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さっちゃん 作者:菜乃香

歌声

 どこからともなく聞こえてくる歌声を耳にしながらも、彩音ちゃんは声が出ませんでした。

 勉強机とタンスが置いてあるだけの殺風景な部屋の中に、こんな歌がコダマしました。

 「♪…『さっちゃん』はね、…祥子(さちこ)っていうんだ …ホントはね。」



 …あなたもこの歌を聞いたことがありますね?

 何を隠そうこの歌は、このお話から出来た歌なのです。

 そこで彩音ちゃんは、顔1つ動かせないことに気付くのです…。 金縛りですね。



 (だ、誰っ?)

 彩音ちゃんは恐怖を隠そうと、『さっちゃん』が来たことを確信したくありませんでした。

 部屋の真ん中に敷いた布団に、薄い掛け布団を掛けているだけの彩音ちゃん。

 『さっちゃん』がどこにいるのか確認したいのに、体が動きません。

 「♪…だけど」

 ズズッ

 「…ちっちゃいから、」

 ズズズッ

 「…自分のこ、と …さっちゃんって」

 ズッ ズズッ

 「言うんだよ。」

 歌がどんどん近づいてくるのに、姿を確認することが出来ません。

 そのとき、やっと彩音ちゃんが重要なことに気付きました。

 (…ズズッ?ってなんだろう…。)



 あなたはもうおわかりでしょう。

 この奇妙な音は、さっちゃんが体を引きずってはってくるときの音なのです。



 それに気付いた彩音ちゃんは必死に抵抗し、体を動かそうとしますがまったく動きません。

 瞬きさえ出来ないのです。

 (こ、殺されちゃうよ…。まだ死にたくない!)

 そう思った瞬間、首が動くようになりました。

 寝たまま横を向いた彩音ちゃんは、凍りつきました。

 だって彩音ちゃんの目線の先には、ギラギラと光った目がこちらを直視していたのですから…。

 耳元まで裂けた真っ赤な口は、ニタ〜 と笑っていました。




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