ひょっとして認知症?

《473》 認知症徘徊 家族の責任は?(鉄道事故訴訟 あす二審判決)

笠間睦 (かさま・あつし)

 皆さん、本日の名古屋本社版社会面記事「認知症徘徊 家族の責任は」を読まれましたでしょうか?

 実は明日24日、認知症の人に関わる多くの人が非常に強い関心を寄せている判決が名古屋高裁で言い渡されるのです。

 記事の文頭部分は省略し、後半部分の紙面内容を以下にご紹介しましょう。

 「控訴審では新たに、医師や厚生労働省の元職員ら複数の専門家の意見書も提出。『地域での認知症患者の見守りを重視する国の施策に逆行する』『徘徊を完全に防ぐことはできない』と一審判決を批判した。

 これに対し、JR東海は過去2回あった徘徊では、認知症の男性が家族に声をかけていなかったことなどを挙げ、『事故は予見できた』と主張した。

 名古屋高裁はこれらの主張を踏まえ、和解を促したが、双方は合意せず、判決を迎えることになった。

 厚労省の推計によると、日常生括に支障がある認知症高齢者は2010年の280万人に対し、25年は470万人に達する見込み。同省は将来的に病院や施設への依存を脱し、住み憤れた環境で暮らせる社会を実現する方針を打ち出している。

 遺族側の弁護士は『在宅介護をする人に重い責任を負わせる前例を作ってはいけない』と指摘している。(久保田一道)」【2014年4月23日付朝日新聞・社会】

 この記事に関する私の感想を述べます。

 JR東海の主張は、「過去2回あった徘徊では、認知症の男性が家族に声をかけていなかったことなどを挙げ、『事故は予見できた』」ということのようです。

 ところで、2014年4月16日に放送されました『ニュースウオッチ9』におきまして、全国で行方不明になったとして届けられた人は「年間9,607人」であり、「NHKが行方不明になった家族を取材した結果、周囲の誰もが認知症と気づいていない段階で突然行方不明になるケースがあることが分かりました」と報道されていましたよね。

 2014年4月16日に放送されました『ニュースウオッチ9』内容を、以下にもう少し詳しく振り返ります。

 「NHKは今年2月、一昨年1年間に認知症やその疑いがある人が徘徊などで行方不明になったケースについて、全国の警察本部にアンケート調査をしました。

 その結果、行方不明になったとして届けられた人は全国で延べ9,607人にのぼりました。このうち死亡が確認された人は351人、一昨年末の時点でも行方不明のままの人は208人にのぼることが分かりました。

 NHKが行方不明になった家族を取材した結果、周囲の誰もが認知症と気づいていない段階で突然行方不明になるケースがあることが分かりました。なかには、テレビをつけたまま近所に出かけ行方不明になり、1カ月後に凍死して見つかるなど深刻なケースも出ています。」(2014年4月16日放送ニュースウオッチ9─行方不明1万人の衝撃・認知症で外出したまま)

 すなわち、「周囲の誰もが認知症と気づいていない段階で突然行方不明になるケースがある」というのが現状である以上、予見できない段階においても高架橋にするなど徘徊による事故対策を未然に講じる必要があることになるわけです。

 本日の「中日新聞・発言」において掲載されました私の主張を以下にご紹介します。周囲の誰もが認知症と気づいていない段階で突然行方不明になるケースがあるという現状も踏まえての主張です。

『徘徊見守り 社会も責任』(笠間 睦 津市・55歳・医師)

 「愛知県の認知症電車事故訴訟の控訴審判決が言い渡されるのを前に、認知症の家族らの現状などを伝える記事が掲載された。地裁は、徘徊男性が電車にはねられたのは、見守りを怠ったからだというJR東海の主張を認め、遺族に賠償全額の支払いを命じていた。

 私は日本認知症学会指導医であり、徘徊防止のため家族が24時間見守ることは不可能であることを熟知している。

 認知症の人は、2012年時点で推計462万人にのぼり、国は施設から在宅への政策を推し進めている。介護を家族だけに押しつけては、超少子高齢社会は成り立たないのは明白だ。すなわち、見守りを怠った責任は社会全体で負うべきである。

 今後も認知症高齢者が増加することを認識し、危険性が高い踏切は、公費を投入してでも高架橋にするなどの対策が、喫緊の課題である。もし対策が困難であるなら、国は、損害賠償請求を取り下げるよう鉄道会社を指導すべきだ。」【2014年4月23日付中日新聞・発言】

 最後に、2014年4月22日の第472回ひょっとして認知症?「患者の声が聞こえていますか?―本人の気持ちは本当はどうなんだろう?」のFacebookコメント欄において紹介しましたひとりの介護者の非常に貴重な意見をご紹介し本稿を閉じたいと思います。

 初期アルツハイマー病患者さん(85歳女性)を在宅にて介護されている介護者(息子さん)が2014年4月22日に榊原白鳳病院物忘れ外来にて語ったこと:

 「仮に母が徘徊し自動車に轢かれる事故が起きたとしても、それは仕方がないことなのかな…と感じます。それは、本人の外に出たいという気持ちを大切にしたいという思いがあるからです。

 ですから、自動車事故に繋がることがあってもそれはそれで仕方がないのかなと割り切って考えています。

 そして、私は自動車事故の相手をかばいます。」

 この言葉を聞いたとき私は、JR東海は、列車にはねられた認知症の男性そして家族をかばうべきではなかったのかなと感じました。

笠間睦 (かさま・あつし)

 1958年、三重県生まれ。藤田保健衛生大学医学部卒。振り出しは、脳神経外科医師。地元に戻って総合内科医を目指すも、脳ドックとの関わっているうちに、認知症診療にどっぷりとはまり込んだ。名泉の誉れ高い榊原温泉の一角にある榊原白鳳病院(三重県津市)に勤務。診療情報部長を務める。
 認知症検診、病院初の外来カルテ開示、医療費の明細書解説パンフレット作成――こうした「全国初の業績」を3つ持つという。趣味はテニス。お酒も大好き。
 お笑い芸人の「突っ込み役」に挑戦したいといい、医療をテーマにしたお笑いで医療情報の公開を進められれば……と夢を膨らませる。もちろん、日々の診療でも、分かりやすく医療情報を提供していくことに取り組んでいる。
笠間睦さんインタビュー記事

Facebookでコメントする

ご感想・ご意見などをお待ちしています。
ご病気やご症状、医療機関などに関する個別具体的なご相談にはお答えしかねます。あらかじめご了承ください。

ページトップへ戻る

サイトポリシーリンク個人情報著作権利用規約特定商取引会社案内サイトマップお問い合わせヘルプ