静岡県伊東市の魚市場。
旬の魚がずらりと並びます。
はいイシダイ!でかいよでかいよ。
イシダイイシダイイシダイ。
2キロでかいよ。
とれたての海の幸が次々と競り落とされていきます。
その様子を見守るのが今回の主人公魚屋の長谷川大樹さん37歳。
実はただの魚屋ではありません。
自ら漁船に乗り込み欲しい魚を入手。
その魚はなんと海の嫌われ者そして普段捨てられる事の多い魚いわゆる未利用魚を売り込もうというのです。
果たしておいしいしか言えない。
おいしいしか言えない。
欲しい人がどんどん増えていけば漁師さんも余計扱いがよくなっていいスパイラルになりますよね。
今週の『日本!食紀行』は知られざる味を伝えようと奮闘する魚屋に学びます。
相模湾の西岸伊東漁港。
長谷川さんが品定めしているのはブリ。
隣には相棒の瀬川慎一郎さん。
競りに参加出来ない長谷川さんは仲買人を通してお目当てのブリに値を付けます。
どうやら欲しかった魚が無事競り落とせたようです。
仕入れがうまくいって一安心。
そして知り合いを見つけました。
仲買人で地元で料理店も営む平田達範さんです。
平田さんがさばいているのはホシエイ。
この厄介な魚を扱うようになったきっかけは長谷川さんとの出会いでした。
1年ぐらい前まではねえ1年前までは全部捨てられてたもんね。
(平田さん)初めて長谷川さんが肝持ってきてうまいよっていう話でね。
じゃあ買ってみるべっつって。
で色々なんか他にうめえ食い方ねえかなっつって色々ね一緒に研究したわけです。
まあ僕は基本的に家で唐揚げとかやるだけだったんで。
大将はもっと料理としてちゃんと作ってくれて。
それでまあ他の仲買さんなんかもそこに店があるんで朝飯食べるじゃないですか。
でエイっておいしいんだってなって今は普通に入札にエイも魚も回るようになりました。
食べた人はもうみんなおかわりいっぱいですよ。
続出ですよ。
それもわざわざそのエイ…エイの料理を食べに東京から予約をしてくるお客さんがいるんです。
2人にはお宝のこのホシエイ。
実は危険な特徴を持ち漁師たちからは嫌われ者なんです。
尻尾のほうに尾のほうに毒があるじゃないですか棘が。
だから一番…天敵みたいに扱ってましたよね。
こんなくせモノを扱う長谷川さんちょっと風変わりな経歴の魚屋です。
実はもともとIT関係の広告代理店に勤めていたサラリーマン。
せっかくいい魚を知ってるしどういうふうにすれば魚がおいしくなるのかもわかるのでじゃあそっちの世界に行ってみようと思って。
好きな魚はホシエイ。
ホシエイの革でキーホルダーや財布などを作ってしまうほどの入れ込みようです。
長谷川さんと平田さんはそのホシエイのおいしさを伝えるいわば同志です。
さてエイ料理とはどんなものなのでしょう?こちらが平田さんの店で出される淡泊な身に甘辛いたれがよく絡む煮付け。
コリコリとした軟骨が絶品の唐揚げ。
ほどよい甘みのあるユッケ。
そして人気のレバ刺し。
リピーター続出の一品です。
平田さんの店に立ち寄れば2人の魚談議は尽きません。
やっぱり地元の人って地元で食べないものに価値を見出さないんですよ基本的に。
まあ普通こっちで捨てられてたら食べ物じゃないっていう認識なんですよ。
平田さんだけが地元の人にもかかわらずあっこれ食べてみようよって言ってくれて。
このホシエイに目を付けたのは和食の料理人だけではありません。
東京の渋谷にあるイタリアンの店イルチッチォーネ。
未利用魚と言われる魚を積極的にメニューに取り入れています。
こちらは長谷川さんから仕入れたホシエイ。
身と肝を分けてゆっくりとボイルします。
茹であがったホシエイは?
(楠さん)見てわかるようにトロットロですね。
淡泊な身をクルミやアンチョビのソースが優しくまとめます。
エイはもともとヨーロッパも食べるお魚なんですけどこんなに品質がよくてよく言うアンモニア臭とかがないのは長谷川さんのところですかね。
やはりエイは臭みがあるという印象が強かったんですね。
ではなぜ長谷川さんの扱うホシエイは料理人から評価が高いのでしょうか?そのわけは夜明け前の港にありました。
長谷川さんの姿が見えます。
今日は何をしに来たんですか?船に乗らせてもらって魚を直接船の上で締めさせてもらいます。
どうしてもそこに乗らないとどうしても手に入らないクオリティーの魚っていうのがどうしてもあるので。
長谷川さんは市場で買うだけではなく自ら船に乗り込むというのです。
しかも漁師はやらないとっておきの技を持っているのです。
富戸漁港からおよそ30分。
向かった先は相模湾内の定置網です。
長谷川さんの目は何を追っているのでしょう?視線の先にあるのは…。
(長谷川さん)危ない危ない。
危ない危ない。
すくい上げたのはお目当てのホシエイ。
気をつけなければならないのが尾の先の毒針。
刺されると痛みが半年も続くそうです。
長谷川さん素早く尾を切り取ります。
さらにエラを切って血を抜きます。
慌ただしい船の上でどうしてわざわざ作業をするのでしょうか?エイとサメは血がすごい臭いので血抜きを徹底的にするために先に生きているうちにエラを切らなきゃいけない。
ホシエイをおいしくする秘訣がこの手間にあったんですね。
さらに網が引き上げられると…。
長谷川さん今度は丸々と太ったサワラを取りました。
おや?急いで何をしようというのでしょう?これが長谷川さんの得意技何を使っているのでしょうか?あれは神経を抜くワイヤーですね。
船の上で処理をすると普通に流通してる魚とは全く違う魚に出来るんで。
脳に穴を開けそこからワイヤーを通し神経を壊す神経締め。
死後硬直を遅らせ鮮度を保つ効果があると言われています。
これも長谷川さんが船に乗り込む目的の1つ。
よい魚をいち早く見つけさらに魚の質を高くするのです。
富戸漁港に戻り水揚げが始まります。
とれたての相模湾の恵みアジやサバが満載です。
ありがとうございます。
ギンザメギンザメ。
やった。
漁師から渡されたのは早速神経締めをします。
こいつは太いほう…。
練り物などに利用されるギンザメ。
お得意から注文を受けていた獲物です。
仕入れに貪欲な長谷川さん。
今度はサバを手に取ると再び神経締めをします。
完全な船上神経締めとは言えないんですけどこれでも普通に市場に出回ってるサバよりは全然身質が変わるので。
身割れしやすいサバが鮮度が保持出来るので。
神経締めのワイヤーは魚の大きさに合わせて何本も使い分けるこだわりようです。
漁師たちは長谷川さんの事をどう思っているのでしょうか?もともと値段の付かない魚が市場に出れば僕ら漁師にとってもいい事なんで。
長谷川君みたいな伝える人いないと僕らが直接消費者に繋がってるわけじゃないからそういう意味で伝えてもらってるって感じですね。
すっかり明るくなり人気のなくなった富戸漁港。
店舗を持たない長谷川さんにとって出先は即作業場。
これはホシエイのぬめり取り。
(長谷川さん)全部が全部取れるわけじゃないんですけどあらかた処理しといたほうが結局誰が使うにしても扱いやすいので。
ギンザメも臭みが出ないよう丁寧に洗います。
はんぺんにしてもかまぼこにしても刺し身で食べても全然好評頂いてます。
お寿司屋さんでも使えます。
サワラなど他の魚も丁寧に処理して箱に詰めます。
生きて買えるって事がすごくでかくて。
ただこれが生きて水揚げされる事はないんです。
現場に行かないと生きて買う事は出来ないので。
このエイなんかもそうですね。
向こうにも揚がるは揚がるんですけどやっぱ血抜きとかそういうのは自分でやったほうがクオリティーが高くなるので。
こういった魚を取れるっていう事自体が対価。
はい。
エイはこっちで取りましたんでサメがあれば助かります。
はいエイはこっちで3枚買いました。
作業と同様注文や仕入れのやり取りも全て出先から携帯電話で行うのが長谷川流です。
相模湾を北に向かう長谷川さんの車。
仕入れた魚をその日のうちにこの軽トラックで届けます。
1日の移動距離が500キロメートルに及ぶ事もしばしばです。
車が向かったのは藤沢市。
場所は藤沢駅近く。
どんな店なのでしょうか?そば屋さんなんですけど魚にかなり力を入れている居酒屋さんですね。
おはようございます。
納品したのはホシエイとギンザメなど。
果たしてどんな料理に化けるのでしょうか?それでは夜のお店をちょっとのぞいてみましょう。
笊麦は相模湾の新鮮な魚が味わえる店。
店長が持っているのはホシエイの肝。
まあ1回ホシエイから出たものを塩水で血を抜いてある程度日持ちするようにしてあります。
肝は見事なピンク色。
これは期待が持てますね。
レバ刺しはホシエイ料理でも一番の人気メニュー。
独特の食感と脂の味わいが評判です。
食べます。
本当おいしそう。
おいしそう。
おいしい。
本当だ。
やばいでしょ?超おいしい。
本当なんかおいしいしか言えない。
おいしいしか言えないみたいな…。
超おいしい。
えー!そしてエイヒレは?そばのたれを使って甘辛く仕上げられた唐揚げ。
コリコリの食感が食欲をそそります。
ただのエイヒレじゃなくてお肉が付いてるのでギンザメは煮付けになりました。
(森田さん)これ普通じゃ入ってこないし同じ例えばギンザメが手に入るとしても市場から買ったのと長谷川君から買ったのでは質が全然違うんですよ。
もう違うお魚と言ってもいいぐらい。
こんな身もプリプリしてないですし。
濃いめの煮汁が淡泊な身によく絡み上にのせたフカヒレの食感がアクセントを加えます。
神経締めっていうのは他にもあるんですけどやっぱ長谷川君から入れたものは彼がもともと目利きしていい魚を神経締めしてくれてるので。
長谷川さんが扱う魚に対する料理人の信頼は絶大のようですね。
この日長谷川さんは三浦半島の先端城ヶ島漁協へ来ていました。
まずは漁協の前を借りて箱詰めです。
中に入っているのはサワラとホシエイ。
エイをどうやら兵庫の魚屋さんのお客さんがエイを注文されていてでその注文がうちに来るんですね。
その魚屋さんが買うんでものを結局。
でそれと組み合わすのにエイだけ送ってもしょうがないんで関西今サワラ全然ないので船の上で締めた魚っていうのもほとんど流通しませんので。
お客さんが満足するよう色々考えます。
そしてこちらの漁協に揚がってきたのは…?早速血抜き処理をします。
それにしてもこの魚を買っていく人はいるのでしょうか?いやまずあんまりいないですね。
観賞用が主ですよ。
主に観賞用というドチザメ。
一体どんな料理になるんでしょう?とっぷりと日が暮れたものの長谷川さんの配達はまだ終わりません。
やって来たのは逗子の居酒屋新道亭。
持ち込んだのはあのドチザメです。
店の主出口さんも魚の料理には特別なこだわりを持っています。
(長谷川さん)ここはここで多分入ってるはず。
自分の卸した魚の評判を確かめるために長谷川さんは客として週5回程度この店に通っています。
さてドチザメはどんな料理になるのでしょう?その答えはおでん。
ドチザメは練り物になりました。
実はだしにもサメが使われています。
これも多分そうそう手に入るもんじゃないと思うんですけど…。
長谷川さんから仕入れた独特の風味があります。
ドチザメの薩摩揚げはんぺんちくわ。
サメ節のだしを吸って絶品です。
サメ自体もともとすり身に向くんですけど処理が悪い魚だとすり身にしても臭みが残っちゃうんで。
それがないんで。
はい全然違いますね。
長谷川さんの丁寧な処理のおかげでサメがこうした料理にも変わるんですね。
生産者の思いをしっかり身をもって体験してだからこそやっぱり魚はすごく丁寧に扱わなきゃいけないと思うし生産者が大事に大事に取って僕がさらに大事に大事に取ってるんだからお店の人にも当然大事に大事に渡してお店の人が大事に使ってくれてでお客さんが大事に食べてくれて最後おいしいっていう声までまあここ僕の場合は行けば見れるので。
そのループをずっと…。
さらにその思いを漁師さんに例えばうちの日吉さんにこんなふうにこのエイが評価されたんですとか今日締めたサバがこんなに料理人さんがびっくりして喜んでくれたんですとかそういうのを伝えられるのはすごくやっぱり喜びなんですよね。
サークル感というかループ感というか。
なんか幸せのループ感みたいなのですね。
海好きの集うこの町に長谷川さんの自宅はあります。
この日は休日。
近くに住む友人たちが集まっての通称魚会です。
大体みんなで集まって自分のラインアップの中からなんか好きなやつを選んでみんなで集まって食べる事が多いですね。
使うのはクオリティーの高い魚ばかり。
休みでも魚に夢中の長谷川さん。
魚と奥さんの久美子さんどっちが好きなのでしょう?そうですね多分魚なんじゃないかと思います。
はい楽しみましょう。
かんぱーい!
(一同)かんぱーい!取りすぎないようにハタ鍋。
うめえ!肝肝。
メニューはキンメダイとヒラメの寿司。
そしてハタの鍋です。
友人の目に長谷川さんはどう映っているのでしょうか?本当に都会のコンクリートの中では生きていけない人だと思いますけど。
知らない魚を見つけるととりあえず口に含むんですよね。
本来だったら危ないじゃないですか。
どこら辺が食べられるところか食べられないのかわかんないですけどとりあえず食べてみるっていうのはああこうやってパイオニアは魚の味を開拓していくんだなみたいなのがありますね今までも。
既成概念にとらわれずおいしい魚の事はなんでも伝える事。
それが長谷川さんの信念なのです。
そして彼が火を付けたホシエイ人気はさらに広がりを見せています。
相模湾の東佐島漁港。
長谷川さんの努力のおかげで漁師が処理したホシエイが普通に並ぶほどになりました。
佐島ではホシエイをどう見ているのでしょうか?全く利用しなかったものがですねそうやって流通になるという事は全体の流れとしてもいい事だと思いますので。
こういったものをねどんどん推奨していきたいなというふうに思っておりますけど。
市場近くの仲卸店の主人も漁師の意識の変化を感じています。
1匹いくらとかになれば今度漁師さんもその…面倒くさいかもしれないけどそうやって包丁入れて血抜きしてくれたり。
そういうふうにどんどん…ねえ今まで店にはホシエイを仕入れようと次々と魚屋がやって来ます。
長谷川さんも満足そうな表情。
ホシエイのファンが広がるならライバルが増えてもお構いなしです。
逆に魚の値段が高くなる事は悪い事ではなくてうちらの儲けも増えるという事なので魚の値段が高くなるっていう事は。
欲しい人がどんどん増えていけば漁師さんも余計扱いがよくなっていいスパイラルになりますよね。
くせモノたちの知られざる味を伝える事で漁師から魚屋までが元気になる事。
それが長谷川さんの喜びなのです。
次回の『日本!食紀行』は福岡県博多。
とんこつラーメンを愛する人情に学びます。
2014/04/20(日) 06:00〜06:30
ABCテレビ1
日本!食紀行[字]
日本全国各地の「食」を通して、地域の歴史や文化、人々の英知や営みを学び、温かいコミュニティーなどを四季折々の美しい風景とともに描き出す教育ドキュメンタリー番組。
詳細情報
◇番組内容
ホシエイ、という魚をご存じでしょうか?煮付け・唐揚げはもちろん、レバ刺しはリピーター続出の絶品!今回の舞台は海の幸の宝庫・相模湾。活きの良い旬の魚が水あげされる静岡県伊東漁港に、異色の魚屋さんがいます。彼が仕入れるのは普通の魚だけでなく、いわゆる“未利用魚”。
◇番組内容2
これまでは捨てられていた魚を仕入れ、驚きの味に変貌させるのです。漁師や料理人から嫌われていたホシエイが、なんと幻の絶品料理に!「うまい!しか言えない」とお客さんも大絶賛。これまでは知られていなかった魚のおいしさを伝え、さらに漁師たちの意識までも変えていく一人の魚屋さんを追います。
◇ナレーション
大石岳志(静岡放送アナウンサー)
◇音楽
エンディングテーマ曲
Bom Dia ! / 柏木広樹
◇制作
企画:民間放送教育協会
制作著作:静岡放送
◇おしらせ
☆番組HP
http://www.minkyo.or.jp/
◇おしらせ2
この番組は、朝日放送の『青少年に見てもらいたい番組』に指定されています。
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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