By JUN HONGO
- Agence France-Presse/Getty Images
- 1992年の訪日の最中、インフルエンザから回復したブッシュ大統領(右)と宮沢喜一首相(いずれも当時)
安倍晋三首相は23日夜、オバマ米大統領を銀座の高級すし店でもてなす予定だ。安倍首相はこの非公式な夕食会で、24日の首脳会談前に大統領との個人的なきずなを強めたいと考えている。
だが、この夕食会が日米関係にどんな進展をもたらそうとも、1992年1月8日に開かれた宮沢喜一首相とジョージ・ブッシュ大統領の晩餐会のように、今から22年後に今回の夕食会がウィキペディアに掲載されているかどうかは疑わしい。
当時の晩餐会の様子は今でも動画共有サイト「ユーチューブ」で見ることができる。ブッシュ大統領が隣に座る宮沢首相の方にゆっくり傾き、ついには意識を失って宮沢首相のひざの上に倒れ込んだ映像だ。ファーストレディのバーバラ夫人はテーブルクロスで夫の顔を覆った。ブッシュ大統領はしばらく床の上で横になった後、ようやく自分の足で立ち上がり、晩餐会に出席していた要人たちにほほえみかけ、宮沢首相と握手を交わした。
その夜の出来事を記したウィキペディアのページには「George H.W. Bush Vomiting Incident(ジョージ・ブッシュの嘔吐事件)」というタイトルがつけられている。
ブッシュ大統領の訪日は日米両政府が議論を戦わせている時期に行われた。大統領は当時、低迷している景気の浮揚に苦しんでいた。それが原因で、その年の大統領選挙で再選を果たすことができなかったのだが、大統領は訪日の際に米国の自動車メーカー幹部を同行させていた。自動車メーカーは日本市場の一層の解放を求めていたためだ。
1992年1月13日付のウォール・ストリート・ジャーナルに、クリストファー・J・チペロ記者は「週末の間あれこれと思い出してみたのだが、大統領のあわただしい訪日で記憶に残っているイメージは、宮沢首相がインフルエンザでダウンしたブッシュ大統領を両手で抱きかかえた姿と、米国の自動車メーカー幹部が多くの人にとって空々しく見える要求をつきつけたことだ」と書いている。
ブッシュ大統領のエピソードは米バラエティー番組「サタデー・ナイト・ライブ」やコメディーアニメ番組「ザ・シンプソンズ」などで風刺の材料にされた。日本では人前で嘔吐することを「ブッシュする」と言うようになった。
あれから多くのことが変わった。いまの日本人はもうそんな言い方はしない。
原文(英語):Bush-Miyazawa Dinner Made Mark in U.S.-Japan History
http://blogs.wsj.com/japanrealtime/2014/04/23/bush-miyazawa-dinner-made-mark-in-u-s-japan-history/