「労災かくし」は重大な犯罪
第3回 事業者は4つの責任を自覚すべき
転落事故で書類送検
平成24年10月、東京都・立川市内で街路樹のユリノキに登って枝切り作業をしていた男性が、高さ3.4メートルから歩道へ転落し、頭蓋骨骨折などの重傷を負いました。労働基準監督署で捜査したところ、転落を防止する足場などを設けずに、男性に剪定作業を行わせていたことが判明しました。
また、平成25年1月には、東京都・江東区の清掃工場の焼却炉等補修工事現場で、作業員の男性が足場から転落して、亡くなっています。この男性は、廃熱ボイラー内部の清掃作業を行う際に、現場に設けられた架設通路から約3メートル下のスクリューコンベアに墜落して、スクリューに巻き込まれたものです。労働基準監督署の捜査では、転落のおそれのある箇所に手すりなどの設備を設けずに架設通路を作業員に使用させ、作業を行わせていたことがわかりました。
2つの労働災害では、いずれも被災者が勤務していた会社と現場監督(責任者)が、労働安全衛生法違反容疑で、東京地方検察庁(前者は立川支部)へ書類送検されています。
労働災害は、被災した従業員だけでなく、その家族の生活さえ一変させてしまうことがあります。会社は、こうした被災者本人やその家族に対する責任を含め「刑事責任」「行政責任」「民事責任」「社会的責任」の4つの責任を問われることになります。
死亡災害など重大な労働災害が発生すると、労働安全衛生法に違反していなかったどうか、労働基準監督署による捜査が行われます。違反が発覚すると、「刑事責任」を追及されることになります。また、監督署とは別に、警察関係者による捜査も行われます。業務上の注意を怠って、従業員を死傷させた場合には、刑法の業務上過失致死傷罪に問われることになります。