赤福:社長、突然の解任 父と対立、後継は母
毎日新聞 2014年04月24日 07時30分(最終更新 04月24日 09時00分)
三重県伊勢市の老舗和菓子製造販売「赤福」は23日、同市内で臨時株主総会を開き、浜田典保(のりやす)社長(51)の退任を決めた。その後の取締役会で、典保氏の母勝子(まさこ)氏(77)を新社長に選んだ。父は元社長の益嗣(ますたね)氏(76)。2007年に発覚した消費期限偽装問題から業績を回復させた典保氏だが、関係者によると、経営方針を巡り益嗣氏と対立しており、事実上の解任劇となった。
同社は非上場。関係者によると、赤福の発行済み株式は、益嗣氏が社長を務める「浜田総業」が約85%を保有し、残りを益嗣氏と典保氏でほぼ二分しているという。益嗣氏は05年、典保氏に社長の座を譲り会長職に就いたが、消費期限偽装問題の責任を取り、07年に辞任した。
典保氏は偽装問題で各方面への謝罪に追われたが、その後は経営手腕を発揮。「家業から企業へ」を掲げて近代的な企業経営への転換を図り、民間信用調査会社によると、08年9月期に64億円だった売上高は、13年9月期に92億円を超えるまでになった。
一方、益嗣氏は、現在の赤福の礎を築き、株式会社化後の初代社長も務めた祖母、故浜田ます氏(1886〜1976年)の功績を重視。関係者によると、勝子氏を中心に、自身に近い親族らによる「家業型」の経営スタイルに立ち戻ろうとしているという。こうした方針の違いから2人の対立が深まっていたという。典保氏は新体制で代表権のない会長に退いた。
今回の解任について、従業員からは、信頼の厚い勝子氏の社長就任を歓迎する声がある一方「いわれ無き解任」と典保氏を擁護する声もあるという。
勝子新社長は同日、「従業員の皆様へ」とする文書を社内で配布し、経営体制の刷新を「益嗣・勝子が判断した」とした上で「未来に向けた経営を志向するもので、『のれん』に象徴される理念に基づく経営や、女性の積極的な登用などを進めたい」などと説明している。【谷口拓未】
【ことば】赤福の消費期限偽装問題
農林水産省の調査で2007年10月、店頭に並ばなかった商品の製造日や消費期限を偽装した上で、改めて出荷・販売していたことが発覚した。不正は益嗣氏の社長時代から30年以上行われ、同氏が引責辞任した。三重県は同月から08年1月まで赤福を営業禁止とした。