貨物を指定の3倍以上積載か 遺体取り違えも…韓国旅客船沈没事故
韓国南西部、珍島沖の旅客船セウォル号沈没事故で22日、海洋水産省による船舶自動識別装置の記録の解析結果が公表され、船が急旋回する直前に、36秒間、停電していた可能性が高いことが判明した。検察と警察の合同捜査本部は事故との因果関係を調べている。また、韓国の野党議員は、事故当時、船は指定量の3倍以上の貨物を載せていたとの見方を示した。新たに34遺体が収容され、死者は121人、不明者は181人となった。
収容された遺体が100人を超えた22日、転覆の一因とみられている急旋回直前の運航記録の公表により、“空白の36秒間”の存在が明らかになった。
データは、16日の午前8時48分37秒から同49分13秒までの36秒間、途切れている。この間に船内では停電が起き、非常用バッテリーに切り替える作業が行われた可能性が高いという。
船が大きく右に旋回したのは同49分37秒。ここから39秒間で67度の急旋回をしていた。停電してから、船の速度は落ち始めていたことも合わせて判明。停電と急旋回の因果関係については、合同捜査本部が調べを進めている。
また聯合ニュースによると、韓国の野党議員は22日、船の改造後検査を実施した機関の検査結果を公開。客室増築などの改造により重心が上がったため、同機関は積載貨物を減らすよう求めたが、この野党議員は事故当時、船は指定量の3倍以上の貨物を載せていた、との見方を示した。船は制限より30台多い車を載せ、積載目録にないコンテナも積まれていた。
事故原因については、針路変更時の急旋回で貨物が片寄り、船がバランスを失ったとの見方や、過積載のほか、操舵装置故障の疑い、船体改造による構造上の問題も浮上している。
一方、ケーブルテレビのチャンネルAは、遺体安置所では家族がDNA鑑定を待たずに身内の遺体と判断して、取り違えるケースが出始めていると報じた。
21日には安山市の葬儀場に運ばれた男子高校生の遺体をみて、生徒の友人が「本人ではない」と証言。DNA鑑定を行ったところ、別の生徒の遺体であることが判明したという。高校の関係者は「この生徒を含めて3人の生徒のDNAが合わなかった」と打ち明けている。取り違えの原因には、生徒の保護者が大きなショックを受けているとの見方と、遺体の損傷が激しいことが考えられる。事故から1週間たち、安否不明者の家族たちの疲労も極限状態。22日も、潜水士ら約750人が動員され、捜索が続けられたが、生存者は見つかっていない。今後は、捜索打ち切りを意味する、大型クレーン船による引き揚げ作業についての決断も浮上する。