クローズアップ現代「無月経・疲労骨折…10代女子選手の危機」 2014.04.15

入隊した新人4人が挑戦しました。
おととし開かれた新体操ワールドカップ。
日本のエース選手が突然崩れ落ちました。
太ももの疲労骨折。
実は中学時代から月経に異常があったのです。
2020年、東京オリンピックを目指す10代の女子選手たち。
今、深刻な問題に直面しています。
生理が3か月以上来ない無月経。
さらに問題なのは無月経によって引き起こされる疲労骨折です。
1か所目、2か所目。
北京オリンピックで途中棄権を余儀なくされた土佐礼子さん。
ズキンとして。
実は選手生命を奪われるきっかけは無月経によるたび重なる疲労骨折だったのです。
6年後に東京オリンピックを控えた日本。
そこで活躍できる10代女子選手たちを、どう守り育てていくべきか考えます。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
10代は女性にとって卵巣や子宮が発達する重要な時期です。
また女性にとって10代は生涯の骨の強さがほぼ決まる時期だといわれています。
この重要な時期に女子選手が激しいトレーニングや厳しい体重制限を行い無月経になる選手たちが多く選手たちの生殖機能の発達や骨の強さに影響を及ぼす可能性があります。
3か月以上、生理が来ない状態のことを無月経といいますが無月経になりますと月経に伴って分泌される女性ホルモンが大幅に減ります。
この女性ホルモンがまさに骨の形成に欠かせないもので分泌が大幅に減ることで骨がもろくなり、疲労骨折を招き選手生命が絶たれるなど深刻な事態を引き起こしかねません。
この問題が10代女子選手にどこまで広がっているのか今回、NHKは初めてアンケート調査を全国で行いました。
調査の対象となったのは体重制限が厳しいとされる陸上体操、新体操に加え競技人口が多いバレーボールの強豪校に所属する大学の女子選手417人です。
中学、高校時代を振り返って答えてもらいました。
また現役の高校指導者640人からも回答を得ました。
その結果、10代のときに3か月以上、生理が止まった無月経を経験した選手はご覧のように45%。
この割合は一般女性の少なくとも4倍に上ります。
さらに無月経を経験したと答えた人の3人に1人が疲労骨折をしたことがあると答えています。
過酷なトレーニングや体重制限が女子選手の体にもたらす深刻な影響がスポーツの現場で見過ごされてきた実態が調査から浮かび上がってきました。
高校の陸上選手およそ300人が集まって行われた強化合宿です。
強く吐くんだよ、強く吐くの。
体重の軽いほうが有利といわれる長距離などの種目では体を絞り込む選手が多くいます。
そんな中、無月経に悩む選手も少なくありません。
今まで実態が把握されてこなかった10代女子選手の無月経と疲労骨折の関係。
NHKのアンケート調査からは無月経を経験した選手のうち3人に1人が疲労骨折を起こしていたことが分かりました。
17歳の女子長距離選手です。
高校3年生になっても月経が一度もなく2年間で疲労骨折を3回繰り返してきました。
全国でもトップクラスの強豪校に通うこの選手。
毎日20キロ以上走り体重は41キロを目標に常に減量に励んできました。
疲労骨折の原因は月経がないためだとこの産婦人科で初めて診断されました。
月経に伴って分泌される女性ホルモンは骨の形成に欠かせません。
骨は壊れたり、再生されたりを繰り返し、強度を保っています。
無月経になると女性ホルモンが不足し骨が再生されないためにもろくなってしまうのです。
この状態で激しい運動を続けると負荷に耐えきれず疲労骨折を起こしやすくなるのです。
この選手は1年前から女性ホルモンの投与によって月経を促す治療を受けています。
しかし、いまだ月経は来ていません。
なぜ深刻な事態に至るまで気付くことができないのか。
日々、10代の選手に接している指導者1000人へのアンケートでは無月経と疲労骨折の関係について知らないと答えた人が52%に上りました。
さらに、たとえ知っていても76%の指導者が選手が疲労骨折をしたとき月経について確認していませんでした。
その理由が書かれた記述です。
「全国大会レベルの選手のほとんどが無月経と思われる」。
「生理がなくて当然と考えている」。
無月経による疲労骨折の危険性を周囲が知らなかったために10代で選手生命が絶たれてしまった人がいます。
バレーボール選手だった寺山絵未さん、24歳。
全国大会で優勝争いをする強豪校でセンターを務めチームの中心的役割を担ってきました。
男性の指導者からもっと痩せたら高く跳べると寺山さんはアドバイスを受けたといいます。
その直後から2か月で8キロ減量。
月経が止まってしまいました。
急激に痩せていく娘を間近で見ていた母親もそれが、さらに深刻な事態を招くとは思ってもいませんでした。
指導者にも母親にも気付かれず、練習を続けていた寺山さん。
全国大会を前に足に激痛が走り病院に直行しました。
結果は疲労骨折。
しかし背景にある無月経についてはここでも気付かれることはなくその後も疲労骨折を繰り返しました。
数多くのトップアスリートを診察してきた整形外科の桜庭医師です。
寺山さんのようなケースは決して珍しくないといいます。
夢を諦め今は地元で働く寺山さん。
もっと早く気付いていたら今もバレー選手として活躍できていたのではないかと悔やんでいます。
今夜は婦人科医で、無月経と疲労骨折の問題にお詳しい、筑波大学名誉教授の目崎登さんと、スポーツジャーナリストの増田明美さんにお越しいただいています。
よろしくお願いします。
増田さんは元オリンピック選手として、疲労骨折に苦しまれたお一人でもいらっしゃるんですけど、今、最後の寺山さんに、もし知っていたら、疲労骨折を予防できたかもしれないということば、どのようにお聞きになりました?
私も全く同じことを考えています。
私も10代のときに、約2年半、無月経のときがあったんですね。
でも、それはもう、当然だと思って練習を続けていたんです。
そうしましたら、競技生活の後半のほうでは、足に痛みがあることがすごく多くなりましてね、引退した直後に検査をしたら、足に7か所も疲労骨折があったんですね。
それで、65歳の女性の骨密度、骨密度がそのくらいの量だっていうことを言われて、すごくショックを受けたんです。
でもそれはもう20年も30年も前のことですからね、私のときっていうのは、月経があるようでは、まだまだ練習が足りないっていう、その時代で、今はもっともっとスポーツ医学が発展しているから、こんなことないだろうと思っていたのに、今のVTR見ましたら、なんも変わっていないということにショックを受けました。
生理がなくて当たり前といったような記述もありましたけれども、因果関係、無月経と疲労骨折の因果関係等については、知識はおありでしたか?
いや、なかったんです。
7か所の疲労骨折があったときにも、そのときに28歳でしたけども、初めて疲労骨折ということばを知ったんですね。
ですからすごく無知でした。
寺山さんと同じように、もっともっと、そういう知識があれば、28歳ではなくて、競技生活が長くできたのかもしれないなと思うと残念ですし、すごく反省もしています。
目崎さん、今のNHKの調査で、指導者の方の半数を超える方が、この無月経と疲労骨折の関連について、知らないと答えている。
そして知っていたとしても、76%の人が、その無月経について、月経のことについては選手に尋ねないと。
この指導者の意識ということを見ますと、かなり立ち遅れていませんか?
そうですね。
本来は女性アスリートの健康というと、やはり月経もあってということになるんですけれども、先ほどのビデオにありましたように、競技を高めるために体重減少する。
体重減少の結果、無月経になるんですけれども、この無月経になるというのは、うがった見方をしますと、体重減少、ひどすぎる場合には、人が生きていくための機能としてはぎりぎりだと、そうしますと最初に切り落とされるのは生殖機能ということなので、無月経になってくると思うんですね。
ですから、無月経になるということは、体としては、あまりよくない状況だというふうに考えたほうがいいと思います。
そして、とりわけ10代の女性、まだ、女子選手たちにとってみると、骨への影響、あるいは生殖機能への影響というのも、きちっと受け止めなければならない。
そうですね。
非常に大きな問題でして、10代というのは、骨密度が急激に高まるときですけれども、このときに無月経になる。
いわゆる女性ホルモン、エストロゲンが少ないと、骨密度が増加するどころか、減ってしまうわけですね。
ですから、そのまま競技をしていれば、疲労骨折を起こすでしょうし、また女性ホルモンが少ない状態、ずっと続いてますと、子宮も萎縮しますし、無月経が無治療のまま、ずっといれば、将来的には排卵障害になる、不妊症なども起きてきます。
しかしながら、これ、問題ばかりを申し上げましたけれども、10代のときに見つけて、きちっと治療すれば、そのような問題は起きてきませんので、10代アスリートの無月経は早期発見、早期治療、これが非常に大切だと考えております。
そうすると、いったん骨密度が下がっても、戻るわけですね?
そうですね。
そして、子どもを産めるように、体は回復するということも?
はい、それも当然、期待できます。
ですから、もう諦めたというんではないということになりますね。
先ほどVTRにあった土佐礼子さんも、2人のお子さんをお持ちで、とてもお元気なんですね。
そうですよね。
しかし、10代の女子選手たちの芽を摘まないで、彼女たちの能力をいかに伸ばしていけるのか。
スポーツ大国のアメリカと、そして日本で始まった模索を、続いてご覧いただきましょう。
女性のトップアスリートを数多く輩出しているアメリカ。
1990年代から無月経が疲労骨折を招くことがスポーツ界で広く認識され医師や指導者などの立場を越えた連携が進められてきました。
全米の高校、大学ほとんどの競技の選手が毎年受けている専用の問診票です。
最大の特徴は女性を対象にした月経についての設問があることです。
選手の異変をいち早くつかみ早期の治療に結び付けるのがねらいです。
女性のオリンピック選手を数多く治療してきたナティーブ医師。
この問題の第一人者です。
月経に異常がある選手が見つかると医師やトレーナー栄養士などが情報共有のため集まります。
それぞれの専門知識を生かしどうサポートするか検討します。
一方、日本でも無月経による疲労骨折を防ごうと模索が始まっています。
10代の新体操選手を30年近くにわたって指導してきた橋爪みすずさんです。
かつては選手に厳しい体重制限を課していましたが今は無月経による疲労骨折が起きないよう常に配慮しています。
橋爪さんが意識を大きく変えるきっかけとなったのは2年前。
ロンドンオリンピック直前の国際大会でのアクシデントでした。
日本のエースだった選手が演技中に突然、崩れ落ちました。
太ももの疲労骨折でした。
中学生のときから月経の異常に悩んできたといいます。
このけがで選手生命が絶たれました。
橋爪さんは去年から選手の体に関する詳細なデータを定期的に取っています。
骨密度、筋肉のバランス体脂肪率など、およそ20項目。
選手の体の小さな変化も見逃さないためです。
検査には選手の親にも立ち会ってもらい情報を共有しています。
さらに栄養士を招き無月経を防ぐために有効な食事方法を指導しています。
指導者と家庭が連携することで、けがも減り全国大会で3位になるなどレベルも上がったといいます。
目崎さん、とにかく早く月経の異常を見つけて、そして必要な対策を、いろいろな専門家を交えながら取っていくということの大切さを感じるんですけれども、今、日本は非常に立ち遅れた状況の中で、何から進めなければいけないと思いますか?
そうですね、女性アスリートの健康上の問題についての認識が、スポーツドクター全員では、必ずしも共有されていないというところが問題だと思うんですね。
例えば、婦人科医の場合には、月経異常、無月経で10代の少女が来た場合には、それに対しては思い至りますけれども、疲労骨折という感覚では捉えることができない。
逆に、整形外科の先生は、無月経が疲労骨折の原因になっているというふうに、いわゆる裏表ですかね、その感覚で捉えることができてないということが、これが非常に大きな問題だと思いますね。
特に婦人科医の場合には、少女の月経異常は治療できても、アスリートはできないといって、避ける風潮があります。
しかし、産婦人科医もきちっと女性アスリートの健康管理に関わらなきゃいけないということで、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会もこの問題に取り組んでいきますので、数年たてば、いろんな指針が出てきて、きちっと対応ができるようになると思いますし、また、スポーツドクターでも婦人科以外のドクターが対応できるようにということで、臨床スポーツ医学科医のほうで、産婦人科部会から、婦人科的な問題についての対処法についても学会誌に出したりしておりますので、いろいろな診療科の先生方にもご理解いただけるんじゃないかと考えております。
増田さん、しかし自分の指導者が、常に体のことを配慮してくれる方が、気遣ってくれる方がいらっしゃればいいなと思われませんか?
スポーツの場合には、スポーツの指導者っていうのは、圧倒的に男性が多いですので、なかなか選手は男性の指導者に言いにくかったり、男性のほうも気にしてるんだけど、言っちゃうとセクハラになっちゃうんじゃないかということもありますけどもね、やっぱり6年後の東京オリンピックやパラリンピックのことを考えたら、選手も指導者も、もっと疲労骨折と無月経の関係を知って、もっと心配しなければいけないですよね。
やっぱり選手以上に指導者の皆さんが負けず嫌いなんですよ。
だからこの3年間で、日本一にしようって、目先の勝利ばっかり、考えがちですけれども、もっともっと選手の体の成長を見守りながら、練習をレベルアップしていくということ、長い目で見ていく必要があると思いますね。
そして今、指導者の方々が、なかなか選手に聞けないときに、お母さんの役割というのはやっぱり大きいのではないかというふうにも、今、見たんですけれども。
そうですよね。
指導者に言えないときには、お母さんに言って、家庭と、さっきの橋爪さんのように、家庭と指導者と、また選手が上手に連携が取れていけば、とてもいいですね、全国的に見てね。
そして選手でいらっしゃったご経験から、10代の女子選手たちにどうしてもやっぱり、真面目にこれ、取り組んでいる人々に、今、何を伝えたいですか?
選手の気持ちになると、目の前の練習をしなきゃ、真面目ですから、この大会で頑張らなきゃって思いがちなんですけれども、やっぱり選手でいるとき以上に、そのあとの人生のほうが長いわけですから、しっかりと無月経であれば、親御さんに話すとか、指導者に話すっていうことをして、目崎さんが言われたように、早期発見でしたら、体は治りますので、そういうようなことを分かってほしいなというふうに思います。
そうですね。
2014/04/15(火) 19:30〜19:56
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「無月経・疲労骨折…10代女子選手の危機」[字]

6年後に東京五輪を控える日本。活躍が期待される10代女子選手に今、無月経を原因とする疲労骨折が相次いでいる。どうしたら防げるのか選手と監督への大規模調査から迫る

詳細情報
番組内容
【ゲスト】筑波大学名誉教授…目崎登,スポーツジャーナリスト…増田明美,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】筑波大学名誉教授…目崎登,スポーツジャーナリスト…増田明美,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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