8回、シュテファーヌ・ジャモエからダウンを奪う山中慎介=大阪城ホールで(横田信哉撮影)
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◇ボクシング ダブル世界戦
WBCバンタム級チャンピオンの山中慎介(31)=帝拳=が同級3位のシュテファーヌ・ジャモエ(ベルギー)を9回11秒TKOで下し、6度目の防衛に成功した。日本選手で歴代2位タイとなる5試合連続のKO防衛となった。IBFスーパーバンタム級13位の長谷川穂積(33)=真正=は王者のキコ・マルティネス(スペイン)に7回1分20秒TKOで敗れ、日本選手として亀田興毅(亀田)に続く2人目の3階級制覇に失敗した。
1万3000人の大観衆が息をのんだ。あまりにも鮮やかな一撃に。9回11秒、山中の「神の左」がジャモエのボディーをとらえる。響き渡る鈍い音。キャンバスに沈んだ相手を横目に、しとめた拳を誇らしげに掲げた。「これだけ警戒されても倒せるなんて、強い左なんでしょうね」。リング上で不敵に笑った。
実力差はすぐに分かった。積極的に前に出てくる挑戦者の打ち気をそらしながら、隙をうかがう。2回に左ストレートでダウンを奪うと、徐々にいたぶりつけていった。8回にも2度ダウンさせれば、もう勝負は見えていた。
滋賀県湖南市出身の王者にとって初となる地元関西での世界戦。郷里から3500人以上の大応援団が詰め掛け、慎介コールを大合唱した。その期待に一撃で応えようとして少し力んだ。「左に頼りすぎた。相手が効いているときに仕留めないと見ている人の心はつかめない」。反省を口にしたが、日本歴代2位タイとなる5連続KO防衛の約束は守った。
少年時代に憧れた舞台の中心で、スポットライトを浴びる。1997年、同じ大阪城ホールで辰吉丈一郎が世界王座に返り咲いた試合をテレビで見て心を奪われた。あれから17年。今度は自分が夢を与える立場になった。試合後に辰吉から祝福を受け「褒められてうれしい」と少年に戻ったような笑顔を見せた。
次なるステップに、他団体との統一戦を視野に入れる。「これからもっと、もっと強くなる」。傷の少ないきれいな顔が強さの証し。最強への階段を、着実に上がっている。 (小西亮)
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