資産を中国から逃す動きは李氏に限らない。中国メディアの新浪財経によると、昨年の段階で海外投資家の資金1兆元(約16兆円)が中国から流出したというが、この流れはさらに加速しているようだ。
中国経済の危険性に警鐘を鳴らしてきた企業文化研究所理事長の勝又壽良(ひさよし)氏は、その背景について語る。
「中国の人民元には、国際的な投資家が自分の富を安全に蓄えておく機能が存在しない。これは資本の自由な移動が遮断されているためで、元も中国も国際的な信任を受けていない結果といえる」
足元の不動産市況も低迷ぶりが鮮明になってきた。中国国家統計局が発表した1〜3月期の住宅販売額は、前年同期比7・7%減の1兆1000億元(約18兆円)と落ち込み、新規着工面積は25%と大幅減に見舞われた。
3月の新築住宅価格も、マンション投資が活発だった浙江省温州が前年同月比4・2%下落。他の都市も上昇率が鈍化した。前月比では温州や海南省海口など4都市でマイナスとなっている。
不動産関連は中国の国内総生産(GDP)の約16%を占めるだけに、専門家も強い警戒を示す。
野村インターナショナルのアナリストは、「不動産バブルの崩壊リスクは、影の銀行や地方政府の債務問題を上回る」と指摘。フランスの金融大手、ソシエテジェネラルのエコノミストも「多くの都市では、住宅市場が冷え込むだけでなく、崩壊が始まっている」と分析している。