数日前からツイッター界隈で喧しい状況が続いているようです。
すでにこのようなまとめが作られ、
さらに批判された側が対抗するまとめも作成している状況。
ガンダムの初期を支えたのがファンジン界隈の女性ファンというのは、
私も聞いたことがある話です。
とはいうものの私も世代が違う(私は再放送ガンプラ世代)ので、
当時の様子をリアルに体験しているわけでなく、あくまでも伝聞情報にすぎません。
それでは当事者である富野はこのことについてどのように語っていたのか。
手持ちの資料で調べ、これに言及している発言をリストアップしてみました。
先にお断りしておきますが、これは「富野がどう捉えていたか」であって、
いわゆる「ガンダム現象」がこうであったと断定するものではありません。
富野がどう認識していたかとそれが事実であったかとは別個の問題です。
そもそも、このような問題は判断基準が身の回りの世界に偏りがちであり、
「自分の回りの世界ではどうであったか」しか語れないと思うのです。
なので、この富野の発言も「ガンダム現象」を総括したものではなく、
「ガンダム総監督としての富野の周辺で起こった現象」を語っているだけだと思うのです。
それを踏まえたうえでお読み下さい。
1.日経トレンディ1999年1月臨時増刊号
こうして作品を作っていったら、たまたま中・高生の女の子がついてくれたんです。ロボット物なのに、この年齢層の女の子が熱烈なファンになってくれたのが不思議であると同時に、映画は女性客をつかまなければダメだという鉄則を思い知らされたわけです。
作り手としては、彼女たちに気に入るように仕掛けていませんでしたから、予想もしていなかったのです。実際、1年間のオンエアの予定が途中打ち切りになっています。それも43本というとても変な打ち切りになったのです。商売という観点だけで見ていけば、やむを得ない理由もあったのですが、その後、中止したというストラクチャーだけが生き残って、女性客の問題を考える土壌を育てるということを関連会社のスタッフが学ばなかったのは残念ではありますね。
ところが作品が再放送され、映画化もされていくうちに、一過性のブームで終わらずに20年続いてきたのには、物語の構造自体をシンプルに作っていたので、僕以外の人でも簡単にガンダムワールドが作りえたという事情もありましょう。
初めのファンが女の子だった理由は、彼女たちが一番興味を持っている人間関係が描かれていたからでしょう。ヒーローの男の子もかわいいし、敵方の男の子もかっこいい。その間をつなぐ人間関係が、わかりやすい青春群像として描かれていたのでしょう。彼女たちは、ロボット物というジャンル分けを無視して、自分たちの好きなものを見てくれました。時代に関係ないピュアな部分があったから、その後の長いリアクションが呼んだのだと思います。
via:「女子中・高生の見つけたガンダムの魅力 | ひびのたわごと」
2.ガンダムナイト
そして何よりも今度は制作に入ってオンエアが始まって、アフレコスタジオが本当に町場の小さな録音スタジオでやったわけです。予算もないから。そんなスタジオによく見つけるなっていうファンが、中高生の女の子たちがスタジオの前に集まり始めたときに、それは、密かに「やったぜ!」って思いました。
via:「ガンダムナイト 富野インタビュー」
3.「ターンエーの癒し」
ファースト・ガンダムの第一番目のお客さんになってくれたのは、中学生の女の子であって、まちがってもプラモ・ファンではない。
4.KINO Vol.02
富野 あまりいったことがないんだけれど、『機動戦士ガンダム』が初めてやったことっていうのがあるんですよ。
杉井 ほう。それは?
富野 女性がロボットアニメを観てくれるようになったということです。(中略)打ち切りになっちゃったわけですが、女の子のファンがついた。
杉井 それ、最初の『ガンダム』のこと?
富野 そう、2クールが終わる頃からか、録音スタジオの前に「あれ?女の子がきてくれてる。でも、この子たちは普通だったら『ガンダム』なんか観てるわけないのに」ってことが見えたんです。最後のアフレコの夜は、50~60人のファンが集まってくれました。ほとんど中学生の女の子です。興業のキモは女を抑えろ、ですから、これは嬉しかった。
via:「女子中・高生の見つけたガンダムの魅力 | ひびのたわごと」
5.SkyPerfecTV!ガイド 2006年2月号
実は、ガンダムという作品を長く支えてくれたのは、女性のファンなんです。
27年前にシリーズ第1作の放送が開始されてから第1クールが終わる頃に、中学生だった女の子たちが、アフレコ現場に集まってくれたものです。キャラクターやドラマ性を気に入ってもらえたんですね。男のファンが騒ぎ出したのは、それからずっと後で、商業的理由から放送の打ち切りが決まった頃です。“遅いよ!”という心境でした。
それまでのロボットアニメと違って、ガンダムは複雑なドラマ性が指摘されますが、それは僕が女性ファンの目を意識するようになったからです。応援してくれる底辺に女の子がいるという思いが出てくれば、単なるメカ好きのための作品にするわけにはいかないじゃないですか。結局、人間関係はリアルに作るしかない。男は「カッコよければいい!」って言う人が多いでしょ?
6.CUT 2007年11月号
ちなみにファーストガンダムに関して言うと、一番はじめのファンは女の子たちだったんです。女の子たちがそのあたり(管理人註:大人に対するフラストレーションを吐き出す物語)に一番はじめに食い付いてきて、2クールが終わって以降、シャア人気もアムロ人気もフラウ・ボウ人気も全部中高生の女の子たちで、テレビのオンエアが終わるぐらいのところで、男の子たちが気がついてくれたっていうのが基本的な構造です。(これってロボットアニメとしては)とっても異常です。だからこれは、おもちゃ屋さんが撤退した通りなんですよ。身長が80メートルもないロボットが、なんで巨大ロボットなんだっていうことを男の子たちは見抜いていたわけだから観ません。だけど女の子たちが騒いでいて、それこそさっき言ったような食い付き方もしてくれました。ロボットものでも自分たちにわかる話があるという共感があって、そういう女の子の誘導がなければガンダム現象の発生はなかったと思う。
7.net-flyer.com スペシャル対談 女優 片瀬那奈 × ガンダム監督 富野由悠季
富野「ガンダムが初めてON AIRされた時って、男の子に受けなかったんですよ。最初についたファンは、中学生から高校1年生くらいの女の子たちでした。アフレコの時にもスタジオ前に20~30人の女の子がいて、男の子は2~3人」
片瀬「へぇー!?」
富野「キャラクターに人気が集まっていましたね。まずったなぁ~って思ったけど、女性の客がついてくれたら興行的には絶対に強いはずだと確信はあったんだけど…放送が打ち切りになってしまって」
片瀬「やっぱりアムロが人気でした?」
富野「悔しいけど違った。シャア、アムロ、セイラ、フラウの順です」
片瀬「ブライトはいないんだ」
富野「ブライトはもう少し後だね(笑)。作り手としてビックリしたのは、何でフラウに目がいくんだろうって思った。中学生くらいの女の子の視野って、ものすごく広いんだなってガンダムで教えられました」
8.ニュータイプ 2009年5月号
―「ファーストガンダム」は、中高生の女の子から人気が広まったと聞きます。
「基本的にエンターテイメントは、女性にウケなければヒット作にはなりません。『ガンダム』がありがたかったのは、2クールが終わるくらいのころから、アフレコスタジオの前に、中高生の女の子がアフレコ後の声優さんを見たいがために来るっていう現象が起こったことで、それが最後まで毎週続いたのです。
当時、彼女たちの発言が、『ガンダム』を理解するうえで僕にとってはいちばん重要だったんです。彼女たちが何を見ているかというと、ホワイトベースにいるクルーの『家族話』なんです。ジオンのことも『敵』ではなく『あの人たち』と呼んでくれていて、『戦争モノなのによくそういう見方をしてくれるな、見抜いてくれたな』とそれはうれしかったです。」
9.機動戦士ガンダム生誕30周年祭in NAGOYA
ファーストガンダムの時に、1クールつまり13本くらいの放送が終わった頃から、録音スタジオに小学校の上級生から中学生くらいの女の子が集まるようになってくれました。しばらくすると高校生の女の子も来るようになりました。なぜ、ガンダムのアフレコスタジオにみんなが来るの?っていうときに、当然声優人気なんですが、なぜ巨大ロボットものの声優に?となったら要するに話が面白いから。つまり彼女たちが言っていたのは(ロボットの)「ガンダム」を見ていなかったんです。「物語」をみてくれるお客さんがいてくれて、一番初めについたファンが女の子だったんです。ガンプラのファンはそのあと1年後か2年後です。基本的に劇、物語を見てくれた。そういう意味では映画作りとして間違ってないだろうなという保証をファンの方に―今ここにいらっしゃるお母さんたちが教えてくれた、というのが僕にとってのガンダムでした。ですから(モビルスーツではなく物語から入った)GACKTのような入り方が正しくって、ガンプラから入るのは二次ファン……ごめんなさい(笑)。(物販コーナーを指さし)まだ品物があるようですのでお買い上げのほどよろしくお願いします(笑)。
10.GrowingReed 2009年10月25日放送分
ガンダムの映画版を上映したときに劇場に来てくれたのはガンプラから入った男の子のファン。一方最初にガンダムのファンになってくれた女の子たちは囲い込みして自分たちの世界をつくりファンジン活動を始めた。どちらのファンも接触せず、みんなバラバラに存在した。
via:「GrowingReed 富野コメント要約 | ひびのたわごと」
11.調査情報 No.497
子供に人気があったというのは、多少違いますね。小学校五年生ぐらいからで、一番人気があったのが、中学生の女の子でしたから、この頃からファン層の拡大と高年齢化が始まっていますよね。ただ、僕の場合には、その前に『海のトリトン』がありました。『海のトリトン』は小学校の上級生から高校生までの女の子のファンがいて、日本で初めてテレビアニメのファンクラブが千人規模の集会を開いたんです。『ザンボット3』の時に、それの余波も受けている部分もありまして、戦いを描くとこういう残酷な話もあるぞ、という事例として人間爆弾のエピソードも入れました。この時から、アニメといえども、次の世代に何かモノを考えさせるヒントになるものを埋め込めるはうzだと思うようになりました。それで、ロボット物を利用してメッセージを盛り込むことを考えるようになりました
via:「調査情報NO.497 10年11月-12月号「アニメーションを次のステージに上げた『ガンダム』の監督は何を見ていたのか」富野由悠季インタビュー - シャア専用ブログ@アクシズ」
調べられる資料で確認できるのはこのくらいでした。
また、富野の発言ではないのですが、
ガンダムオフィシャルズの公式サイト出版記念イベントのレポートには、
このようなことも書いてありました。壇上からはフロアにいる人々全員の顔を見ることもできる。富野は集まった人々の熱気をダイレクトに感じることができたのだろう。自分の言葉が正しく伝わるという〈肌ざわり〉がなければ、いえない言葉だ。とはいえ、 「女の顔がないよ」と富野は苦笑する。「それが悔しいので、もっと頑張って女の子のファンを獲りたいと思ってます」
20年間支持されてきたガンダムだが、実は支持者の層も変化している。『アニメ新世紀宣言』の時には、ガンダムファンの半数近くを女性が占めていた。だが、現在ではガンダムファンの中に女性を見かけることも少なくなってしまっている。
これらを読む限り、数の多寡はともかくまず女性ファンがくいつき、
その後しばらくたってから男性ファンが追っかけてきたと富野は認識していたようですね。