てはいけません。
室山哲也解説委員でした。
次回は「増税後の買い控えは?」というテーマです。
担当は今井純子解説委員です。
ぜひ、ご覧ください。
(テーマ音楽)古代インドで生まれた仏教。
そのうねりはガンダーラを超えシルクロード中国を経てアジア全体に仏像世界を花開かせました。
日本にたどりついたほとけたちはどのようにして生まれ育まれ心と形を築き上げてきたのでしょうか?仏像のなぞを解きほぐす「ほとけの履歴書」。
開講です。
天平の面影を今に伝える奈良・興福寺。
藤原氏の氏寺です。
2年前彫刻家の籔内佐斗司さんと篠原ともえさんが訪れました。
2人が拝観したのは国宝「阿修羅像」。
奈良時代の仏像です。
(篠原)わっここにいらっしゃったんですね。
おててがすごい細いのが不思議ですよね。
すごく体も華奢な感じがしてはかない感じもするんだけど何かこう伝わってくるメッセージは強いっていう…。
だからなんか勇気をもらえるような感じがします。
(籔内)私は夏目雅子さんって昔から言い続けてるんだけどね。
おめめの辺り似てますね。
そう。
わ〜美形ですね。
奈良の興福寺の阿修羅様は優しくて穏やかな表情でしたね。
本当に魅力的なほとけさまですよね。
じゃあ阿修羅さんの履歴を見てみましょう。
はい。
あっ奈良の興福寺の阿修羅様にお姿似てますね。
この絵のモデルは興福寺の阿修羅さんをイメージしたんですがお顔を見てほしいんですけど。
ちょっとキリッと。
口をへの字に曲げてへそ曲がりな顔にしたんです。
えっどうしてですか?なぜかというと阿修羅さんってすごく複雑な履歴を持ってるんですよ。
そしてほんとは怖い顔をしているんです。
うわっ。
その怖い顔をした阿修羅さんを京都の蓮華王院・三十三間堂に拝観に行きましょう。
阿修羅は実は怖かった。
意外な姿を確かめに京都・三十三間堂を訪ねます。
見る者を圧倒する1,000体の仏像…その前を護衛するように国宝「二十八部衆」が立ち並びます。
二十八部衆は仏法を守る護法善神。
いわばお釈様のガードマン。
つわものぞろいのほとけの中に阿修羅の姿があります。
はいこちらです。
えっこちらが?えっ先生全然興福寺の阿修羅像とは…。
そう。
え〜でも目もむいてクワッとこう少し迫力があるというか…。
でもお顔が3つあるし手は6本ある。
鎌倉時代に造られた「二十八部衆」の一つ…興福寺の像とは似ても似つかぬ恐ろしい顔つきをしています。
なぜ全く異なる表情の阿修羅像が存在するのでしょうか?そもそも…そのなぞに「ほとけの履歴書」から迫ります。
ともえちゃん六道輪廻って覚えてる?はい覚えてます。
何がありました?「天部」「人間」「修羅」「畜生」「餓鬼」「地獄」の6つの世界ですね。
そうです。
ここを見て下さい。
阿修羅さんの所属は修羅界になってます。
じゃあ上から3番目。
人間界の下ですね。
人は亡くなったあと生前の行いによって6つの境涯のどこかに生まれ変わるというインド特有の生命観です。
その一つ修羅界。
ここに阿修羅は属しています。
京都・北野天満宮の由来を記した…ここに平安時代の僧日蔵上人が見たという修羅界の様子が描かれています。
そこは争いの絶えないまさに修羅の境涯。
阿修羅は修羅界の盟主として戦いに明け暮れていました。
6本の手をもつ阿修羅は太陽や月を思いのままに操り日食や月食を起こす事までできたといいます。
しかしどうしても勝つ事ができません。
相手が戦いの神帝釈天だったのです。
白い象にまたがって軍勢を指揮し果敢に戦う帝釈天。
なぜ阿修羅は帝釈天と戦わなければならなかったのでしょうか?そのなぞを解くカギが阿修羅の意外な履歴の中にありました。
この職歴を見て下さい。
元・古代イランのゾロアスター教…中国では「拝火教」とか言われましたけどその最高神であった。
紀元前からイラン高原を中心に信仰を集めていた古代宗教ゾロアスター教。
ササン朝ペルシャの時代には国教として栄えました。
ゾロアスター教は光を善の象徴と考える宗教です。
太陽や火を崇拝する事から「拝火教」とも呼ばれていました。
その最高神こそが阿修羅の元の姿善なる神アフラマズダーです。
頭には王冠をかぶり大きく翼を広げた姿で表されました。
イラン高原で栄えたゾロアスター教はインド周辺にも進出していきます。
しかし古代インドでは古くからバラモン教が信仰されていました。
バラモン教はアーリア人の宗教がインド先住民の宗教を吸収しながら成立したものです。
そしてバラモン教がインドを支配していた時にゾロアスター教は恐らく後から入ってきたんだと思う。
そこで何かの争い事があったんじゃないかなと私は思ってる。
それでバラモン教の戦いの神であるインドラと阿修羅との戦いの物語が生まれていった。
バラモン教にはインドラという戦いの神がいました。
このインドラこそ後の帝釈天。
ゾロアスター教の「アフラマズダー」こと阿修羅とバラモン教の戦いの神「インドラ」こと帝釈天。
両者は古代インドを舞台に戦いを繰り広げていたのです。
そんな戦いの遍歴を持つ阿修羅。
この怖い顔には阿修羅の猛々しい一面が表れていたのです。
そしていよいよ釈が登場します。
争いを続けていたアフラマズダーとインドラは仏教に取り込まれてほとけの護法善神となったのです。
お釈様の宗教が大乗仏教になる時にバラモン教の神々が仏教に入ってくる。
その時にバラモン教の神々と戦っていた悪いゾロアスター教の神々が今度は修羅界として入ってくる。
阿修羅と帝釈天は六道輪廻の中に位置づけられます。
バラモン教出身の帝釈天はいち早く仏教に取り込まれたため天界へ。
一方仏教やバラモン教に敵対していたゾロアスター教出身の阿修羅は修羅界に取り込まれました。
こうして阿修羅も帝釈天も大乗仏教の大きな波に乗って日本へと伝わったのです。
あのね「asura」の最初の「asu」というのは「東」っていう意味なの。
それはこの地域の東の方にあったから。
へえ〜。
それが阿修羅様の…。
「アジア」ってどういう字?え!?「アジア」って…。
「asia」の「as」と阿修羅の「asu」は恐らく語源は一緒だと思います。
阿修羅様から来ていた…。
「東」っていう意味なのね。
だから阿修羅は東の方から太陽やお月様を運び出すから持ってるわけ。
へえ〜!でもこれだけの戦いの経歴を経てどうして奈良の興福寺の阿修羅様はあんなに穏やかな顔をされてるんですか?それはなぜか。
その理由を探して興福寺へ行ってみましょう。
はい!2年ぶりの拝観です。
懐かしいでしょ?懐かしいですね。
うわ〜!八部衆が並んでおられる。
この中に阿修羅の姿があります。
阿修羅様。
ねえやっぱりね。
魅力的なお像ですよね。
どこか幼さも感じる阿修羅像だなと思うんですけどどうして三十三間堂の阿修羅とはこんなに違ったお顔だちなんですか?結局三十三間堂は護法善神になった…法を守るために強い威嚇するような顔になってるわけだね。
こちらはお釈様の周りに集まってきた八部衆としての阿修羅さんなのね。
だから今はお釈様の前だからとっても穏やかな顔をしてらっしゃる…。
絶えず争いを繰り返してきた阿修羅は釈の説法に触れて改心します。
穏やかな顔には心が静まった阿修羅の姿が表現されていたのです。
穏やかな表情の陰にはもう一つ理由があると籔内さんは言います。
先生興福寺の阿修羅は少し子供のような幼さが表情にありますよね。
お造りになったのは聖武天皇のお后光明皇后なんだけど聖武天皇と光明皇后は基王っていうお子さんがいらしたんだけど赤ちゃんの時に亡くしてらっしゃる。
あっそうなんですね。
私のこれは勝手な想像ですけど基王の…亡くした男の子の面影を込められたんではないかなというふうに思っています。
どちらかって言うと女性的あるいは母親的なお母さんのような目で見たほとけさまという感じが私はしていますよ。
じゃその光明皇后のお気持ちがこの阿修羅に宿ってるっていう…。
じゃないかな。
それは阿修羅様のお顔がやわらかくなっている大きな理由の一つですね。
阿修羅は仏法を守る護法善神八部衆の一員。
八部衆は一体どこからやって来たのでしょうか?ここにねこういうお経があります。
「妙法蓮華経」。
いわゆる「法華経」と言われるものですね。
この中には観音さんの三十三変化とかそういう非常にドラマチックなお話がたくさん入っている有名なお経なんですけどその中に八部衆が出てくるんです。
お釈様のもとに比丘や比丘尼があるいは優婆塞優婆夷。
これ人ですね。
人が現れてそしてその他に「天龍」「夜叉」「乾闥婆」「阿修羅」「迦楼羅」「緊那羅」「摩羅伽」「人非人」と書いてあるね。
これは「人ならぬ人」。
法華経に記されているのは八部衆の面々が釈の説法を聞きに集まった時の様子。
八部衆は「人にあらぬ者」として「人間とは一線を画す存在」と紹介されています。
「人ならぬ人」そんな独特の姿が興福寺「八部衆」それぞれに見る事ができます。
こちらは一角獣。
ここに角が1本ある。
あっほんとですね!一見人間のように見えますが…。
額には第3の目。
頭には角。
神のような獣のような不思議な気配を漂わせます。
あっちは鳥。
鳥?鳥?そうガルーダ。
「迦楼羅」はガルーダですね。
顔は鳥そのもの。
迦楼羅像はインド神話に登場する獰猛な鳥ガルーダがルーツです。
怖い。
鳩槃茶さん。
八部衆で最も恐ろしい顔をした鳩槃荼像。
かつては夜叉として悪事を働き人間を恐怖に陥れていました。
一転して少年のようなあどけない表情の沙羯羅像。
しかしよく見ると体に巻きつけている長いものは蛇。
元は古代インドで信仰されていた蛇神と言われています。
個性的な八部衆。
実は釈が悟りを開く過程で重要な役割を担います。
これを見ましょう。
紙芝居です。
お釈様が苦行を終えて瞑想しておられる。
いろんな心の中の闇と闘っているわけですね。
若くして「生・老・病・死」の苦しみに悩んでいた釈は王子の地位を捨てて修行者となり菩提樹の下で座禅瞑想します。
しかしその時釈の心の中は大変な事になっていました。
さあここ出てきました。
はいこれは?これは心の闇です。
わっ敵が…。
あっこれ!阿修羅。
迦楼羅。
それから畜生がいるでしょ。
八部衆にも出てきました。
それから餓鬼。
ええ〜!いっぱい敵が…。
心の中で…お釈様はこの瞑想をする事でこういう連中と闘ってそして彼らを調伏するわけ。
自分の味方にするわけです。
え〜すごく手ごわそうですね。
「降魔成道」と呼ばれる有名なエピソードです。
釈は心の闇に降りてきた魔物を調伏し見事悟りを開きます。
この時仏敵として登場したのが八部衆。
悪魔や夜叉として現れ釈の心の中で瞑想の邪魔をしていたのです。
そして最後に…。
あ〜!悟りを…。
「そうやったんか!」と。
「六道を解脱するという事はこういう事だったのか」。
「この世のありようというのはこういう事だったんだ」という事をお釈様は大悟されるわけですよね。
じゃあ八部衆がなかったらもしかしてグレードアップできなかったかもしれない。
降魔成道の結果この世の真理を悟った釈。
大いなる物語の影に八部衆の存在があったのです。
私いつも思うんですけど天部の神々も護法善神修羅道の神々も護法善神。
どっちも幕府で言えば大名みたいなものだ。
だけど最初から仏法を守ってきた天部の神々…梵天帝釈以下のね。
これはもともとが早くからお釈様仏法を守るための神になったからまあ江戸時代の大名で言えば親藩・譜代の大名だ。
だけど修羅道の八部衆は実はむかしは仏法に逆らっていた。
あるいはバラモン教の神々天部の神々と戦っていた前歴があるわけだ。
そうですねやんちゃでした。
だからこれは江戸時代の大名で言えば外様の大名みたいなもんじゃないかと。
まあそんな例えもできるかなと思います。
阿修羅は2,500年を超える長い旅路の中でさまざまに姿を変えてきました。
ある時はゾロアスター教の最高神アフラマズダー。
またある時は闘争心をあらわにしたほとけのために戦う護法善神。
そしてまたある時は私たちを魅了する愁いのある優しい表情。
その全てを抱えた存在が阿修羅なのです。
でも全ての経験が全部仏教に生かされている感じもありますね。
やっぱりね平たんな道を歩んできた人よりはいろいろ苦労してきた人の魅力ってのがあるね。
わ〜。
だから私たち何か阿修羅様ってドキドキするような気持ちになれるんでしょうかね。
そうかもしれませんね。
今回の内容はこちらのテキストに詳しく紹介されています。
どうぞご参考になさって下さい。
今後の放送予定も掲載されています。
(テーマ音楽)2014/04/16(水) 10:15〜10:40
NHK総合1・神戸
趣味Do楽 籔内佐斗司流ほとけの履歴書〜仏像のなぞを解きほぐす第3回▽阿修羅[解][字]
仏像のなぞを解く「ほとけの履歴書」。第3回は大人気の阿修羅像のなぞ。興福寺像はやさしい顔なのに、なぜ三十三間堂の阿修羅は怒った顔をしているのだろうか?
詳細情報
番組内容
仏像のなぞを解くシリーズ「ほとけの履歴書」。第3回は大人気の阿修羅像のなぞに迫る。有名な興福寺国宝館の阿修羅像はやさしい顔なのに、なぜ三十三間堂の阿修羅は怒った顔なのか。背景に過去の歴史の痕跡があった。古代インドのバラモン教、古代イランのゾロアスター教と仏教との関係を詳しくひも解きながら、籔内さんが阿修羅像成立のなぞを推理する。
出演者
【出演】篠原ともえ,【講師】彫刻家・東京藝術大学教授…籔内佐斗司,【語り】徳田章
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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日本語(解説)
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