ハートネットTV 介護百人一首 2014「春編 その一」 2014.04.16

(小谷)「介護百人一首2014」。
兵庫県の藤満靖子さん73歳の短歌です。
「今年もとうとう一歩も外に出る事のなかった夫。
桜の季節になり小枝や花びらを拾って手の中でのお花見です」。
富山県の浅田真弓さん62歳の短歌です。
「夫が足こぎ車椅子のペダルに動かない左足を載せるとまるで動くように見えます。
近所の人から『元気になったね』と言ってもらえます。
本当に動くようになってほしいです」。
「介護百人一首2014」。
今年も1万1,000を超える歌の中から選ばれた珠玉の100首。
三十一文字に込められた介護を巡る思いを訪ねます。
(毒蝮)介護は明るく楽しくかっこよく。
全国の介護家族の皆さんご機嫌いかがですか?「ハートネットTV」今日と明日の2日間は「介護百人一首春編」をお送り致します。
全国から寄せられました1万1,606首の中から選ばれた100首今日から一年にわたってご紹介してまいります。
いや〜やっぱり春は桜だよな。
それからね笠智衆さんが言ってたけどね鎌倉の山は春になるとひとつ膨らむっていうような…。
膨らむんだよね。
お花で。
気持ちも膨らみますね。
新年度にふさわしい華々しい今回のゲストをご紹介致します。
この方です。
(岡野)今日はあんま元気なかね。
漫画家の岡野雄一さんですよ!認知症の母とのおかしくも切ない日々を描いた代表作「ペコロスの母に会いに行く」はベストセラーになり映画化され話題となりましたね。
ペコロスって小タマネギね。
頭をなでてますけども。
岡野さん…。
いや〜俺会いたかったんだよ。
よくいらっしゃいました。
呼んで頂いてありがとうございます。
俺ね映画も見たし…。
ちょっと頭触らせてくれる?ああっ!いやちょっと…ちょっとぬるっとするんだよな。
ホントですか。
(笑い声)あのお母さんによくペタペタやられたり殴られたりね。
実際にやられるんですか?やられるっていうか僕がわざと差し出すようになってしまったんですけど…。
挨拶代わりに?1回帽子かぶって入っていったら僕が誰か分からなかった時があって…で取ったら「あっ雄一か」っていう事でなでられた事があってそれからしばらくは会うと外すようにして…。
お母さんは現在はグループホームに入られているという事ですが岡野さんがなんとこの介護短歌を詠んで下さいました。
いいね〜!これは「あひみてののちの心にくらぶれば」という百人一首ありましたけども…。
本歌取というやつですか。
本歌取…。
はあ〜!しっかりしてるじゃない!岡野さん「昔の日射しの中に住むお母さん」というような…。
僕漫画でもよく陽だまり描いたりするんですけれどそれは要するに母の頭の中の出来事を陽だまりの中に描いてるという感じでやってるんですけど…。
それで「日射し」とかをちょっと使わせて頂きました。
なるほど。
ではお話じっくり伺ってまいりたいと思いますがまずは「介護百人一首2014春編」ご覧頂きましょう。
「『もう一度試合がしたい』。
サッカーの選手だった夫はテレビを見る度言っていました。
1964年の東京オリンピックの時には役員を務めました」。
介護施設で働く神奈川県の福島裕子さんの短歌です。
「デイサービスの利用者の方が『永眠の練習』と言ってよく居眠りをします。
その方は東京オリンピックが開催される年にちょうど100歳になります。
眠ってなんていられませんよ〜!」。
広島県の山本百合子さん71歳の短歌です。
「整頓好きでしっかり者の母でしたが認知症が進みました。
娘の私をデイサービスの職員さんと思い込み私が名前を言うと母はニコニコしてこう言いました」。
東京の北練馬区。
この町に介護百人一首の詠み人がいます。
西武池袋線桜台の駅近く。
歌を詠んだ岸徹さん75歳と妻の紀代子さん73歳です。
徹さんはALS筋萎縮性側索硬化症という難病を患って15年になります。
全身の筋肉が萎縮し衰えていく病気です。
気管を切開し人工呼吸器をつけたのは4年前。
この2月からは夜だけだった呼吸器を昼間も装着するようになりました。
介護は24時間体制。
紀代子さんのほか15人の介護ヘルパーが日夜交代で当たっています。
気管切開をしていると通常は声が出せないのですが岸さんは話す時だけ呼吸器を外しスピーチバルブをつければ会話ができます。
(紀代子)はい声が出ましたので…。
(取材者)今はどんな感じですか?
(取材者)このスピーチバルブってのは練習がいるんですか?20日間ぐらい声が出なくて文字盤でやってすごく悲しい思いしたんですけど退院前に「つけてみてくれ」って言うんで試してみたら声が出た時の喜びはうれしかったですね。
声が出たんですね。
第一声ね。
(取材者)そりゃうれしいですよね。
うれしいですよ。
うれしかったね…。
徹さんが紀代子さんと結婚したのは昭和38年。
埼玉県川口の鋳物工場に勤めていた徹さんが同じ会社の紀代子さんを見初めて交際を申し込み結婚しました。
上の子が7歳になった昭和47年徹さんは一大決心をします。
会社を辞めおそば屋さんを始めたのです。
全くの未経験。
家まで売って…という徹さんに周囲の誰もが反対しましたが紀代子さんだけは黙ってついてきてくれました。
私ついていかない訳にいかない。
もう子どもが2人いましたからね。
(取材者)うまかったですか?おいしかったです。
ハハハ…!大好きです。
結構繁盛しましたね。
商売に打ち込むかたわら2人で登山にも行きました。
しかし平成10年60歳の時何の前触れもなく病魔が襲ったのです。
徹さんのALSは病気の進行が比較的ゆっくりしたものでした。
それでも毎年体のどこかが動かなくなっていきます。
4年前からは一日中ベッドに寝ているようになりました。
今はパソコンも僅かに動く右手の中指を使って操作しています。
このパソコンで徹さんは自分のホームページを作っています。
その名も「桜台通信」。
毎日必ず1首ずつ短歌を詠み書き込んでいます。
徹さんは詠んだ歌に文章も添えます。
(取材者)こうやって歌を詠むようになったのはどうしてですか?
(取材者)今日作った歌だ。
「四人ものテレビクルーにかこまれて何時もどおりの暮らしを曝す」。
(徹)はい。
本音です。
徹さんの外出用の車椅子です。
これもだから…うち用に作って頂いて。
(取材者)特製?特製です。
以前は時々この車椅子で散歩に出る事もありました。
最近はそれも難しくなってきて病院に行く時だけ利用しているそうです。
そんな徹さんが外出の時に自分には必要のない靴を履かされる事をちょっと恨めしげに詠んだ歌。
でも実はこの靴は紀代子さんの心遣い。
車椅子に載せた足をどこかにぶつけないようにと履かせているのです。
(取材者)病気になった時は紀代子さんに随分力づけられた…?もちろんです。
課長ぐらいにしてもらえないかな。
万年係長です。
ハハハ…。
目拭いて。
徹さんと徹さんをこよなく愛する万年係長の春です。
いやいや!係長じゃないねこれ。
重役部長クラスでいいね。
奧さんね。
紀代子さん。
この方ホーキング博士じゃないけど知性も感性もすばらしいね。
毎日短歌をお作りになるという…。
ちょっとおかしみもある歌ですけども岡野さんどうご覧になりました?これも僕好きなんですけれど母も車椅子に乗る時にベッドから出て靴を履いてなぜか…ホントになぜだろうと思うぐらいなぜか靴を履いて…で車椅子なんですよ。
全く同じですね。
それをおっしゃったように自分からちょっと引いた感じで笑いに持っていくところもありますよね。
それから「四人のテレビクルーにかこまれてふだんの暮らしを曝します」って今作ったっていう短歌…。
取材に行って歌の題材にされてるというね。
素直に詠むというこのセンスのよさね。
すばらしいというか…。
日記代わりに短歌を詠むとおっしゃってましたけども岡野さんの漫画にするのと少し共通点ありますでしょうか?僕が長崎で長崎の夜のお店を紹介する小さな…小さなと言ったらあれなんですけど10年ぐらい続いたタウン誌の中に細々と描いてたんですけど読むお客さんが酒が入ってたりする。
ママさんだったりする。
どうしても最後の8コマ目はしんみりよりはやっぱり笑わせたい。
8コマ目で笑いに持っていってるはずなんだけどその漫画見てママさんが笑ってるのかなと思ったら泣いてたりもするんですよ。
それは「自分のところもそうだ」という共感みたいなところで泣いたりなさってたりも…。
だけどね泣く漫画っていうのはすばらしい。
やっぱり介護の深さですね。
そうですね。
岡野さんほかに気になった短歌ありますでしょうか?広島の山本さん。
これ「ああうちもそうそう!」という感じってのありますしこれ結構「そうだそうだ」という人多いんじゃないですかね。
「認知症の病気なんだ。
一緒に笑っちゃえ」と…。
そうなるまで時間かかるけどなっちゃうんですね。
僕もハゲ頭見せて「ああ雄一や」って分かってた時点ではまだよかったんですけどそれも分からなくなった時はやっぱりショックでしたね。
要するに進行していけばだんだんそうなりますから…。
その途中の歌という感じがしますけれど…いいですね。
「まあうちの娘と同じ名前じゃ」。
悲しみもうまく歌にして下さって山本さんありがとうございました。
それではそのほかの「介護百人一首春編」ご覧頂きましょう。
静岡県の藤田一男さん78歳の短歌です。
「生まれてからずっと母と一緒です。
もうすぐ100歳の母がいつまでもほうける事なく暮らせるはずはないのですが母にはいつまでも凜としていてもらいたくてつい…。
そしてそれを悔やむ私です」。
介護施設で働く栃木県の猪瀬さと子さん55歳の短歌です。
「洗濯物を取りに行こうとすると『泥棒!』と言われたり頭を洗えば『人殺し!』と言われます。
私は名役者だと思います」。
「時たま親しい友人に親の介護の愚痴をこぼしますが決まって友人から言われる事は『介護をしたくても両親ともいないからあなたがとても羨ましい』。
介護できる親がいる。
これも一つの幸せだと知りました」。
この町に住む田千鶴子さんの歌も介護百人一首に選ばれました。
高岡市内の学習塾です。
歌を詠んだ田千鶴子さん76歳です。
千鶴子さんは以前教師をしていた事もありこの塾でもう37年も子どもたちの勉強を見ています。
千鶴子さんは夫と母との3人暮らし。
10年前実母を引き取り自宅で介護をしているのです。
お母さんの高柳そとさんは100歳。
最近風邪をひいた事もあっていま少し食欲をなくしています。
もうデイサービスには行けなくなりましたが日によってよくおしゃべりをします。
(取材者)おいくつですか?お母さん「いくつですか?」って。
お母さん何歳になったん?週に1度の訪問看護です。
血圧測らせて下さいね。
はい。
ああありがとう!手出してくれた。
すいません。
114の60ね。
はいどうも。
はいありがとう。
すいません。
毎日?毎日遊びに来ていいのですか?ありがとう。
フフフ…。
高柳そとさんは大正2年生まれ。
高岡の高等女学校を出ました。
結婚したのは昭和8年。
19歳の時。
軍需工場に勤めていた博さんのもとに嫁ぎました。
千鶴子さんが生まれたのは昭和13年。
そとさんは4人の子を設けました。
おしゅうとめさんのもとで少し遠慮し小さくなって生きてきた母だったと言います。
10年前そのそとさんも90になりそばで世話ができる人もいなくなってしまいました。
昔々のお嫁に来た時のタンスを持って…。
千鶴子さんが子どもの頃から見慣れた母のタンス。
このタンスと一緒にそとさんは娘のもとへ身を寄せたのです。
主人がすっごい何か私以上に気かけてくれるし嫁ぎ先まで母呼べると思わなかったので私はすごいよかったっていうかね…。
千鶴子さんの夫孝さんは76歳。
中学の校長で定年を迎えました。
千鶴子さんたちの3人の子どもは家を巣立ち今は静かな暮らしです。
やっぱりこっちに置いた方が一番無難だと…。
この間1か月ほど入院してたんですけど帰ってきたら大変喜びましたからやっぱりうちに置いてあった方がいいんだろうなと。
帰ってきた途端に「ああ生まれたうちが一番いい」って言った。
だからやっぱりそう思って帰ったんかなと…。
短歌作りが趣味の千鶴子さんは次第に老い子どもに返っていくようなそとさんを見守りながらたくさん歌に詠んできました。
そんな一首。
こう見てて「鼓笛隊が通る」って言われるんですけど通る訳ないじゃないですか。
(取材者)ここの田んぼのとこ?そうそう!「あそこ行くから早く…。
せっかく一生懸命小学生がしてるからキャラメルでもあげてこい」って私に言うので「キャラメル置いてきた」って言ったら「よかったね」って言って…。
そとさんだけに見える夢の世界です。
何か独特の世界があってその中にちゃんと住んでらっしゃる。
そういう「こうだからああです」というのが通じなくなってるなっていうのがあの短歌作った時の気持ちで理屈じゃない世界にいられるので…。
理屈や現実を超えた世界にも住む母。
そしてその長い人生をいたわる娘の春です。
はあ〜しかしまあかわいらしいのとねすばらしい。
そうですか。
すごいな。
超越してるっていうのがね。
岡野さんはどうご覧になりました?千鶴子さんの歌。
そうですね…。
どなたも普通の人生いろいろ送っていく…。
その普通の人生がいっぱいあるんですけれど最後にそういう共通する「忘れる」という事はすごくいい事なんじゃないかなという気がしますね。
何かすごく母もしっかりしなきゃいけないという事でやってきたのが多分する必要がなくなって解き放されてそれでほどけていくようにぼけていくんですけど何かかわいくなったんですよ。
子どもから見ても…。
だってみんな笑顔なんだもん。
そうですそうです。
だって介護しててつらい事はたくさんありますよ。
でもそれを超越すると笑顔になって…。
何かみんなね自分の世界を持ってらっしゃるって感じがする。
そうですよね?お母さんの世界ですよね?だから僕漫画の中でも描いてますけどホントぼける事は悪い事だけじゃないんじゃないかなという気がしますね。
母がそういうふうにしっかりしている必要がなくなったというのも「よかったね」ってどこかで言いたい気がするんですよね。
へえ〜。
「よかったね」って認めてあげるというか受け入れてあげるというか。
そうですそうです。
この田さんの短歌の中にも…。
何か幻想的…何かそういう…ねえ。
まあ「陽だまり」っていうのは僕もよく漫画で使うんですが要するに認知症になった母の昔の思い出をその陽だまりの中によみがえらせるみたいな感じで描いております。
陽だまりがあってね…。
遠い日の陽だまり…。
岡野さんまだまだお話伺いたいですけれども「介護百人一首春編」明日もご覧頂きます。
明日もよろしくお願い致します。

(テーマ音楽)2014/04/16(水) 20:00〜20:30
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV 介護百人一首 2014「春編 その一」[字]

介護をめぐる短歌を詠んだ「介護百人一首2014」。今回は「春編その一」 歩くこと立つことさへもかなわぬに靴を履かされ車椅子に座す その他の歌をご紹介します。

詳細情報
番組内容
「介護百人一首2014」 介護する人、される人、日々の介護生活の中でふと心に浮かんだこと、ある出来事の情景…いずれもさまざまな思いがこめられた珠玉の百首です。今回は「春編その一」。歌はどんな時にどんな思いで詠まれたのか、作者の方々をも訪ねます。介護短歌という“三十一文字の器”にこめた人の優しさ、強さにふれていきます。「不合理も不条理もみな容認す介護という名の法はウルトラ」他の歌をご紹介します。
出演者
【出演】毒蝮三太夫,小谷あゆみ,岡野雄一

ジャンル :
福祉 – その他
福祉 – 高齢者
福祉 – 障害者

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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