(2014年4月22日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ミャンマーのジャーナリストを被告とする刑事事件が急増している。同国では五十数年ぶりとなる自由選挙を控えて人権が抑圧されるのではないかとの懸念が強まっている。
かつて軍事政権を率いていた将軍たちが3年前に政治改革に着手して国際社会から喝采を浴びて以来、残酷な内容の法律は減ってきているが、活動家などに対する嫌がらせは、抑圧的な軍事政権時代の記憶を呼び覚ますものとなっている。
大手紙がそろって抗議の「黒い1面」
ミャンマーでは今月、ビデオジャーナリストのゾー・ペ氏に懲役1年の実刑判決が下されたことに抗議するために、複数の大手紙が1面を黒く塗った新聞を発行した。この事件は、大統領選挙を来年に控え、人権を巡る環境の変化に対する懸念が広がる要因となっている。
「我々は、この判決がビルマ(ミャンマーのこと)の情報公開に及ぼし得るインパクトだけでなく、この判決がこの国の現状について明らかにすることに関しても懸念している」。報道の自由を主張している団体「国境なき記者団」のアジア太平洋地域担当者、ベンジャミン・イスマイル氏はこう語る。
教育省の施設を取材のために訪れた際に公務を「妨害」したとの理由で逮捕されたゾー・ペ氏をはじめ、ミャンマーではジャーナリストが次々に身柄を拘束されたり投獄されたりしている。この傾向を批判する人々によれば、これらは単なるでっち上げか民事事件でしかないという。
ジャーナリストのマー・カイン氏は昨年末、映画の海賊版製造が疑われる一件について取材している時に不法侵入、罵倒、誹謗中傷を行ったとの理由で身柄を3カ月間拘束された。また今年2月には、ユニティ・ジャーナル紙の経営幹部1人と記者4人が刑事裁判にかけられることになった。軍はミャンマー中部に化学兵器工場を建設していたとの記事を同紙が掲載したことを巡るもので、政府はこの報道を否定している。
ミャンマーの野党指導者でノーベル平和賞受賞者のアウン・サン・スー・チー氏は今月、ゾー・ペ氏の一件はミャンマーが「まだ民主主義国家ではない」しるしの1つだと語った。報道の自由は世界のほとんどの国や地域で、民主主義が完全に機能する際に欠くことのできないものだと見なされている。
表現の自由、せっかく進歩していたのに・・・
ジャーナリストを標的にすれば、元将軍のテイン・セイン大統領率いる準文民政権下での法制度改革(2012年に行われた、メディアの事前検閲の廃止など)を通じて達成された表現の自由における実質的な進歩が損なわれてしまう恐れがある。
これまでの法制度改革も手伝って、国境なき記者団が毎年公表している世界報道自由ランキングにおけるミャンマーの順位は、2012年の179カ国中169位から2014年の180カ国中145位に上昇している。