赤福餅で知られる三重県伊勢市の和菓子老舗「赤福」(非上場)が23日開いた臨時株主総会で、浜田典保(のりやす)社長(51)の退任を決めた。同社によると、その後の取締役会で典保氏の母勝子(まさこ)氏(77)を新社長に選んだ。典保氏は代表権のない会長に退いており、事実上の解任とみられる。

 典保氏は赤福元社長の益嗣(ますたね)氏(76)の長男。同社は2007年、商品を冷凍保存して解凍日を製造日と表示する消費期限偽装などが発覚。その2年前に社長を譲り受けていた典保氏は続投したが、当時会長だった益嗣氏は辞任していた。関係者によると、合理的な経営を目指す典保氏と方針に違いがみられたという。益嗣氏は24日、朝日新聞の取材に、「(典保氏の)社長教育をちゃんとしていなかったので、いろいろと問題が出てきた」と話した。

 民間信用調査会社によると、益嗣氏は赤福の80%以上の株式を保有する「浜田総業」の社長を務め、依然として影響力を持ち続けていたという。

 益嗣氏は社長在任時の1993年に観光商店街「おかげ横丁」を完成させ、伊勢神宮・内宮の周辺を日本有数の観光地に押し上げた財界の実力者。「そりが合わない長男から赤福を取り戻したくなったのでは」と話す関係者もいる。