皆さん『美の巨人たち』が700回を迎えます。
おめでとうございます。
渡辺いっけいです。
700回記念は2週連続でローマ・ヴァチカンスペシャルです。
私も絶対見ます。
皆さんもご覧ください。
世界で最も知られたポーズで考え込むこの男。
皆さんもうよくご存じでしょう。
手がけたのは近代彫刻の父と呼ばれるオーギュスト・ロダン。
人間から型をとったと批判されるほどのリアルな肉体を表現し数々の傑作を世に残してきました。
ではその天才彫刻家にインスピレーションを与え続けた1人の女性がいたのをご存じですか?彼女もまた天賦の才能の持ち主と言われました。
ロダンの弟子でありモデルであり愛人。
しかしロダンほどの名声も得ることなく心のバランスを崩し1人この世を去っていきます。
いったいカミーユに何があったのか?その作品を見ればカミーユの葛藤が見えてきます。
偉大なる男との愛と憎しみの日々。
今日の作品。
高さ45センチほどの小さなブロンズ像です。
一心にワルツを踊る2人。
男の力強い右腕が女の細い腰を支えています。
その骨格や筋肉の表現はまさにロダンのリアリズム。
女の体はしなやかに傾き男の腕にすべてをゆだねているようです。
ダンスの躍動を伝えるのは荒々しく乱れる腰布。
ロダンとカミーユなのでしょうか?ひとつとなった2人のステップ。
恍惚の瞬間です。
しかし全体を見るとその姿はどこか危うく不安定。
あまりに傾きすぎています。
手と手を絡め身を寄せ合う愛のダンス。
でもワルツとはこれほど熱く激しいダンスだったでしょうか?3拍子で回るそのステップを見てみましょう。
ワルツの謎を解く鍵はその踊りの中に隠されているようです。
ふぅ…もう動けないよ!本当体力ないわね!しっかりしてよ!っと…もう!危ないよ!気をつけて!まったく…ん?なんだ?これ。
それも『ワルツ』ってタイトルらしいわよ。
これが?本当にワルツ?そうこのワルツ!ワルツには見えないよ。
まぁ…そうね。
こんなに傾いたら…。
お…おぉ…おっと!あぁ〜!!あっ!あっ!あっ!危な…あぁっ!危ないよ!こんなポーズ絶対無理。
無理よね。
でもこれ『ワルツ』ってタイトルなのよ。
ワルツを踊ってても実際にはこんなに傾くことはないもんね。
確かにこれじゃ2人とも倒れちゃうわね。
なんでこんな危なげなポーズにしたんだろう?う〜ん…。
不自然なほど傾き抱き合いながら倒れていきそうな2人。
カミーユ29歳。
ロダンの弟子になって10年が経った頃の作品です。
この時代国立の美術学校が女性の入学を認めていなかったためカミーユが彫刻家として認められるのは決してたやすい道のりではありませんでした。
ようやく認められた『ワルツ』にはカミーユの特別な思いが込められていたのです。
そして…。
〜この作品の誕生の陰にはロダンともう一人偉大な音楽家の存在がありました。
その男もまた近代芸術に革命をもたらした人。
カミーユとの間にいったい何が?女はこのまま2人が一つになれることを願い。
男は力強く抱きしめ熱き口づけを与える。
カミーユとロダンは愛の形を作品で表現しました。
ロダンからカミーユへの手紙です。
『ワルツ』もまた愛に溺れ戯れる2人の姿を表したのでしょうか。
だとしたらなぜ接吻や抱擁ではなく『ワルツ』なのか?この斜めの『ワルツ』やっぱりおかしい。
どういうこと?倒れそうってだけじゃないのよ。
顔も密着しすぎだし右手の位置だって低すぎる。
全然違ったポーズに見えるのよね。
確かに『ワルツ』ってタイトルだから踊っているところだと思ったけど関係ないのかな?でも女性の左手とか男性の右手はワルツのかたちをとってるの。
19世紀はこんな踊りだったのかも。
う〜ん…そうかしら?パリに19世紀のダンスを教えるアソシエーションがあります。
指導をするドジョアーニさんに19世紀のワルツについてうかがってみました。
重圧からの解放。
それこそがカミーユが必要としていたものでした。
熱く燃えたぎる愛のなかでいったい何から自由になろうとしていたのでしょうか?ここにカミーユとロダンは共同のアトリエを借りていました。
出会ったのは1883年。
カミーユ19歳ロダン43歳のとき。
すでに巨匠の道を歩み始めていたロダンがカミーユを弟子として迎え入れたのです。
ロダンはカミーユの類まれなる才能と美貌の虜になります。
カミーユにとっては初めての恋でした。
しかしロダンにはもう一人の女性が…。
ローズ・ブーレ。
ロダンが20代の頃から連れ添い子供までもうけた内縁の妻。
ロダンは無名の頃から支えてくれたローズと別れられずカミーユはいつも1人でした。
そして彫刻家としても葛藤が。
カミーユとロダンの作品です。
カミーユが先に制作していても巨匠ロダンの物まねと批判を受けました。
更に…。
女としても彫刻家としても影であり続けたカミーユ。
表舞台に立つことなく10年が経とうとしていた頃…。
ロダンの子を妊娠。
中絶を余儀なくされます。
そして子供の彫刻に没頭するのです。
そんなときカミーユに光をさしてくれる人物が現れます。
作曲家の2歳年長の若き芸術家はカミーユの心に一時の安らぎを与えました。
2人はパリ万博で浮世絵に感銘を受け後にそのイメージを作品にします。
ジャンルは違えど互いに感性を高め合った2人。
伝統的な音楽形式を嫌い印象派絵画などを通して新しいスタイルを模索していたドビュッシーの自由な感性はカミーユを刺激します。
そうして作られた『ワルツ』。
その姿は激しく密着しながら常識を覆すように極端に傾いています。
なぜこれほど傾いているのか。
カミーユやロダンのレプリカを手がけたことがある彫刻家のブリセさんに『ワルツ』についてうかがってみると…。
それまでロダンの影響もありリアルな肉体の再現シワや筋肉などの細やかな表現にこだわってきたカミーユ。
しかし『ワルツ』では倒れる瞬間の体や腕の形に着目しそこにいかに男女の機微を表現するかを模索したのです。
師匠のロダンの作品の多くは『カレーの市民』や『地獄の門』のように実際の『ワルツ』よりも極端に密着した男女の形には1つになりたいというカミーユの思いが。
今にも倒れそうな瞬間を選んだのには一緒になれないのならこのままおちていこうというカミーユの決意が表されています。
計算されたフォルムで感情を表したカミーユ。
その表現方法にはロダンの面影はなくカミーユの圧倒的な個性が輝いていたのです。
カミーユは弟への手紙にこう綴りました。
カミーユの背中を押してくれたドビュッシーは『ワルツ』が完成したときすでに隣にはいませんでした。
しかしドビュッシーは『ワルツ』のブロンズ像を入手し終生ピアノの上に飾ったといいます。
でも結局カミーユはロダンの影響がなくなってもロダンからは離れられなかったんだよね。
ねぇ聞いてる?そんな簡単に解釈しちゃダメ!えっどういうこと?ほら見て。
女性が男性を拒否してるようにも見えるのよね。
こっちから見ると顔を背けてるようにも見えるし手も繋いでない。
拒んでるように見えるわ。
あぁ男性は繋ごうとしているのにね。
なんだか男性から離れようとしているように見えるのよね。
『ワルツ』にはまだカミーユの伝えたい思いが込められているようです。
密着した2人が見せたわずかな距離。
『ワルツ』が語る真実とは…。
『ワルツ』から12年後に作られた女神の像です。
腰にまとった布に斜めに傾いたポーズ。
『ワルツ』から男性パートナーが欠けた構図のように見えます。
まるで『ワルツ』の男女の行く末を暗示しているかのように。
このまま1つになってしまいそうなほど密着する2人。
しかし頭のほうから見ると女の微妙な動きが男を拒んでいるようにも見えるのです。
ところどころに見られる2人の微妙な距離感。
女性としてロダンを愛し慈しみたい。
しかし彫刻家として成功するにはロダンのそばに居続けるわけにはいかない。
その愛と自立の葛藤が『ワルツ』には込められていたのです。
ロダンとのいさかいは絶えずその後も離れてはくっつく。
その繰り返し。
次第にカミーユはアトリエに独りこもりこうつぶやくようになるのです。
『ワルツ』はロダンとの別れの序章でした。
深い愛の末に導かれる悲しき運命。
しかしそれはとても繊細に優しくかたどられているのです。
女心って複雑なのよね。
この微妙な透き間とか手の置き方とかホント繊細でしょ?男だって考えてるんだよ。
ちゃんと女性を支えようと。
ほらこの右腕。
普通はここまで回しこんで支えないもの。
これはカミーユが望んだロダンの姿だったんじゃない?ああ…まあそうかもしれないな。
さあ私たちも2人に負けない情熱的なワルツを踊るわよ!えっ!?練習終わったんじゃないの?1914年カミーユは心を病み死ぬまでの30年間を病院で過ごすことになります。
ロダンが生涯を閉じるのはカミーユが入院してから3年後。
1917年のことでした。
こんな手紙を残しています。
展示されたのは彫刻家として女としてすべてを捧げたロダンへの愛と抵抗の作品でした。
そこには1人の女の情愛プライド悲しみ。
すべてが込められています。
カミーユ・クローデル作『ワルツ』。
運命を導く悲しくも美しきステップ。
(原田)オランダフェンロという人口10万人の小さな街で新たな人生をスタートさせた日本人がいます。
2014/04/19(土) 22:00〜22:30
テレビ大阪1
美の巨人たち カミーユ・クローデル『ワルツ』[字]
毎回一つの作品にスポットを当て、そこに秘められたドラマや謎を探る美術エンターテインメント番組。今日の作品は、カミーユ・クローデル作、ブロンズ像『ワルツ』。
詳細情報
番組内容
今日の作品はカミーユ・クローデル作『ワルツ』。高さ45cm程のブロンズ像、男女がワルツを踊る姿は躍動感に溢れています。ところが、どこか危うく不安定。なぜ倒れそうな程に傾いているのか?師であり愛人であったロダンへの想い、そして苦悩…そこには彼女の葛藤と決意が込められていました。また作品誕生にまつわる偉大な音楽家とは?困難な時代を生きた女性彫刻家カミーユ、作品に込められた情愛、プライド、悲しみに迫ります。
ナレーター
小林薫
音楽
<オープニング・テーマ曲>
「The Beauty of The Earth」
作曲:陳光榮(チャン・クォン・ウィン)
唄:ジョエル・タン
<エンディング・テーマ曲>
「終わらない旅」
西村由紀江
ホームページ
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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