カルデラ噴火予知に本腰 姶良や鬼界、低頻度でも研究 [鹿児島県]
政府は本年度から、巨大噴火の跡とされるカルデラを調査し、噴火の前兆現象を捉える研究に初めて乗り出す。巨大噴火は予知が難しく、本格的な研究は先送りにされてきたが、東日本大震災を機に、低頻度でもリスクが高い災害の研究を重視する方針に転換した。九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)など噴火被害が懸念される原発は複数あり、将来、研究が進めば運転の是非の判断材料にもなりそうだ。
カルデラは、大量のマグマが一気に地表に噴出する巨大噴火の後にできる陥没。直近では、鹿児島県屋久島北部にある薩摩硫黄島を取り巻く鬼界カルデラが約7300年前に噴火し、火砕流が半径約100キロに及んだとされる。今夏にも再稼働の可能性がある川内原発は、姶良カルデラなどの影響が懸念されている。
国内の巨大噴火は約1万年に1回の頻度で発生してきたが、噴火直前にどのような現象がカルデラ周辺や地下のマグマだまりで発生していたのか、体系的な研究は進んでいない。このため、文部科学省の科学技術・学術審議会は、本年度から5年間の新たな地震火山観測研究計画で初めてカルデラ研究を明記。今後、大学や国の独立行政法人などが研究に着手する。北海道大や福岡大、熊本大、鹿児島大などが参加するという。
対象は、噴火規模が大きい姶良と支笏(北海道)、比較的噴火が新しく地層調査がしやすいとされる鬼界、摩周(北海道)の四つのカルデラ。巨大噴火直前の地層をボーリングなどで細かく分析するほか、噴火の“引き金”となるマグマの種類を噴出物から特定して予知につなげる。
研究を統括する北大の中川光弘教授(火山学)は「カルデラ研究は個別の学者が取り組んできたが、巨大噴火は国の存亡に関わるもので、少しでも減災につながる成果を目指したい」と話している。
=2014/04/23付 西日本新聞朝刊=