内野 宗治

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日本人バックパッカーに多い「Googleボケ」

投稿日: 2014年04月22日 18時08分

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 先日、ロサンゼルスで現地の友達と飲んでいるとき、ある日本人の女の子に出会いました。

 彼女は大学生のバックパッカーで、その日ちょうどサンフランシスコからロサンゼルスに来たとのことでした。かなり旅慣れた子のようで、これまで空港で野宿したりヒッチハイクしたりスラム街を歩いたみたいな話を誇らしげに語ってくれました。「今日どこに泊まるの?」と聞いたら、「決めてないけど、何とかなるかなと思っています!あまりお金もないし、24時間空いている飲食店もあるから、最悪そこで!」と、逞しい返事が返ってきました。

 僕は「何とかなるわけないでしょ」と言って、その場で近くの安全そうなホテルを予約して、彼女をそこに宿泊させました。一緒にいた僕の友達(ロンドン出身、LA在住5年)は、彼女の持っていたタウンマップに危ないエリアを全部書き込んで「ここには行かないように」と渡しました。彼女は「危なっかしい子」扱いされたのが気に食わなかったのか少々不満そうでしたが、渋々言うことを聞いてくれました。


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 「俺も随分とお節介なおっさんになったもんだな…」と、ヴェニスビーチのサンセットを眺めながら時の流れに黄昏れていたわけですが、それはさて置き。海外にいると、彼女みたいな日本人のバックパッカーによく出会います。彼等彼女等の多くが「海外でもビビらず冒険している自分は逞しくてカッコイイ」と思っており、数々の“武勇伝”を妙にドヤ顔で語るのです。

 これ、ハッキリ言ってかなり危険な感覚だと思います。平和ボケしてるとしか思えません!

 僕は何かと無謀な人間だと思われがちですが(笑)、実は良くも悪くも結構ビビりです。特に海外では、危ないと言われている場所、危ないと感じる場所は極力歩かないようにしています。命のリスクヘッジにはかなり慎重です。

 アメリカやヨーロッパでは、ストリートを一本間違えると命の危険に晒される場所が、今でも至る所にあります。ロサンゼルスなんて、特にヤバいです。深夜にひとりでダウンタウンの飲食店とか、安全の保証がない限りまず行くべきではない場所です。

 外国人のバックパッカーにもこれまで多く会っていますが、彼等彼女等が「スラム街を歩いた」みたいな話をドヤ顔でするのを聞いたことはありません。「一歩間違えたら死ぬ」意識を、肌感覚レベルで持っているのでしょう。日本ほど日常が平和な国は、世界にほとんどないのです。


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 ロサンゼルスで会った彼女のような感覚は、ネット時代の負の産物ではないかと思っています。「よくわからないけど何とかなる」は、とても「Google的」な思考だと思います。

 ネットでは、何かちょっと間違えたことをしても身の安全が保証されています。だから皆、軽い気持ちで誰かを叩いたり、不躾に自分の言葉を相手に押し付けるのです。興味本位で、気軽な気持ちで冒険できます。そこに命の取引はありません。

 でも、ストリートはそうじゃない。先述の通り、通りを一本間違えると命の安全が脅かされる。それが世界のスタンダードです。

 この辺の危機意識センサーは、自分の足で歩く経験を積まないと培われないし、何よりネットばかり見てると麻痺する気がします。「海外で冒険して逞しさをアピールしたい」には、「ツイッターで目立ちたい」とほぼ同じ思考回路を感じるのです。ツイッターなら炎上くらいで済みますが、ストリートでは下手すると死にます。

 特に最近は、女の子のバックパッカーも多いですけど、本人が「逞しい」と思っている行為は、単に「軽い女」と思われている可能性が大です。無謀な行動の結果、怖い思いをした経験がある人は、実は少なくないと思います。カッコ悪いから人に言わないだけで。


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バックパッカーの聖地と言われる、ベトナムはホーチミンのファングーラオ通り。路上の両側に人々が座り込み、ただ騒ぎながらビールを飲んでいる。バンコクが急激な発展を遂げた今日、世界のバックパッカーたちにとって最後のユートピア?


 ストリートカルチャーとネットカルチャーの違いは「最低限の秩序の有無」だと思っています。ストリートでは、各コミュニティに“縄張り”があり、お互いが一線を超えてはいけない、リスペクトし合わなければいけないという暗黙の了解の下で全体が成り立っています。この適度な緊張感の中で遊ぶことで、様々なカルチャーが生まれるわけです。

 一方で、ネットは無法地帯なので誰もが好き放題言い合います。このカオス感こそがネットカルチャーの面白さでもありますが、これをストリートに持ち込むと危険です。ネットではいくら冒険しても安全ですがリアル世界での冒険は命懸けであり、正しい情報と感覚に基づくリスクヘッジが必要です。ネットとリアルの境界が曖昧になってきているといえども、そこにはまだまだ“越えられない壁”があります。

 世界を旅するのは素晴らしいことだと思いますが、自らの命を危険に晒すような冒険は、勇敢ではなくただの“無知”です。ルールを知り、自分を客観的に見て、ちゃんと適度にビビりましょう!


(2014年4月20日「Splash Hits」より転載)

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