日本の話芸 落語「壺算」 2014.04.19

中川さんどうもありがとうございました。
ありがとうございます。
ありがとうございました。
明日はご覧のテーマです。
是非ご覧下さい。

(テーマ音楽)
(出囃子)
(拍手)
(拍手)
(春風亭昇太)どうもありがとうございます。
というような訳でして今日はこちらのほうで落語を聞いて頂くというそんなビッグなイベントに参加して頂きまして誠にありがとうございます。
長い事落語家やらせて頂いてありがたいですよね。
という事はまぁ結構長いこと生きてる訳で長いこと生きてるとすごいですねいろんな事がありますよね。
オリンピックがねまた日本に来るというのがすごいですね何だか知らないけど。
そんな国なかなかないでしょ?だって冬季オリンピック2回やってるんですよ?で前の東京オリンピックがあってもう一遍東京にオリンピックが来るって次来たら4回目ですよオリンピック。
すごい国ですよね。
一番最初のオリンピック東京オリンピックね私ギリギリ覚えておりました。
ええ。
幼稚園のね年長さんだったんです。
(笑い)一番覚えてるのがね新幹線です。
新幹線…。
やっぱりオリンピックというのはインフラ整備されますからだからそういうね新幹線が通ったりなんかするんですよね。
あれも東京オリンピックに合わせて東京オリンピックの直前にあれ開通したんですよね。
私生まれが静岡県でございましてでそこで生まれましたので当然私の町にもね新幹線の線路が通ったんですけどすごかったですね何もない田んぼの所にコンクリートの塊がウワ〜ッ。
ええ?開通した日に見に行ったんですよ。
乗った訳じゃないんですよ。
(笑い)見に行ったのお父さん帰ってきてからねお父さんとお兄ちゃんと僕3人でもって大体1.5kmぐらい先にある新幹線のね線路の所にズ〜ッとこう歩いていって。
もうお父さん帰ってきたあとですから夜でした。
暗くなってましたよ。
で家の一家だけじゃないんですよ。
いろんな人が新幹線見に来てるんですよ。
そうすると向こうのほうにいたお兄さんが僕らに向かって「新幹線来た」つったんです。
ええ。
ウワ〜ッて見たらもうすごかったですよ。
今まで見た事もないような速さの電車がですよパンタグラフにまぁ火花バチバチいわせながら目の前をウワ〜ッ。
「おっウワ〜ッ」。
あの日の運転士さんうれしかったと思いますよ。
うん。
うちのね幼稚園にテレビが来たんですよ。
こりゃ強烈に覚えてますねテレビ。
幼稚園の園児にね発表があったんです。
10日ぐらい前だったと記憶してますよええ。
「うちの幼稚園にテレビが来ますから」。
「ウワ〜ッ」って感じですよ。
ええ。
もうそのころのテレビっていうのは今と身分が全然違いますからね。
(笑い)軽トラックの後ろにええテレビを何台も積んだ町の電気屋さんでしょうこう来たんですよ。
みんなで「ウワ〜ッ」大歓迎ですよ。
電気屋さんもうれしかったと思いますよ。
電気屋さんがこうねテレビを降ろす。
なんか段ボールみたいなのにくるまわれたやつにねみんなで寄って「ワア〜ッ」触ってねそれで幼稚園の各部屋に設置するんですがね当時のテレビは偉かったから幼稚園児が直接触るそんな権利なんかないんですよ。
園児が絶対触れないような高い所に設置してでしかもね今みたいにむき出しの状態じゃないんですよね。
昔のテレビは偉かったから。
まずこうカバーがあるんですよ。
カバーったって安っぽいカバーじゃないですよ。
もう布の端っこの所にモールがムニャムニャムニャと付いてる。
軍楽隊の肩みたいなそんな感じですよ。
(笑い)それをペランてめくってもまだテレビには会う事はできない訳です。
その向こう側には観音開きの戸が待ってる訳です。
昔のテレビは仏壇ぐらい偉かったんです。
これをビ〜ッと開けてね先生がスイッチ入れても今みたいに安っぽく点きませんよええ?もったいつけてくれる訳で真空管が温まるまでね点かないんですよ。
それで中心に白い点がチョンと点いてねそれがモニャモニャモニャモニャモニャモニャってようやく画になる訳です。
まるで大劇場の緞帳が開くかのようですよ。
すばらしいですよね。
ええ。
家のね…。
当時電化製品がどんどん入った時代なので家に洗濯機が来た日も覚えてます。
あれもよかったですね。
家のお母さんがね「雄二」。
本名雄二っていうんです。
「雄二。
今日家に洗濯機が来るから早く帰ってきなさい」ってこう言ったんです。
(笑い)それぐらい洗濯機は偉かったんです。
僕も勉強しながら気が気じゃありませんでした。
「どんな洗濯機が来るんだろう?」。
で授業が終わってねランドセルに教材詰めて帰ろうとしたらいつものように友達が遊びに誘う訳ですよ。
「雄ちゃん。
遊びに行こう」。
「今日は駄目」。
「どうして?」。
「今日家に洗濯機が来るから」。
「エエ〜ッ!いいな〜俺たちも見に行っていい?」。
「来いよ〜」かなんか言って友達を5〜6人引き連れて洗濯機見に行く訳ですよ。
家のお母さんもうれしかったんでしょう。
洗濯機の脇でこう仁王立ちしてました。
で「これから洗濯するから」。
子供が帰ってくるまで洗濯しないで待ってたんですよ。
(笑い)電気屋さんにつけてもらったんでしょうか真新しいホース。
水色だったですよ。
それをつけてね「じゃあこれから水出すから」つってね今みたいにアタッチメントとかない時代なんですね?この水色のホースを蛇口にグ〜ッてこうつけるんですが蛇口のほうもそんなホースをつけられる心の準備してない訳ですよ。
(笑い)先に行くにしたがって細い円錐形なんですよ。
ここにお母さんがホースを無理やりグリグリグリグリッ。
ホースも「もうこれ以上入りません」みたいな感じですよ。
「水出すから」。
それでねひねったらもう水色のホースの先から水がシャ〜ッって出て「ワ〜ッ出た出た」と思ったら急に止まっちゃったりなんかして。
振り向いたらホースがとれて水がジャ〜ッと出てる。
(笑い)それからまた走ってってねで水一遍止めてまたギュ〜ッとやる。
水出して。
今みたいに自動的に止めてくれませんからお母さんが内側の線を指さして「ここまでだから」。
でジ〜ッとこう見てる訳ですよ。
でいっぱいになったら「お母さん。
いっぱいになった」ってお母さんバ〜ッと走ってで水を止めてで戻ってきてそこに洗剤とそれから洗濯物を入れてボタンバンって押した時はもう忘れもしません。
もう四角の…どのぐらい?このぐらいですよこのぐらいこのぐらい。
(笑い)このぐらいの洗濯機の中で洗濯物が音を立ててギュ〜ッ。
友達と一緒に「ウワ〜ッ」。
洗濯が終わったら今度はすすぎですが今みたいに自動的にやってくれませんから脇についてるホースをこう倒す訳ですよねすると重力にしたがって水がジョボジョボジョボジョボジョボジョボ出ていく訳です。
で出きったらホースを戻してお母さん走ってって水をパ〜ッとひねってで水でいっぱいになったら戻って栓閉めて。
でボタンバンて押したらバ〜ッ。
こうやってホースを倒して水をジャボジャボと出してホースを戻して水をいっぱい入れていっぱいになるとボタンを押してガ〜ッ。
これを数回繰り返す訳ですね。
で洗濯終わってビショビショになった洗濯物を「お母さんどうするのかな?」と思ったらお母さんこれをわし掴みにして洗濯機の脇に付いてるローラーとローラーの間にこれを挟み込んでハンドルをグルグルグルグルって回したらあの「トムとジェリー」のギャグみたいに…。
(笑い)ペシャンコになった洗濯物が洗濯機の中からニュロニョロニョロニョロってこう出てきて「許して下さ〜いもうこれ以上汚れませんから」みたいな感じですよ。
これをお母さんが掴んでねパ〜ンパンってやってで物干し竿の所へパチンパチンてつけて「あ〜楽になった」ってどこが楽だったんでしょう。
(笑い)でも楽だったんですよね。
それまではお母さんたちこうやってたんですから。
電化製品は何がすばらしいかっつうと日本の女性に時間を与えたのがすばらしいんですよ。
これだけ見てもね日本ていう国が豊かでいい国だっていう事ですよね。
ええ。
落語をやってられるという事もこれもそうですよね〜。
本当にもう世界中にないんですからこんな芸能。
まぁ演劇のカテゴリーの一つだと思うんですが一人芝居ってのがありますけどあれ一人称ですからね。
落語は違うんですよ。
たった一人でもって座った状態で複数を演じる事ができるというのがねすばらしいですよね。
ええ。
誰が考えたんだか分からないんですよ。
でもいまだに伝わっていて今もね脈々と落語という芸能があるというのがね先輩たちのおかげですよええ。
ありがたいもんだななんて思いますけどね。
落語そのものがそうですよね何かいろんな事を教えてくれる先輩が登場すると落語のほうも幕開けという事になったりする訳なんですけどね。
「兄貴兄貴」。
「どうしたんだい?」。
「今俺の家で大変な事が起きているんだよ」。
「大変な事?どうしたんだい?」。
「今俺の家ほら甕あるだろう?それでね水を張っといたら朝になったらないんだよ」。
(笑い)「それ漏ってんじゃねえのか?」。
「あっ見てたのか?」。
「いや。
見てた訳じゃないけど話聞いたら分かるだろ。
それでどうしたんだ?」。
「でね家のかみさんがね甕買ってこいってそういうふうに言うんだけど俺一人で行っちゃ駄目だってそう言うんだよ。
何でだって聞いたらね買い物っていうのは人がいいと駄目らしいんだよフフフ。
向こうの言いなりになっちゃうからハハハ。
悪いぐらいでちょうどいいらしいんだけれども兄貴は聞いたら悪いらしいな。
悪らしいじゃねえかよええ?だからついてってくれよ」。
「お前誰の前で喋ってんだ?お前。
ええ?まぁまぁお前のかみさんの言うとおりだよええ?買い物ってのは言いなりじゃ駄目。
ここを使わねえといけないんだまけてもらおうと思ったらな。
でねどんな甕買うんだ?」。
「今までね一荷の甕って小さい甕使ってたんで今度ね二荷の甕買うんだな」。
「二荷の大きい甕分かった。
じゃあねそこに天秤棒と縄あるだろ?それ持ってついてこいええ?エヘヘ。
お前よぅ向こうに行ってねまけてほしいなと思ったらどうする?」。
「そうだな俺ねまけてほしいなと思ったらまけてくれって頼むな」。
「なるほどね。
じゃあ俺が店の者だと思って頼んでみろ」。
「分かった。
うん。
まけてくれよ」。
(笑い)「まけてくれよよぅまけてくれ」。
「いや。
まかりません」。
「まけてくれよ〜まけてくれ」。
「まかりません」。
「まけてくれよ〜まけてくれまけて下さいまけてくれ」。
「まかりません」。
「まけてくれよ〜ホホホホまけてくれよ〜まけて」。
「袖を引っぱるんじゃねえ」。
「まけて」。
「くっつくなよ」。
「まけて」。
「何でくっつく…?うっとうしいな往来で」。
「まけてく…」。
(笑い)「離れろ」。
「まけて」。
「首をなめるんじゃない。
ちょっと離れろ」。
(笑い)「犬か?お前は離れ…離れろこの野郎お前はうっとうしいなお前は。
何だ?お前は。
お前それ使えるぞそれお前」。
(笑い)「俺がそれやれったら向こうでそれやれ。
よしよしこれはいい材料ができた。
え〜とねこの辺に店がたくさん並んでいるの。
ええ?どこでも構わないの?あ〜そう。
じゃあね俺が…。
あっああいう店がいいや。
ええ?見ろよ。
ほら店の親父がね暖簾かき分けて往来キョロキョロ見てんだろ?ああいう所はまだ客は入っていないああいう所がいいんだヘヘヘ。
え〜とねおうごめんよ」。
「ええ。
ありがとうございますいらっしゃいませ」。
「うん。
俺たちね甕を探してんだけど」。
「そうでございますか。
甕でしたらこちらのほうに並んでおりますのでよろしいのを」。
「あ〜そうか。
あらっ随分並んでるねこれは。
ええ?どれがいい?どれでも構わないの?あ〜そう。
じゃあこれでいいか?ね?おうおうおうおうこの甕これいくらするんだい?」。
「どうもありがとうございます。
あっこちらは一荷の甕でございますな。
またお客様初めてのお客様?ありがとうございます。
初めてのお客様また店がたくさん並んでるのを手前どもの店選んで頂きましてグッと勉強させて頂きます」。
「あ〜そうかうれしいねこれええ?勉強してくれるんだってさ。
いくらになるんだい?」。
「グッと勉強させて頂きまして一荷の甕でございますからこれね3円50銭でございます」。
「ハア〜そうかい。
ええ?でねものは相談なんだけども俺たちがねこの店が初めてじゃなくってで店も並んでなくて店もお前の所一軒だけ。
こういった場合はいくらになるんだい?」。
(笑い)「アハッあっお客様が初めてではなくて常連様へえで店が並んでいなくて手前ども一軒だけ?そういった場合はもうね値段が違うんでございます。
ガラッと変わるんでございます」。
「いくらになるんだい?」。
「そういった場合はもう3円50銭ではございませんええった場合はもう変わりますええ。
った場合はもう3円50銭じゃないんでございます。
あっそう…あ〜そういった場合はそうなんですねあ〜あっしょ…しょ…3円50せ〜んて」。
「同じじゃねえかお前」。
(笑い)「言い方が違うだけじゃねえかそれじゃお前。
いや実はこれね俺の買い物じゃねえの。
この野郎の買い物でねこの野郎のかみさんに俺はついてってくれって頼まれた。
だからね言い値で買う訳にいかねえんだまけてくれねえか」。
「あ〜そうでございますかこちらのお客様。
どうもありがとうございます。
でどのぐらいまけたらよろしいんでございますか?」。
「そうだな俺はね半端な額は大嫌いなの。
だからね3円50銭のその50これト〜ンと切ろうじゃねえかええ?え〜3円でどうだい?」。
「いや。
お客様申し訳ございません。
いや〜これねこの商売というのは大変に利の薄い商売でございましてこれ3円50銭のところを50銭これ切って3円という訳にはいかないんでございます。
申し訳ございま…」。
「いや。
そんな事言わないでさね?俺はね買い物上手なんて事を言われていて『こんな買い物をしたいんだがどこに行ったらいいだろう?』よく聞かれるんだよ。
そしたらね俺はこれからねお前の所の店の名前どんどん出すよ。
そしたらお前の所にこれから客がどんどんどんどん来るのええ?それで前祝い。
ひとつまけてくれよ」。
「いやいやいやいやいや。
そう言われましてもそれは駄目なんでそれは50銭はまからないんでございますご勘弁を」。
「いやいや。
ね〜じゃあじゃあこの野郎を見ろこの野郎ね?天秤棒と縄持ってんだろ?これ俺たちこれ買ってよぅ小僧に『届けろ』とかそういう生意気な事を言う訳じゃないの。
手前たちで天秤棒に担いでよぅええ?自分たちで持って帰ろうてぇ。
ええ?手間が省けるじゃないか」。
「いやいやいや。
そうはいかないんでございます。
いやそのために小僧がいるんでございまして50銭はもうご勘弁を」。
「いや。
そんな…ね〜?いやいやひとつ頼むよ。
いやいやいやね〜?いや俺の顔を立てると思って」。
「いや。
申し訳ございません。
どなたに言われても駄目なんでございます」。
「いやいや。
どな…どなたに言われても駄目なの?」。
(笑い)「いや。
この野郎のかみさんがね俺についてってくれって訳があるんだよ。
この野郎が頼んだら大変な事になる」。
(笑い)「ね?だからよぅどうだろう?ええ?俺が頼んでるうちにひとつまけてくれよ」。
「いや。
どなたに言われても駄目なんでございます」。
「あっそう?駄目なんだ。
ハア〜ッ」。
(笑い)「俺じゃ駄目なんだってね?じゃあお前から頼みなさい」。
「俺から頼んでいいのか?あ〜そう」。
「まけて下さいまけて下さい」。
「いや。
申し訳ございません。
利の薄い商売でございましてまけられない」。
「まけてまけて下さいまけてくれよ〜まけてまけてくれよ」。
「お客様近づいても駄目なんでございます」。
(笑い)「申し訳ございませんまけら…」。
「まけてくれよまけてくれよ」。
「駄目でございますよ引っぱったら駄目でございます」。
「まけてく…」。
「お客様どうしたんでございます?」。
「まけてく…」。
「ちょっとお客様何でございます?」。
「まけてく…」。
「ちょっとお客様首をなめたら駄目チョッ…」。
(笑い)「離れて離れて離れて離れ…。
あなたこの人つかまえて。
つかまえて…」。
(笑い)「今までいろんなお客様がお見えになりましたがこんな情熱的なお客様は初めてでございます」。
(笑い)「ちょっと待って下さい。
あっちょっと待って下さい。
いやいやや〜いやいやいやだってさぁこれ利の薄い商売でございますから3円50銭を50銭まける…。
チョッチョッちょっと掴んでなきゃ駄目よあなた」。
(笑い)「まけるという訳にはいかないんでございます。
いかないんでございますがまぁもうそんなに言って頂けるんであれば本当は駄目なんでございますよ。
まからないんでございますよ。
でもまぁ今日今日だけでございます。
じゃあ…まぁじゃあじゃあじゃあ分かりました。
これねじゃあこれ3円50銭でございますがじゃあこれじゃあ今日限りじゃあこれ3円で結構でございます」。
「3円でいいの?いいの?いい店入っちゃったね〜。
すまなかったね。
なんだか無理にまけさせたみたいでね」。
(笑い)「ね〜じゃあいいよここに3円置く。
うん。
もういいそんな手間なんか取らせないよ。
もうあとは自分たちでやるんだから。
いいかい?いいかい?しっかりと結んで。
ヨイショヨイショ。
はいどうもありがとうよ。
よしよしよし。
これでいいや」。
「ちょっと待ってくれよ兄貴俺が欲しいのはこれ二荷の甕なんだよ。
これ一荷の甕で小せえじゃねえか」。
「いいんだよ。
これが二荷になるんだから」。
「えっ?」。
(笑い)「これどうやって?」。
「いい。
ついてこいついてこい。
この角曲がれ。
よしよしエヘヘ。
ええ?もう一つ曲がってねええ?もう一つ曲がるってぇとね?店の裏をねグルッと回って元の所へ出るとこういう訳だ。
ハイハイ。
おうごめんよ」。
「ウワ〜ッ」。
(笑い)「先ほどのお客様お忘れ物でございますか?」。
「忘れ物なんて事見ると俺たちの顔覚えてくれたのかい?」。
「それはもうそれはもう忘れられませんそれは」。
(笑い)「先ほどあんな事があったばかりでございますから」。
「あ〜そうかい。
じゃあ話が早い実はねこの野郎がまぬけな野郎でねこの野郎が本当に欲しいのは二荷の甕だったんだ。
ね?間違えてこの野郎ねええ?一荷の甕買っちゃったの。
間違えて買ったんだよ」。
「あ〜お間違えでございますか。
いやいやお間違えどなたにもございますよ。
二荷の甕でしたらねこちらのほうに並んでおりますんでよろしいのを」。
「あ〜そうかい。
あらっ随分並んでこれ大きいねこれ。
ええ?倍入るの?アハハ。
これ間違えちゃいけねえやね〜。
こんな一荷の甕なんか買ったらかみさんに怒られるよ。
おい大きな小言ね?大変だ。
ね〜じゃあねこの…これでいいか?ね?この二荷の甕いくらするんだい?」。
「どうもありがとうございます。
二荷の甕と申しますのが一荷の甕のちょうど倍入りますのでお値段のほうもちょうど倍となっております。
ええ」。
「え〜…」。
(笑い)「アア〜ッいやいやいや」。
「いや。
お前言ったじゃねえかええ?という事は二荷の甕6円だ」。
「6円じゃないんでございます。
違うんです」。
「だってお前言ったじゃねえか。
倍なんだろう?さっき俺たち一荷の甕これね3円で買ったのね?その倍だから6円だ」。
「いやいや。
違う違うんでございます。
一荷の甕は本当はこれは3円50銭なんでございます。
だからその倍は7円で」。
「いや。
だってお前が一荷の甕さっきね3円で売ってくれたんだからその倍だからよぅ6円でいいじゃん」。
「6円とは違うんでございます。
この方がこうやって来たから」。
(笑い)「いやいや。
そりゃだ…」。
「だっていいじゃねえかよ。
ええ?まけてくれ」。
「いやいや。
そういう訳にはいかないんでございます。
これさっき50銭まけるんでも大変な思いしたんでございますよ。
1円はまからないんでございます」。
「いや。
まからないってお前そんな」。
(笑い)「ええ?まけてくれよお前俺がこの手を離さないうちに」。
「ちょっと待って下さい。
ちょっとま…」。
(笑い)「離しちゃ駄目でございますよ。
ア〜ッハア〜ッこういう商売やっておりますと間日という日があるんです」。
(笑い)「何やっても駄目な日があるんでございます。
今日がその日という事にして小僧が粗相をして甕を割ったと思えば何という事はない。
ハア〜ッそのかわりあなたは買い物上手なんて事を言われていろんな方から店聞かれるそうでございますがもう家の店の名前出さないで下さい」。
(笑い)「それでお願い致します。
いや〜本当は駄目なんでございますよ。
1円まからないんでございます。
利の薄い商売でございますから。
じゃあじゃあじゃあじゃあ分かりました。
もう今日限りでございます。
二荷の甕本当は7円でございますよね?じゃあもう6円でじゃあ結構でございます」。
「6円でいいの?いいの?いい店入っちゃったね〜。
え〜でねもう一つ頼みてえ事があるんだけれども」。
「今度は何でございますか?」。
「いやねこの野郎の家は狭いんだよ。
だからねこの一荷の甕と二荷の甕を並べて使うって訳にはこれはもういかねえんだね〜。
どうなんだろうねこの一荷の甕なんだけどね?引き取ってもらうって訳にはいかねえのかな?」。
「いやいや。
そりゃよろしゅうございますよ。
ええ。
これねどこか他所の店で買ってこれを引き取るこれ駄目でございます。
ね?手前どもの店で買って頂きましても使ってから何日もしてからこれを引き取る。
これも駄目ございます。
ええ。
先ほどお買いになってまだ一度も使っておりません。
お間違いでございますから引き取らさせて頂きますが」。
「ええ?引き取ってくれるの?引き取…。
いい店入っちゃったね〜そうか。
でいくらぐらいで引き取ってもらえるもんなんだろうね?」。
(笑い)「いくらと申されましても先ほどこれ一荷の甕3円で買って頂いたものでございますから3円で引き取らさせて頂きますが」。
「3円で?3円で引き取ってくれるの?3円…。
いい店入ったね〜。
こりゃうれしいや。
ええ?でさっき3円渡してあった」。
「ええ。
手つかずでねまだこちらに置いてあるんでございます。
先ほど頂いた3円でございます」。
「あ〜そうかい。
で一荷の甕3円で引き取ってくれるんだろ?」。
「そうでございます」。
「じゃあ3円と3円で6円になるから二荷の甕持って帰っていいんだな?」。
(笑い)「うん?えっ?何でございますか?」。
「だからよぅ3円渡してやった」。
「手つかずでここに置いてあるんでございます」。
「で一荷の甕3円で引き取るんだろう?」。
「そうでございます」。
「だから3円と3円が6円になるから二荷の甕は持って帰っていいんだな?」。
(笑い)「この3円は頂いたんでございます。
一荷の甕引き取るんでございますから3円で引き取るんでございますから私これへ3円出すんでございます。
3円と3円…。
6円になりますな」。
「なるだろう?お前」。
(笑い)「いいいいあとこっちでやるからもういいのいいの。
いいかい?しっかり。
ヨイショッヨイショっと。
はいはい。
エヘヘヘ。
じゃあどうもありがとうよ。
よしよしよしえ〜これでいいや」。
「兄貴兄貴兄貴。
俺よく分からねえ」。
「分からなくたっていいんだよ急がなきゃいけねえんだから」。
「お客様〜。
勘定が合わない」。
「そら見ろお前だから急げっつったんじゃねえか」。
「こんなの持って逃げきれる訳ねえんだから」。
「どうしたんだよ?」。
「お客様。
それは二荷の甕でございます。
6円でお売りしたんでございます」。
「そうだよ」。
「そうだよってここに3円しかないんでございます」。
「何言ってんだよ。
ええ?お前だって一荷の甕3円で引き取るんだろ?お前この3円しか見てねえからそういう事になるんだよ。
この3円と引き取る一荷の甕を一緒に見るの」。
(笑い)「あっア〜ア〜ッ申し訳ございません」。
(笑い)「お金に夢中になっておりましてこの3円しか見ておりま…」。
「いいいいそんな間違い誰にでもあるんだから。
よしよし。
いいかい?ヨイショっと。
はいどうもありがとうよ。
よしよし急げ急げ急げ急げ」。
「お客様〜。
勘定が合わない」。
「しょうがねえな〜お前は。
何なんだよお前は。
ええ?俺たちが店を出る度にええ?暖簾かき分けて『勘定が合わねえ勘定が合わねえ』って周りの奴がおかしく思うだろ。
どうしたんだい?」。
「いや3…」。
「だから3円と3円6円…」。
「分かってるんでございます。
3円と3円6円は分かってるんでございますけどお客様何かこの辺がもう…」。
(笑い)「もや…」。
「だから3円…俺たち3円で買ってね?一荷の甕をそれをお前が引き取るんだろ?で3円渡してやったんだから3円3円6円」。
「それ分かってるんだ。
3円と3円足しゃ6円分かってるんでございますが何か…」。
「何…?じゃあ算盤出せ」。
「いや。
これは算盤を出すような計算では…」。
「何を生意気な事言ってんだ。
お前が分からねえから算盤出せってぇの」。
「ええ。
分かりましたええ算盤出しました」。
「まず3円入れろ」。
「その3円はどの3円でございますか?」。
(笑い)「この3円でございますか?これでございますか?これは気持ちよく入るんでございます。
入れました」。
「で一荷の甕3円で引き取るんだろう?引き取るってどういう事なんだよ?俺たちが甕持ってきたんだからお前がここへ3円出すんだろ?その3円入れろよ」。
(笑い)「引き取るというのはそういう事でございます。
お客様は一荷の甕持ってきた私はこれへ3円出す。
アア〜ッ」。
(笑い)「アア〜ッアッアア〜ッアア〜ッア〜ア〜ア〜ア〜ッ6円になってしまった」。
「何やってだよお前」。
(笑い)「それでいいんだ」。
「ちょっと待って下さい。
これ私私一人でやらせて下さいこれ一人でやらせて下さい。
3円これはいい。
でこの一荷の甕3円で引き取る。
引き取るは来たから出す。
さ3円あっア〜ッあの…。
なぜ引き取ったんだ」。
(笑い)「なぜ引き取った。
3円3円にろ…3円で6。
で…。
あっはいはいあっはい。
いらっしゃいまし。
何でございますか?あっ土瓶でございますか?ありがとうございます。
土瓶でしたらそちらのほうに並んでおりますのでええよろしいのを。
ありがとうございます。
ええ。
え〜と3円と3…。
はいはい。
どちらの土瓶で?あっそちら?そちらちょうど1円となっておりますよろしくお願い致します。
ありがとうございます。
3円と…。
アア〜ッ7円になった。
違う違う違う」。
(笑い)「はいはい。
いえ。
それは1円でございます。
いや。
申し訳ございませんそれ1円なんでございます。
いや。
まかりませんまかりません」。
(笑い)「お客様もう少し早く来て頂いたらまけたかもしれませんが」。
(笑い)「家はもうまけたり引き取ったりするのやめたんでございます。
言い値でお願い致します。
ちょっと…。
だからそれは1円でございます。
まけてほしかったらどこか他所の店行けばいいでしょ。
同じの売ってますから他所へ行って下さいもう…。
だから1円でございますもう。
小僧店を閉めなさいもうこれ。
3円と3円で…」。
「だからさぁ…」。
「あなた何か言わないで下さい。
あなたが言うと…。
3円と…。
12円になってしまったこれ」。
(笑い)「3円と3円…」。
「だから…」。
「ちょっとあなたが何か言っちゃ駄目だって。
3円と3円」。
(笑い)「分かりましたじゃあその二荷の甕持って帰って下さい」。
「これ持って帰っていいかな?」。
「持って帰って構いません。
それからねこの3円が目の前にあるとこの辺がモヤモヤモヤモヤするんでこの3円もお持ち帰りを願います」。
(拍手)
(打ち出し太鼓)2014/04/19(土) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
日本の話芸 落語「壺算」[解][字][再]

落語「壺算」▽春風亭昇太▽第655回東京落語会

詳細情報
番組内容
落語「壺算」▽春風亭昇太▽第655回東京落語会
出演者
【出演】春風亭昇太,古今亭半輔,瀧川鯉○,三遊亭遊松,小口けい,斎須祥子

ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz

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