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グーグル、最新クラウドサービスの詳細を日本で発表
App EngineやCompute Engineなどのメリットをアピール
(2014/4/23 06:00)
グーグルは22日、「Google Cloud Platform セッション - 最新技術と日本での展開について -」と題したイベントを開催。Googleの各種サービスをバックグラウンドで支えるクラウド技術の概要と、日本を含むアジア地域における最新動向などを解説した。
同様のイベントは3月に米国で開催されており、解説した内容の一部はすでに明らかになっていたものだが、今回のイベントは、日本のユーザー向けに改めてクラウドにおけるグーグルの今後の取り組みを発表する場となった。なお、イベントの後半ではGoogle Cloud Platformを活用した日本企業のサービスの実例を披露する場も設けられた。
ここでは、前半のグーグルスタッフらによる同社の取り組みに関する解説についてレポートする。
Google Cloud Platformでトレードオフをなくす
まず初めに、米グーグル エンターブライズ部門ディレクターのShailesh Rao氏が登壇。2013年12月、日本をはじめとするアジア太平洋地域のユーザー増に対応するべく、台湾とシンガポールに開設したという新たなデータセンターを紹介した。
Google Cloud PlatformにはApp Engine、Compute Engine、Cloud Storage、Cloud SQL、Cloud Datastore、BigQuery、Cloud Endpointsといった7種類のサービスが含まれているが、新しいデータセンターにはそのうちCompute Engine、Cloud Storage、Cloud SQLがデプロイされ、日本からアクセスする際には従来よりも高いパフォーマンス、低レイテンシを実現するという。
グーグルが持つこれらのインフラ全体で動作しているアプリケーションの数は、現在475万を数える。App Engineの処理するリクエスト数は1日あたり280億件であり、これはWikipediaのトラフィックである26億件の10倍以上。さらに、Cloud Datastoreにおいては月あたり6.3兆件ものオペレーションをこなしており、「これほどのスケールで処理できるインフラは地球上で他にない」と語った。
同氏はこのプラットフォームを利用する際のコストについても言及した。現在、コンピューターハードウェアの価格は1年で20〜30%ほども下落しているが、パブリッククラウドの利用料金は年6〜8%程度の値下がりに止まっており、「これはフェアではない」と指摘。米国のイベントで発表があった通り、妥当な価格帯にするべく、Google Cloud PlatformではCompute Engineを30〜53%、Cloud Storageを68%、BigQueryを85%それぞれ値下げする。長期間継続利用しているユーザーほど大きな割引価格が適用される形にするとし、“ムーアの法則”のように早いペースで今後も継続的に値下げしていくことも示唆した。
ただ、「クラウドはまだ難しい」と開発者に思われていることも確かだと同氏は語る。サービスの市場への投入タイミングとスケールのどちらを重視するかで、クラウドを利用する・しないを選択するトレードオフとなるような場面があることを踏まえ、Google Cloud Platformによって「そのorをandに変える」と宣言した。
さまざまなツールの組み合わせで柔軟性と効率性を両立
次に登壇した同社セールススペシャリストの塩入氏は、台湾とシンガポールの2箇所に設立したデータセンターと、Google Cloud Platformに含まれる7種類のサービスの概要を再び説明。また、4月から全世界で改訂になったGoogle Cloud Platformの利用料金についても補足した。
「クラウドは必要な時に必要なリソースをオンデマンドで入手できること」が重要であると述べ、複数年に渡って契約で縛られるのは「クラウドのあるべき姿ではない」ことから、複数年契約やデポジットの撤廃、そして複雑な料金表をシンプルなものにする、といったことが価格改定の目的だとした。
最後に登場した同社セールスエンジニアの福田氏は、Google Cloud PlatformのうちApp EngineとCompute Engineについて、より詳細に解説した。
App Engineは、Python、Java、Go、PHPといった言語でサーバーサイドプログラムの実行が可能なPaaS型サービスだ。通常、インターネットコンテンツへのアクセスは1日を通じて平均的にあるわけではなく、時間帯などによって突発的にリクエストが増えたり、逆にほとんどリクエストがなかったり、といった波があるが、App Engineではサーバーリソースを動的に割り当てられ、効率的な運用が可能になる。実際に利用したリソースの分だけを利用料として支払えばよく、コスト面でメリットがあるだけでなく、高負荷にも耐えられる信頼性の高いサービスだとした。
とはいえ、標準でサポートされているもの以外の言語で開発したり、一般的なソフトウェアで利用されるようなC/C++言語のライブラリを組み込むといったことは、App Engineでは不可能だ。これを可能にするのがCompute Engineとなっている。
Compute Engineは、グーグルのインフラ上で稼働するIaaS型の仮想マシン。App Engineではサポートされないネイティブ言語も利用でき、CPUは1コアから16コア、メモリは最大60GB、ストレージは最大10TBまでそれぞれ自由に選択できる。高速かつ安定した性能を提供するとしており、仮想マシンの数を1台から100台までの間で変えても、常に1台あたりの起動にかかる時間は20〜40秒程度と短く、迅速にリソース割り当てが可能であることも同氏はグラフを交えて示した。
また、ディスクのI/O性能についても、一般的な物理HDDと比べ、シーケンシャルリード・ライトの性能を同等としつつ、ランダムリードは8倍、ランダムライトは32倍、Compute Engineを利用した方が高速であるとアピール。CPUのコア数に応じてパフォーマンスはリニアに伸び、100万QPSもの膨大なリクエストに対してもごくわずかな時間で対応可能なロードバランサーを備え、計画停止のないハードウェアを用意していることもポイントだと話した。
以上のPaaSとして提供されるApp Engineと、IaaSとして提供されるCompute Engineの両者の利点を組み合わせ、新たに生まれたサービスが「Managed Virtual Machines」となっている。利用者はハードウェアの管理を一切することなく、必要なリソースを用い、自由度高くプログラムを組み込んで稼働させることが可能だ。また、仮想マシンの内容をテンプレート化して“プール”しておくことで、プールした多数の仮想マシンの再起動など、本来利用者自身が手動で実行しなければいけない“ヘルスチェック”のコマンドを自動化できる「レプリカプール」という仕組みも備えている。
このように、Google Cloud Platformを利用する際のサービスの選択肢や組み合わせが増えることにより、たとえばCompute Engineのみを利用してより柔軟性に富んだシステムを構築したり、レプリカプールやManaged Virtual Machinesを合わせて採用し、効率を重視しながら柔軟性ももたせたシステムにする、といったバリエーションも生まれる。同氏はマニュアルの日本語化も随時進めていると話し、Google Cloud Platformを活用した開発を気軽に始めてほしいと来場者に呼びかけた。
URL
- Google Cloud Platform
- https://cloud.google.com/?hl=ja
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