『LINE:ディズニー ツムツム』の裏話も…NHN PlayArt・馬場氏による「成功したゲーム、失敗ゲーム」セッション【OGC2014】
成功したゲームの“作り方”とは?非常に細かなチェック体制も明らかに
2014年4月23日(水)、東京・秋葉原「ベルサール秋葉原」を会場に、一般社団法人ブロードバンド推進協議会(BBA)主催のカンファレンス「OGC 2014」が開催されました。
「OGC 2014」では、世界的な広がりをみせるモバイルアプリゲームのトレンドについて、国内外から様々なクリエイターが講師として参加し、数多くのセッションを行いました。
こちらの記事では、NHN PlayArtの執行役員 Executive Directorである馬場一明氏のセッション「成功したゲームの作り方と失敗したゲームの作り方」について取り上げます。
“ゲームを作らない、偉い人”に従った結果…?
馬場氏は、過去にあったゲーム制作プロセスを事例に挙げて、「成功した組織体制」と「失敗した組織体制」の違いを説明しました。
「社内には、ゲームを作る人もいれば、ゲームは作らない(作れない)けど、なぜか立場が偉い人もいます。そのような上司が間違った指示を出して、結果ばかりが求められてしまう状況にあり、いくら説明しても理解してもらえないので、ひとまず従うしかないという状況だったのです」と振り返ります。
そんな「ゲームを作らない上司」は、当時採用されていたゲーム制作プロセスを見て、「チェックプロセスが少なすぎて不安」、「期間や期限の指定がないので不安」、「定期的にチェックするタイミングがなく、全てのタイミングがプロジェクト側に依存しているので信用できない」などといった不満を漏らし、挙句クオリティチェックについて、「クオリティってなに?作っている人たちの主観でしょ?作っている人たちは全員信用できない」などと口にしたとのこと。
さらにその上司は、非常に複雑で理解しがたい、新たなゲーム制作プロセスを提案。下記のような、問題だらけ、欠陥だらけのモノだったそうです。
・各プロセスに決裁者が2名以上いるため、判断が明確に行なわれず、判断のスピードが遅れてしまう。
・プロジェクト開始2ヵ月で、ゲーム要素が全て入ったものを準備することは、できることとできないことがある。
・起案段階ではプロジェクトに全てを委ねているのに、最終的に、その決裁権限が取り上げられる上に、よく分からない人たちに判断される(これが特にサイアク!)
言って聞かせることもできず、まずは言いなりになって新ゲーム制作プロセスを採用したところ、ことどとく失敗が続いたとのこと。結局、以前のようなゲーム制作プロセスに戻したら、スムーズに物事が運ぶようになり、成功するようになったそうです。
そんなこんなで、元のような形に戻したゲーム制作プロセスでは、下記のようなポイントが重視されています。
・企画のコンセプトについては、まず大まかに確認。
→企画書の段階で面白いかどうかをチェックするなら一生かかる。ドキュメント上で判断はゲームの面白さは判断できない。
・企画コンセプトをいい加減に確認している間、あとで問題が発見されたら大きな作り直しになってしまう。
→特にデザインコンセプトは、早めに、丁寧に確認するべき。
・プロジェクトのタイミングで、プロジェクト内で納得のいく「おもしろさ」になっているものを提出してもらう。
→ただし、プロジェクトメンバー全員が自信を持って提出できるものでないとダメ。期間だけ守っていても良いものは作れない
『LINE:ディズニー ツムツム』は、どれだけ細かくチェックされているの?
ようやくゲーム制作プロセスも正しい形へと戻ったわけですが、それでは各ゲームをどれぐらい細かくチェックしているのでしょうか。
馬場氏は、iOS/Android端末向けに好評配信中の人気スマホゲーム『LINE:ディズニー ツムツム』を例に挙げて説明しました。
例えば、「マイツムリスト」内の、まだ所持していないツムツムがシルエットで表示されている点については、「ディズニーさんがぬいぐるみを発売しているのだから、実物のぬいぐるみを見ればシルエットが何かバレてしまうので、これでは意味がない。だったらシルエットじゃなく、非所持のツムツムは薄く表示させてほしいと思っています。でも、全然言うこと聞きませんけどね(笑)」とのこと。
また、ツムツムが揃って消える際に、「揃えた演出」→「派手に消える演出」の順で、一気にツムツムが消えた方が爽快感があるはずが、揃った演出の後にツムツムが“1個ずつ消えていく”ため、爽快感が減ってしまっているという意見も。
これについては、「例えば3個消した時と、4個消した時でスコアに差があるため」という理由があるため、現状そのままとなっているそうです。
実際にゲームに反映された案は、ツムツムの「スキルボタンの位置変更」とのこと。
開発当初はスキルボタンが画面右下に、ツムツムをシャッフルする扇風機のマークは画面左下にありました。右手でプレイする場合、手にスキルボタンが隠れてしまうため、扇風機マークの方が押しやすい位置にあったのです。
その理由については、「シャッフルする機能を、開発メンバー達が気にいっていたため」と馬場氏。「でも、ハイスコアを目指すためには、さらに重要なスキルボタンが押しやすい方が良い。そこで右左を逆にして、現在の位置に変更したのです」ち説明しています。
このように、実際に目で見て、手で触ってみて検証を重ね、細かい機能や見た目についてのチェックを続けているとのこと。『LINE:ディズニー ツムツム』だけでも50人体制でのチェックが行なわれており、指摘事項は100件にも上るそうです。
「チェックを行なう人の中には、パズルゲームでも、LINEゲームでもない、全然別のゲームを作っている人もいます。それにより、気づきにくい部分にも気付ける体制ができているのです」とも、馬場氏は語っています。