岡山地裁:介護員自殺はパワハラ原因と認定、賠償命令

毎日新聞 2014年04月23日 22時03分(最終更新 04月23日 22時39分)

 デイサービスセンター「大ケ池荘」(岡山県備前市)の男性介護員(当時42歳)が2007年に自殺したのは上司のパワハラが原因だとして、男性の妻ら遺族3人が、大ケ池荘を管理する社会福祉法人「備前市社会福祉事業団」(同市)に計5000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が23日、岡山地裁であった。古田孝夫裁判長は、パワハラと自殺の因果関係を認め、原告の請求通り計5000万円の支払いを命じた。

 判決などによると、04年5月ごろから、上司の女性生活相談員が、男性の仕事のミスについて職員会議などで「何でできないの」などと厳しく叱責。男性は07年9月3日夜、妻に「(上司に)『人間失格』とか言われ、きつくこたえました。ダメな亭主でゴメン」などとメールを送り、その直後、岡山県内の河川敷でガソリンをかぶり焼身自殺した。

 古田裁判長は「上司は、男性の判断・作業能力が低下している原因を十分見極めることなく、叱責を繰り返した。心理的負荷は過重。自殺行為を思いとどまる精神的抑制力が著しく阻害されていた」と指摘した。

 男性の自殺を巡っては、和気労働基準監督署(岡山県)が10年8月に遺族補償年金などの不支給を決定し、遺族が国に処分取り消しを求め岡山地裁に提訴していた。この日の判決で、古田裁判長は「(業務と自殺の)因果関係を否定した処分は違法」として、処分取り消しも命じた。

 和気労基署は「関係機関と協議したうえで控訴するかどうか判断したい」とし、備前市社会福祉事業団は「判決内容を十分検討し、今後の対応を決めたい」としている。【原田悠自】

最新写真特集