋集団自殺事件で捜査当局から取り調べを受けていた。このときは最終的にユ氏は「現金を使って信徒を引き抜いた」として懲役4年が宣告された。その後ユ氏は漢江遊覧船事業を手掛けるセモグループを経営し、1997年に不渡りを出したが、2000年代に入ると今度は清海鎮海運を立ち上げ、現在の資産は数千億ウォン(数百億円)に上るといわれている。ちなみにユ氏は清海鎮海運の従業員を対象とした安全教育の費用には年間わずか54万ウォン(約5万3000円)しか使わなかったが、自らが制作したカレンダーは1本500万ウォン(約49万円)で13社ある子会社に売り付けた。またユ氏が経営する子会社の幹部らは、そのほとんどがユ氏の宗教団体の信徒だという。清海鎮海運の収益はこの宗教団体の関連する環境団体に贈与され、あるいは環境団体が地方で有機農業を行うための土地を購入するのに使われていたようだ。

 このように知れば知るほどその正体が疑わしくなるこの人物とその所有する企業が、どのような経緯で乗客の命を預かる旅客船事業を行ってきたのか到底納得ができない。ユ氏が所有するセモグループは仁川と済州島を結ぶ航路を独占してきたが、この航路はセモグループが不渡りを出した後も、再びユ氏が所有する清海鎮海運が手にした。これは認可の権限を持つ海洋水産部(省に相当)の後押しがなければ不可能なはずだ。

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